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媛西電車  作者: Hankyu3058
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①媛鉄西宮駅「各駅停車での出会い」

媛西電車は正式名称「媛西電気鉄道」。

媛西電車は兵庫県の西宮と愛媛県の松山を淡路島経由で結ぶ媛西本線。

兵庫県の宝塚と京都府の北大路を結ぶ西京線。

兵庫県の舞子と姫路を結ぶ舞姫線

愛媛県の小松と今治を結ぶ今治線。

北大路と立命館大学を結ぶ京都市内線。

近鉄に次ぐ路線長を誇る2001年に開業した路線

車体は桃色のラインが入った車両が1~6両編成で運転している.

そんな媛西電車が結ぶのは都市と地方だけじゃない。

みんなの想いを乗せて今日も桃色の電車が出発した。

①西宮駅

東京オリンピックが約1週間後に迫った日の朝早く,

僕は夏休みを迎えたので実家に帰ることにした.

早く行くなら新幹線で行ってもいいけど別に帰りたいわけでもないし

バイトもやっていない僕はお金が親からもらう分だけなので節約もしないといけない.

だから片道1850円と格安でゆっくりな媛鉄を使うことにした.

朝の5:40 6本も線路があるターミナル駅なのに人はほとんどいない.

誰か話す奴がいれば楽しい旅行なんだけどな.

…電車がホームに入ってきた.

4両編成の普通電車だ. 中身はロングシートで5時間乗るのにトイレもない.

朝早すぎて通過待ちもないので駅のトイレすら使えない厳しい車両だ.

ほとんど客がいない車両の扉が閉まりかけたとき.

同じくらいの年齢であろう女性が飛び乗ってきた.

なんか見たことのあるような顔だ.

意識するのも嫌なので,家から持ってきた本を開いて読む.

こんな電車の中でアナログに浸るのも僕ぐらいだろう.

電車はもう日が昇っているのに何も見えない地下をずっと走る.

トンネルの音がゴーゴーいって本に集中できない.

「いつ外に出るんだこの電車は.」思わず声に出てしまった瞬間

あの見たことあるような女がいった.

「垂水をでたあたりで地上に出ますよ.」

その情報はありがたかったが,微妙に見たことある人なので

なんか言葉が出ない. しかもなんでそんなのを知っているんだ…?

「ありがとうございます」それだけ言って僕はぼーっとしていた.

電車が三宮に着くともう6:06 そろそろ座席が埋まりかけていたとき

ずっと立っていたあの女も疲れたのかきょろきょろして,

あいていた僕の隣に座った. なんか変な感じ.

おそらく知らない人だろうになぜか変な感じになる.

誰かわからないのが一番怖い.

こいつはどこまでこの電車に乗るのか…

それもすごく気になっていた.

別のことを考えようとしているうちにいきなり電車の中が明るくなって

車内照明が消えた. すごくまぶしいぐらいに日が昇っている.

あ,これがさっき言ってた垂水を出たところか.

納得したがまた思い出してしまった. なんか別のこと…

「どうですか車窓きれいでしょ? ずっと地下の媛鉄もここまで来れば見えるんですよ」

え? いきなりなんだ. この女. よく知らん奴に普通に話せるな…

「もうすぐ明石海峡大橋を渡るんですよ.そういえば明石海峡大橋って何が日本一か知ってますか?」

いきなり話を振られて「長さですかね.」っていったら

なんか笑顔で「よく知ってますね. 電車とか好きなんですか?」

「いや僕はそこまで好きでは…」

「そうなんですか,結構見ていたら面白いんですよ」

「え? 鉄道好きなんですか? あのよく言う鉄ヲタ?」

なんか女子が鉄道好きってあんまり見たことないしな…

でもこの見たことある顔について僕はふと思い出した中学生のとき2013年…



中学に入ったとき特に入りたい部活もなく小学校が一緒だった友達に誘われて

吹奏学部に入った. 楽譜も読めなければ,音も全くわからない.

だからパート間で回されて希望人数が少なかったところに入らされた.

先輩たちは優しく迎え入れてくれたがその笑顔も僕は怖く感じてしまっていた.

吹奏楽部といいながら一番楽しかったのは同学年とのおしゃべりだった.

筒石綾奈,輪島美波,大垣桜。

卒業した後は筒石以外ばらばらになったし大学なんてどこかも知りやしない.

