2パート
外には道路が広がっていて車が行き交っているが当然のように音はしない。
石油はあと数年もてばいいレベルでしか残っておらず今は水素を使った車が主流となっている。ここは田舎だから水素ステーションも遠い。水素ステーションに水素を補給しているにしても時間がかかりすぎではないか。愛お姉ちゃんは一体何をやっているのだろう。腕時計に内蔵している通話機能で呼びかけても反応しない。健太はやきもきしていた。
「真美おばあちゃん、頑張ってるね。」
健太はお母さんに呼びかけた。
「待ってるのよ。最後の最後にどうしても愛に会いたいの。」
「姉ちゃん何やってるんだろうね。」
愛姉ちゃん、まさか過去にとんだまま帰ってこないつもりなんじゃないだろうか。健太は嫌な予感しかしなかった。過去にとんだ時は飛んだ時間とぴったり同じ時刻に帰ってくるはずだ。もし過去から帰ってすぐに病院ならばもうそろそろ連絡が来てもいい頃だ。会わないつもりなのだろうか。過去に飛んで余計に嫌いになったのだろうか。
80代。現代で考えれば泣くなる年にしては若すぎる。平均寿命はもう97歳になっているのに。やはり、病気が原因か。
「母さん、無理はしなくていいんだからな。」
健太の父、拓人は座って真美の様子を見守っていた。
真美おばあちゃんはかろうじて息をしている程度であり、もうぎりぎりのところでがんばっていた。
2015年にいる愛は50代の真美がいる家にやってきた。愛も小さい頃何度か来た記憶があった。
「ちょっと車で待っててくれ。」
愛はうなずき、拓人が家に入った。愛は拓人の高校の先輩という設定という打ち合わせをしていた。今回真美に会うのは、愛は高校の先生をしたいと考えていて高校で理科の先生をしている真美を身近な先輩として話をするために会うという設定にすると二人で決めていた。いろいろと無理があるが、あまり時間もなかったのでこう決めざるを得なかった。
数分経って拓人がでてきた。見ていると真美が拓人と出てきた。愛は出て挨拶した。
「こんにちは。愛です。お忙しいところありがとうございます。」
真美は愛の事をかなりの時間じっと見つめていた。
「愛さん。私はこれから会いたい人がいるの。あなたとのお話はそのあとでいい?」
「は、はい。」
愛は緊張していた。どうやら小さい頃から怖いイメージを持っていたのかもしれない。