2パート
「飛ぶんですか過去に。」
「うん。そうだよ、優くんはその研究をしていたんだぞ。」
「初耳です。」
「拓人くん君はお父さんの話あんまり覚えてないんだな。実は次元の研究も目的がないままやっていたわけではない。次元は霧の中などでランダムに現れてしまうもので霧の中を走っていた自転車が全く別な場所に出てしまう事もありうる。昔、その次元を調整できる研究が誕生した。そして、次元によっては過去にも飛べる。君のお父さんはそう言う事を研究していたんだよ。」
父さんってすごい人だったんだなと改めて思った。
「私も過去に飛んでいろいろとやり直したいですよ。」
拓人は苦笑いを浮かべながら言った。もし、あんな会社選ばなければ今こんな思いをせずにすんだのではとか、あの時なんとしてでもつづけたいと粘れば職がなくなることもなかったのではないか。後悔は山ほどあった。
「そろそろこの研究室も閉めるからな。一回だけ使ってみる?」
「もし、吉田先生がよろしいのならば是非。」
「決まりだな。それと拓人くんは素人なので私も立ち会う。」
吉田からいろいろと細かい事を教えられた。機器の使い方、機械の中で座り、吉田先生が機械を作動させれば過去に跳べるという事。また、年代や場所は吉田先生や拓人にも指定は出来ないがそこへ行きたいという思いが強ければそこに飛べるという事。過去に飛んで行動できるのは過去においての1日だけであるという事と、1日経つと自動的に飛ぶ前の時刻とぴったり同じ時間に帰ってくるという事だった。帰ってくる場合は機械の中に座る必要はなく、どこへいても確実に飛ぶ前と同じ時刻、同じ場所に戻ってきてしまうという事だった。
拓人の考えは22歳の頃、就職活動をしている自分自身に会い、今後その会社からは辞めさせられる事になるから場所を変えるべきであると伝える事だった。そうしたら未来である現在もっといい人生を送っているはずである。
機械の事についてはよくわからなかったが人工的に霧を発生させるためかなり大きかった。
機械の中に入ると椅子がおいてあり、そこに座った。
「それじゃあ準備はいいかな?」
「大丈夫です。」
「それではいってらっしゃい。」
「行ってきます。」
拓人は目を閉じ、22歳の頃の自分に会うと強く願った。必ず変えてみせる。
霧が発生し、霧で包まれた。そして虹色に光り輝き、体が浮いた。
拓人は気が付くと地面に立っていた。
「よし、うまくいっ・・・・・どこだここ?」
なんと全く身に覚えのない場所だった。
しかも、それどころかすれ違う人みんな服装がいまの自分と違っていた。昔のファッション雑誌の服装のようだ。
特に驚いたのは肩の上にラジカセを乗せて歩いている人がいた。あれで音楽をきいているのか?映画のポスターには黒い怪獣が写っていて「80メートル、5万トン、列島をひき裂く巨大怪獣」と書いてある。
しかも、誰一人携帯やスマホをもっていない。一体いつの日本だここは?
コンビニエンスストアの新聞をのぞき込むと1985年って書いてある。昭和じゃないか。
なんでこんな年代に来てしまったんだ。びっくりして歩いていると大学の場所を示す看板が見えた。
父さんの出身大学だ。
状況がよくわからなかったがせっかくなので父の研究室に言ってその次元の研究ってどんなものなのかを見てこよう。
看板に従って父の研究室のまえに来た。父はこの時間でいえば25歳、もしかしたらこの研究室の中にいるかもしれない。
「お、なんだか見慣れない人がいるな。」
あれ?よく聞いた声だぞ。
振り返るとそこには本を抱えた人が立っていた。
間違いない、お父さんだ。