でも中学のときのことは結構覚えている



それを思い出してはっとなったこいつもしかして輪島!?

乗っている車両は松山行き. もしかしたらありえるかもしれない…

その間にもその女の話は続いていて少し聞き漏らしていたが

相槌はうっておいた.

明石海峡の絶景にぼーっとしてたのもあるけどな.

「すごかったでしょ. 車に比べて海に近いから結構橋に邪魔されてもきれいなんです」

ほぉ~ でも車が走っているのはすぐ上でつり橋だから車からのほうの景色がきれいだろうと考え 「車から見たほうがきれいなのでは?」そういうと

「車だと運転しないといけないからよく見えない上に追越車線にいるとみえないから」

確かにそうだと思った.ふと顔を上げるとさっきまで乗っていた人たちがほとんどいない.

あぁ本州出たからほとんどの人が降りたのか

でもそろそろ本人かどうか確認したくなってきた.

仮にそうだとしたら結構嬉しいものだから.

「この電車でどこまで行かれるんですか?」と聞いてみた.

「終点の松山まで.」

「それは鉄道好きで終点まで乗るんですか?」

「それもありますが実家に帰るのが一番の目的です.」

コレはまた範囲が狭まった. この人の実家は松山.

「僕も松山に帰るところなんですよね.」

「そうなんですか. どこにお住まいなんですか?」

いきなりどこに住んでるか聞いてきた.

「味酒町ってわかりますかねそこに住んでいます」

「あ,近くですね.」

さらに範囲が縮まったぞ. 

でも僕は不思議に思った輪島は電車のことなど中学のときに一度も話した事はない

でも僕は最大級の事を聞いてみた

「出身中学校どこですか?」

その人は瞬間下を向いて黙り込んだがすぐに答えた.

「○○中学校です. あなたの出身中学は?」

もうその瞬間信じ込んだ. こいつは輪島だ.

「同じ○○中学です.」

「へぇ~ 偶然」

絶対そうだ. 輪島だ. 僕はついに聞いてみた

「もしかして吹奏楽部ですか」

「はい」

「もしかして輪島っ…」

かんでしまった. こんなところで変に詰まるからなんかいやなんだよな…

「ようやく気がついた?」

その人はなんかいきなり敬語じゃなくなり,話し出した.

「電車乗った瞬間から桜川だ~って思ったもん.だからためしに話しかけてみたの」

「まじか… どうりで変だと思ったら」

そして輪島は笑顔でしゃべった

「何年ぶり? 4年ぐらいかな.  変わってないな~」

「そっちのほうが変わってないじゃん.」

「女子はそこまで変わらないから.」

気付くと電車は洲本に着いてドアが開いた.

もうすぐ7:00. 久しぶりに輪島に会えた喜びを少し隠し切れず電車にゆられた.

「ちなみに今乗っている車両1000系何やけどもともと6両やったんよ

だからこの中間車にも予備運転台がついてるんよ. 面白いでしょ?」

「あのふたみたいな奴?」

「そう.」

話せるのが嬉しかったから興味ない電車も結構質問していった.

でもやっぱり輪島が電車好きなんて聞いたことがない.

松山まで着くあと3時間よりももっとしゃべりたい! その想いが言葉になった.

「輪島. 松山に何時に着かないといけない?」

「別にいつでも. だって家に帰っても特にすることないし.」

「徳島ででも降りて朝ごはん食べない?」

もしかしたら輪島は食べてきたかもしれないけど誘ってみた.

媛西電車は淡路島を出たらすぐ徳島駅についてしまう.

「いいよ. 美波もお腹すいてきたとこ」

心配と逆の方向を行った嬉しい返事にすこしぼーっとしてしまった.

「もうすぐ大鳴門橋をわたる. 徳島には7:43に到着するらしい.」

「あ,もう調べてくれたんだ. 早いね僕は携帯持ってないから」

「いや覚えてるの媛鉄の時刻表全部.」

おそらくこんなのを男子の友達がいったら気持ち悪いと思うけど

輪島がいうのはすごいとおもった.

でもやっぱり輪島は電車が好きだったのか? とりあえず話を続ける

「すごいね. そんな暗記力僕にはないわ.」

「そういってくれるの桜川だけ アハハ」

なんかこんなことで笑ってくれた.

普通電車なのにすごく速く動いているような気がした.

大鳴門橋をわたり,空港の下をくぐり,橋をもう1つ渡ってもう徳島に着いた.

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