2パート
「これはたしか触っただけで引かなかったと思うんですよね。」
「あれ、そうか。ならばこのレバーは?」
「多分最初の方に引きましたね。」
「じゃああれは?」
「何回か触りました。」
隆弘も加わり、広明と広樹は固唾をのんで見守っていた。いつの間にか拓人も一生懸命になっていた。夕飯を食べるのを忘れているくらいみんな必死だった。
「今までのを整理するとこれとこれは確実に違う。つまりこれらのどれかということになる。」
「しらみつぶしにあたっていきましょう。」
そして数十分たった頃だ。
優がいじっていたレバーにより、ついにメーターが反応した。
「おい、優くん!今メーターが動いたぞ。」
「ほんとか!」
何度か繰り返すと確かに動いていた。
広樹と広明は拍手喝采で優は安堵したかのように椅子に座った。
「よかったですね!」
「拓人くん、君のおかげだよほんとに。」
拓人を含めた5人はご飯を食べに行った。
「なんか、研究に振り回してしまったな。まぁ気に入ったら矢澤研にきてよ。」
「ありがとうございました。お世話になりました。」
手を振りながら優達と離れていく。突如拓人は虹色の光に包まれた。気が付くと過去に飛ぶ前の機械の中の椅子だった。
「おかえりなさい。」
吉田先生がいた。午前中にいた吉田さんがおじさんになって目の前にいる。とても不思議な感じだった。
「過去への旅は満足だったかな?」
言われてから気が付いた。22歳の頃に戻り、進路を間違える前の自分に会って忠告するつもりだったのに。何も変えてないどころか間違った過去に飛んでいた。しかも飛べるのは約束だから一回だけ。貴重な一回だったのに。若い頃の父さん母さんに会って研究の手伝いをしただけ。とにかく落ち込んだ。こんな現実ならばずっと1985年でもよかったのに。
戻ってきたところで何も変える事は出来なかった。引っ越しも済んでいるし、車で地元へ戻ることとしよう。
車の近くにいくと、車をじっと見つめている女性がいた。拓人の車を見ているのである。
何か変なものでもついているのだろうか。
「どうかしましたか?」
その人ははっとしてこっちを見た。
「お父さん!」