⑩小松駅「私の家に泊まる?」
⑩小松駅
高校のときは結構楽しんでいたんだな.
そんなに時間はたっていないのに
筒石にそう思わされた. 懐かしい話をしてくれた.
輪島は寝不足なのか知らないけどホームのベンチに座って
気付いたらもう寝ていた.
ホームのベンチは硬いのによく寝れるな.
阪神電車のシートでさえ寝るのは結構きついのに
そして再び筒石と今度は中学のときの話に
部活であんなことがあったこんなことがあったと
いろいろ暴露させられてものすごく笑われた.
でも筒石はやっぱり話題を戻す
「中学のとき美波のこと,どう思っていたの?」
「普通の部活仲間かな」
「本当に?」
「いやさっきいったじゃん 昨日からだって」
「確かにそうだけど.」
「逆に聞く. 何でそんなに質問してくるの?」
「いや恋愛に興味なさそうな桜川が好きな人いるって言うから」
「え? それで今までを追及しているわけ?」
「うん」
まぁ変な理由じゃなくてよかったけど…
そこまで高校のときアニメ一色だっけな?
しばらくして遠くの踏み切りの音が鳴り出した.
さっき乗ったすごい新しそうな電車と違って
今度は少し古い感じのデザインだ.
輪島が電車の音に反応したのかいきなり起きた.
2人ともびっくりした.
輪島はいきなり頭を上に上げたから髪型が崩壊していたのだ
しかもそのまま入ってきた普通電車に乗り込む.
「美波. 大丈夫?」
「え,なんで」
「寝不足なのかな? って2人で思ってた.」
「なんか美波が寝てばっかりでいまいち話が盛り上がらない.」
「まぁ寝不足だけど気にしないえ~」
すごい大きなあくびをしている.
きのういろいろあったとはいえここまで寝不足になるか?
「輪島,昨日何時間寝た?」
「さぁ~? 1時間ぐらい?」
「え? じゃあ綾たち3人が寝てからも起きていたの?」
「うん 眠れなくて」
「なんで? なんか悩み事?」
「うん.」
「どうしたの?」
「いやぁ~ 昨日倒れたから再びならないか心配で」
「大丈夫だよ」
「うん,あれだけ電車の中で嬉しそうに寝ていたんだから」
「そう? 美波,何みてたんだろうね」
なんか語尾がいつもと違って異様に延びている輪島がちょっと面白かった.
でもやっぱりいつもの輪島がいいな.
電車がトンネルに入った.
客が僕たち合せても5人しか乗っていない1両編成の電車は
かなり暗くなった. 照明はつかないのだろうか.
やけに長いトンネルだった.
何分もかけて走っていった.
「桜三里に出るには深い山を越えていかないといけないからJRは迂回しているんだよ.」
「そうなんだ. じゃ媛西電車は何で?」
「2001年に出来た新しい路線だからね」
「自分らの生まれた年じゃん.」
輪島の電車話,今回は理解することが出来た.
なぜこんな長いトンネルがあるのか.
電車がトンネルを抜けてしばらくすると
伊予鉄が見えた.
懐かしいベージュに伊予柑色と黄色のラインというカラーリング.
しばらく媛鉄のシルバーとピンクの車両ばっかり見てきたから
電車に興味がなくても乗りたくなった.
「伊予鉄がどうかしたの?」
輪島にいきなり聞かれてびっくりした
「懐かしいな. と思って」
「桜川. 話をあわせているの?」
筒石に耳元で小さくささやかれた
手で×印を作って違うことを強調しておいた.
「好きな人が好きなものを好きになるってすごいな~」
「筒石一回だまって」
輪島が首をかしげて不思議そうに僕たちを見ていた.
やがて電車は地下に入った.
外が見えなくなり. トンネルのときほどではないが暗くなった.
「なんか綾まで松山が久しぶりに感じてきた」
「綾奈はいつも松山に住んでいるでしょ.」
「そうだよ僕なんて半年ぶりだよ」
「半年なら大しておどろかないね」
「だれだよいつも住んでいるのに久しぶりとかいったのは」
そうだ. 半年ぶりの松山なんだ
なのに実家には連絡ひとつ入れていない.
コレは親にあっておかないとやばいかな.
でも連絡する手段が今はないので電車を降りてから連絡してみることにした.
電車が地下に入ってから結構混み出した.
東温市だか松山市だかしらないけど四国一の都市はけっこうすごい.
関西に比べたら田舎にもすぎないけど.
携帯電話をいじっていた筒石が急にしゃべり出した
「ねぇ2人はこの後どうする予定なの?」
「美波は家に帰るつもりだけど」
「桜川は?」
「特に予定なし. 家に何一つ連絡入れていないから」
「そっか.」
「綾奈どうかしたの?」
「いや親が2人とも旅行中らしくて家,誰もいないから泊まる? と思って」
「あ~ 泊まりたい. 綾奈の家で泊まったことない.」
「輪島が参加するなら僕も参加しようかな」
「おぉ~ いいね桜川. さすが.」
「いやおかしいでしょ. 僕が一人で泊まりに行くの.」
「それは確かにそうだ.」
輪島が携帯を触っている. 親に確認しているのだろうか
いきなり電車が下り始めた.
「石手川をくぐっているんだよ」
輪島がいい感じに説明を入れてくれた
へぇ~石手川なんだ. 面白い.
たしかに電車は上りだした.
「綾奈. 母さんが別にいいよって.」
「じゃあ2人とも泊まりに来て. 1人じゃ寂しいから」
「いいよ.」
2日連続女子の家に泊まるとは初めで最後だろう.
『まもなく終点,媛鉄松山,大街道です.』
終点のアナウンスが聞こえた.
1両編成の車両は駅に入る前にすごい轟音を鳴らしてホームに滑り込んだ.
「降りよっか」
3人そろって電車から降りた.
久しぶりの松山に少し感動する僕だった.