第八話:噴火口上空の悪魔と人質
キラが花郎学院の診療所でのベッドから目覚めた。
気が付いたキラには首の方も全身も包帯だらけで、我来也がそれを見て憐れに思った。
キラが急に目を広くして、ベッドから一生懸命足掻いて出ようとしたが、我来也がそれを止めようとした。
「だめだ、起きる状態じゃ…」
「放せ!」とキラが叫んだ。
「今行ったら、いつでもあいつに殺されるぞ」
「かまわん!優子がそれ以上酷い目に会うぞ」
「回復したら、まだ救える」
キラが泣きそうな顔をして我来也の顔を見上げた。
「お前には、もっと早く回復する方法がある」と我来也師匠がキラの目を直接見て言った。
優子がゴビ砂漠での任務に依って手に入れた天意珠の欠片を我来也師匠が取って、キラと一体化させた。
漢拏山噴火口上空高く、魔法陣があった。その魔法陣は、下に空気しかないのに、上の立って歩く事ができるんだ。
優子が横になっていたが、宙に舞っていて無意識のままだった。
岩窟王が満足そうに、夜空の満月を見上げていた。
「時期に真夜中、この女が我の闇の女王として目覚める」と思った。
「そうはさせるか」と、聴き覚えのある声が聞こえた。
岩窟王がその声の源に耳を貸すと、矢張りキラだった。
しかし、前のキラじゃなかった。キラの体の中に、なにかがあった。体が、天意珠に支えられたことも、予想通りで計画通りだった。
「余計の事はいい」とキラが言って、岩窟王に向けて火の玉を何発撃った。
岩窟王が火の玉を平然として吸収して、なにか点を勝ち取ったように笑った。
「火の玉は只の遊びと思ったのか」とキラが訊いた。
岩窟王が急に苦痛に見舞われ、気力が吸収されて行った。
そうだ、キラが岩窟王の力を吸っていた。
キラが前に飛び出して、岩窟王との強烈な肉弾戦が展開しつつあった。
「説明をしてくれないか、陳甲煥」と、我来也が厳しそうに言った。
「どういうこと」と陳院長が言った。
「お前がくれた情報で、我の学生たちがそこまで手古摺るはずがない。お前まだなにかを隠しているのか?」
「岩窟王は、止められない」
「止められない?どういう事だ?」
「俺がなくした制御道具、「アイリスの心臓」がない限り、あいつは不死身だ!」
「よし、取り戻す方法があるんだ!手に取った事があるんだろう?」
「どういうこと?」
「勿論、頻繁にね、良く学校遠足に持って行ったことがある、盗まれないためにね」
「というのは、魔法連携が成立した。その連携は携帯電話の信号やWi-Fiより強い。それをわかったのか?」
「あの…」
「学校でお前に教えたんだろう?」
「はい?」
「手を貸せ!」
我来也が指で陳院長の掌の中心を指して、魔力でチャージした。その魔力の流動で陳院長が叫んでしまった。我来也が二人の回りに、防音壁結界を作り、その叫びを他の学生に聞こえないようにした。
まもなく、陳院長の掌に緑色の水玉が出た。あれは、アイリスの心臓の魔法の痕跡。
「じゃ、今は心を使って、制御道具のありかをつきとめるんだ!」
「はい、やってみる」と陳院長が言って、目を細くした。
陳院長の頭にいくつかのイメージが浮かんだ。魚、海藻、真っ暗、そして、緑のオーラ。
そして急に、緑色の石が彼の手に現れた。
「なるほど!アイリスの心臓自体がモンスターを制御するための天意珠だったのか」と我来也が言った。「そうであれば、壊せないね」
急に、我来也が消えてしまった。