クリスマスSS
千岩黎明さまより可愛い台詞つきのクリスマス玉屑のイラストいただきました!
で、お酒と嬉しさのコンボでつい書いてしまいました。
これは12月24日の活動報告にあげたものです。
なお、作中のイラスト及び台詞は千岩さまより使用許可いただいております。
人としての生を終え、私が雪たちの世界――隠世――へと来てから五ヶ月。
私は神の伴侶として新たな体を与えられ、雪の花嫁、ひいてはこの蛇長屋の長の妻となるべく毎日修業に明け暮れていた。
そんなある日、深緋さんは花嫁修行中の私の前に突然現れると、問答無用で私の修業を中断させ言い放った。
「月乃、クリスマスパーティーするわよ!」
あまりに突然のことに固まる私の腕を掴むと部屋から引きずり出し、そのまま無言でずんずんと廊下を進んでいく。
「あ、あの、深緋さん? 一体何がどうなって……」
「だからクリスマスよ! 月乃、あなた一体クリスマスを何だと思っているの? だめじゃない、ちゃんとしなきゃ」
まったく話が見えない。そして、むしろ私の方こそ聞きたい。そもそも深緋さんたち日本の神様に、クリスマスが一体どう関係があるのかと。仕えている神様、全然違うと思うんだけど……。
そんなことを考えていたら、どうやら会場となる部屋についたらしい。
ばんっと深緋さんが両開きの木の扉を勢いよく開けた。
「めりーくりすます、月乃!」
その瞬間、私はどうリアクションすればいいのかわからなかった。
洋室タイプの部屋の中央、大きなテーブルの上には所狭しと並べられた御馳走の数々。これはいい。
部屋の角に飾られた松の木。たぶんツリーのつもりなのかな? なんか輪飾りとか短冊とかの七夕みたいな飾り付けがされている。
そして雪――
なぜか大きな靴下の中に入っている。まったく意味が分からない。
「えーと、雪? これは一体……」
困惑する私に、雪と深緋さんは一斉に驚きの声を上げた。
「えぇ!? 月乃、くりすますを知らないのですか?」
「そんな!! 月乃、あなたクリスマスを知らないの?」
まるで信じられないものを見るような目で私を見る二人。
「知ってます、クリスマスくらい。私がわからないのは、雪のその格好」
「え? だって、これがくりすますの流儀なのでしょう?」
「そうよ。さんたさんが言ってたもの!」
「サンタさん?」
聞けば聞くほど二人の言ってることがわからない。それに、サンタさんって何? 誰?
「えーと、サンタさんって……あのサンタさん? 赤い服に白い髭の、あのサンタクロース?」
私の問いかけに、なぜか二人は怪訝な顔をした。
「さんたくろーす? さんたさんはそんな名前じゃないですよ。髭なんて生えてないですし、さんたさんはさんたさんです」
「何言ってるの?さんたさんはイケメンよ。見た目は私と同じくらいだけど、私たちよりずっと長生きで物知りなのよ」
どうやら“さんたさん”というのは雪と深緋さん共通の友達(?)らしい。
「えーと、じゃあ、そのさんたさんから教わったクリスマスの流儀っていうの、教えてもらえます? 私が知ってるクリスマスとはちょっと違うみたいなので……」
すると頼られたことが嬉しかったのか、雪は嬉々として語り始めた。
「はい! さんたさんが言うには、くりすますというのは大切な人と過ごす日なのだそうです。木を飾り付け、ご馳走を用意し、大切な人に贈り物をするそうです」
うん。飾り付ける木が松だったり飾りが七夕用なのはおいといて、特に変なことは言ってない。
「そして、贈り物は靴下に入れるそうです」
「うん。でも、だったら何で雪が靴下に入ってるの?」
「え!? だって、さんたさんがこれが流儀だって。ああ、そうでした! えーと確か……」
雪は何かを思い出そうと小首をかしげていたかと思うと、突然私の方に向き直った。そして頬を染めて、
「くりすますぷれぜんとは私です。喜んで……くださいますか?」
という、どこのヒロインだ! というセリフを放ってきた。
思わず頭を抱えしゃがみこんだ私に、雪はオロオロと「私、何か間違ってました?」などと聞いてくる。
「雪、深緋さん……そのさんたさんって、どんな人?」
おそらく、いや絶対。その人、雪たちからかって遊んでる。
次に来た時、そのさんたさんって人には雪たちに嘘を教えないよう注意しなきゃ。
「確か、元々は天使だったらしいわ。私たち神使みたいなものだって言ってたわよ、さんたさん」
「ええ。けれど、昔ちょっとした悪戯をして神様を怒らせてしまったそうです。食べちゃいけないって言われてた木の実を誰かに食べさせちゃったとか……」
私は再び頭を抱えた。
雪、深緋さん……その人、さんたさんじゃない。
サタンさんだよーーー!!




