2パート
すこし、健太がほっぺたを膨らませていった。
「拓人くん。僕のこと忘れてるでしょ。」
「あーあー、ごめん。」
「それと拓人くん。僕の役目は終わったみたい。帰る事になりそう。」
「あら、そうなの。」
「僕、わかるんだ。」
「そうか。さみしいな。」
優が拓人の前に袋を広げて手渡しながら小声で言った。
「これ、今の時代と30年前のアイドルのグッズ。健太に渡してやれ。それと30年前の電撃戦隊チェンジマンのロボットのおもちゃ。チェンジロボとニンニンジャーのシュリケンジン。健太、喜ぶと思うよ。俺、ちょっとみんなで広樹のとこ行ってオムライス食べてくる。」
「わかった。」
健太の前で袋を広げた。
なぜだろうか。一緒にいた時間は短いのにものすごく辛い。もっと一緒にいたかった。とてもさみしい。別れる子を見送る親の思いとはこういうものなのだろうか。少し違う気もする。
「いいか、体に気を付けるんだぞ。走って転んだりするなよ。」
「やだなー拓人くん。僕だってそんなことしないから。大丈夫。」
「これ、アイドルのグッズ。あっち行ったらお姉ちゃんに渡すんだぞ。」
気がつくと泣いていた。チェンジロボの字がかすんでよく見えなかった。
「これはチェンジロボなんだ。30年前のおもちゃ。……三体のマシンが合体するんだ。……もう売られてないから……大事にするんだぞ。」
「ありがとう。」
「それと……これはシュリケンジンだよ。……こっちは5体のオトモ忍がな……合体するんだ。……ちょっと数が多いから……難しいぞ。」
拓人は健太を抱きしめた。
「健太。こんな俺と仲良くしてくれて……ありがとうな。忘れないからな……大好きだよ。」
抱きしめるのをやめると健太の手のひらから虹色の光が包まれ始めた。あぁ、もう行ってしまうのか。少しずつ虹色の光で包まれ始める健太は袋を持ったまま拓人の顔の近くに大ジャンプして飛びついた。
「僕も楽しかったよ。拓人くんといられて。すごく楽しかった。拓人くん大好きっていってくれたけど。僕も過去とか未来とか関係なく大好きだよ。……うん……大好きだよ……パパ。」
最後の言葉を伝え、健太は光に包まれて消えていった。
健太はいつの段階からか目の前にいる人が未来の父になるという事に気付いていた。
もしかしたら最後の瞬間にだけ気づいたのかもしれない。
ずっと抱きしめていた感覚がなくなり、健太は旅立っていった。
がんばらないとな。大事なのは、これからだ。




