⑦今治城駅-2「ねぇ… たすけて」
⑦今治城駅2
なぜ美波が行かないといけないのか.
まぁ負けたからだけどこんな知らない今治の町を一人で歩くのは怖すぎる.
スーパーは駅のすぐそば.
もう日はビルの間にかすかに見える程度しか出ていない
帰る頃にはもう夜になっているだろう.
いくら夏とはいえ18:00ぐらいまでしか日は出ない
しかしこの渡された地図の見方がわからない.
今日降りてきた駅も今治駅だから今治城駅がどこにあるのか
人通りは少なく道を聞けるような人もいない.
美波はきょろきょろしながら歩いた.
ずっと続く住宅街. 地下を走る媛鉄を見つけるのは容易ではない
いくら今治線の写真を見ていても地下駅の入り口なんて見やしない.
神戸なら阪急阪神わかりやすいのに…
ようやく大きな通りに出たけど地図とあっているのかわからない.
とりあえずバス停があったので待っていた人に聞いてみた.
「すいません. 今治城駅はどこですか?」
「駅? あ,この通りをずっと行ったら見えるよ」
優しい感じのおじいさんはそう言ってくれた.
とりあえずこの通りをずっと進む.
もう日が見えなくなり空が少し暗くなってきたころようやく駅に着いた.
駅を手がかりにスーパーを探す.
ようやくあった.
たこをそれなりに買ってすぐ来た道を戻っていった
しかし何かがおかしい.来た道を戻っているはずなのに
見たことない建物や看板だらけ
道に迷ったのかな.携帯も置いてきてしまったし連絡手段もない.
公衆電話のかけ方なんて桜川じゃないから全く知らない.
綾奈が一緒だったら結構暗記力がいいからいけた気がする
やっぱり行くんじゃなかった.
どこかわからない.
※
「ねぇ美波ちゃん遅くない?」
「うん. もうNHKもニュース始まったし」
「大丈夫かな? 道に迷ってるんじゃない.」
「桜川迎えにいってやれ. 絶対喜ぶ.」
「でも僕まで迷ったら元も子もないよ.」
「美波の携帯もって行ったら 置いていってるでしょ」
確かに輪島の携帯があった.
僕はその携帯を片手にスーパーの場所を聞いて大垣の家を飛び出した
※
バス停の時刻表が19:00を刺そうとしている
どこここはバス停の名前を見ても路線図を見ても何かわからない.
大通りをずっと歩いて曲がってきたところを探し始めて何分経っただろう
なんか目がくらくらしてきた. もう歩くのもしんどい
そしてしばらくして私は道の隅に倒れた.
まったく知らない場所と孤独感という恐怖におびえた.
周りには人もいないし助けてももらえない.
車はびゅんびゅん飛ばしていく.
意識が朦朧としてきていろいろわからなくなりそうなとき
誰かが美波を呼んだ気がした.
「輪島!」
誰かが走ってきている名前を呼びながらでも影しか見えない
「輪島,大丈夫か?どうしたの?」
えっと. あ,桜川だ.
「助けに来てくれたの?」
「遅くて心配になったから なんでこんなところにいるんだよ」
「わからない美波がどこに居るのか」
「ここ,今治駅前の交差点やでまったく家と逆方向.」
「そうなんだ」
「本当に大丈夫?救急車呼ぶか?」
「大丈夫. たこも買った」
「たこなんてどうでもいい. 輪島が大丈夫かどうか」
「たぶん. でももう歩けない.バスでも乗せて.」
「もうこんな田舎終バス終わってるよ. 歩けそう?」
「無理.」
桜川がすごく心配してくれて嬉しかった.
なによりも追いかけてきてくれたことが
美波は歩くのが無理そうだったから桜川にお願いした.
「運んでいって.」
桜川はすごい困った顔をしたけど言うとおりに私を背中に抱えてくれた.
変に見られるのは困るけど,しんどさには変えられない.
私はその先覚えていない.
※
輪島を運ぶのはなかなかきつかったけどなんとか家まで来ることが出来た.
インターホンを押して帰ったとき美波ちゃんは?ときかれた
後ろって言ったらなんかニヤつかれたけどちゃんと何も言わず
輪島を別の部屋へ案内してくれた.
とりあえず輪島の持っていたたこを持って大垣に手渡し,焼き始めた.
「桜川よくやった」
「今治駅の方に居たからびっくりした. 道に倒れていた.」
「え. それやばいじゃん」
「私たちが悪かったね. しばらく美波ちゃんの所に居る?」
その大垣の発言で筒石もうなずき,3人で輪島の周りにいた.