2パート
二人が集中してしまったため拓人は広樹と広明と話す事にした。
広明は真面目な顔で切り出した。広明と広樹は卒業発表の準備の練習として暗室に連れて行かれた。30年前の研究はパワーポイントというものはなくフィルムに焼いて映して発表するらしくそのやり方を練習しているらしい。暗室なんて場所が研究室にあるのか。ただただ拓人は驚くばかりだった。
「拓人くん。夕やけニャンニャンは見ているかい?」
「あー知らないです。」
「あの番組のアシスタントがかわいいと思うんだけどここの研究室みんなその辺に疎いからさ。」
「この人アイドル好きでね。やたら詳しい。」
チョコを食べている広樹が言った。
「アイドル好きなのは認める。あの隆弘くんに至っては特撮好きだからな。」
「今年なんかやってたよね。なんだっけ?」
「電撃戦隊チェンジマンだよ。オープニングかっこいいって隆弘くん熱く話してたぞ。歌ってるじゃんよく。オーイエス!勝利へのたーたかいーって。」
「あれ戦隊の歌なの?あの歌は確かにかっこいいけどな。」
優がぬっと顔を出した。拓人は優の様子が気になった。
「とうさ・・・・・まちがった、優さんどうでした?」
「だめだったよ。うまく行ったのに再現できない。これが1番へこむ。」
優は座って頭を抱えた。
「優くん、少し外行くか。実は外で取りたいデータもあるし。外に行けば気も変わるだろ。」
「そうするよ。」
4人と拓人を含めた5人は外に出た。
「次元の研究なんて本当に上手くいくのかね。」
「上手くいかないから困ってるんだけどな。」
歩いていると優が前を見て言った。買い物袋を持っていた女性が反対向きへ歩いていたのだ。
「あ、真美さんだ。」
「あ、優くん。久しぶりだね。」
拓人は目を見開いた。青白いといってもいいくらい真っ白な肌と大きな目。丸っこい形の頭。しかも真美って名前。母さんだ。まちがいない。母さんの若い頃だ。大学が一緒だったのか。
「一緒にいるのは研究室見学の学生さん?」
「そうそう。今年度は来ないと思ってたから貴重だよ。」
「こんにちは。」
拓人は挨拶を返した。真美は笑っているが作り笑いである。にこやかな父さんと違って母は大人しく口数もさほど多くない。この頃もやはり、あまりしゃべらないようだ。このあと真美と優が結婚してこの拓人が産まれるなど当時、いや今か。2人は両方とも夢にも思わないだろう。
すれ違っていく真美に挨拶しながら優は言った。
「どうも、しゃべらないんだよねー。真美さんは。何考えてんだかさっぱりわからん。」
それ、父さんの口癖だ。母さんしゃべんないから何考えてんだかさっぱりわかんない。この時期から言ってたのか。
拓人はついつい笑みを浮かべてしまった。
外でデータを取ったあと軽くご飯を食べて研究室に戻る事になった。
なんと、ご飯から戻ると優が拓人に声をかけた時に拓人が立っていた場所に真美が立っていた。
「真美さん。どうしたの?」
優の質問に真美は大人しく答えた。
「優くんのとこと場所近いし、拓人くんにわたしの研究室も見てもらうかなって。思ったんだけど、優くんと拓人くん、いい?」
「拓人くんがいいならば僕はいいけど。」
真美は拓人を見た。拓人は是非。と言った。
「よかった。それじゃあこっち。優くん、1時間くらいしたら拓人くんここに連れてくるから迎えに来て。」
「了解。」




