1パート
作者である私にはとても好きなドラマがありそれには原作本がありました。そのドラマに経緯を評した作品としています。
「すいません。これで失礼します。大変お世話になりました。」
会社の社長に頭を下げ、拓人は会社をあとにした。会社をクビになったのだ。
拓人に何か非があったのではなく、会社が展開している店舗が注意され、店舗の数を減らす事となった。それに伴って会社の収益が大幅に減ることとなりやむなく正社員を減らさなければならなくなってしまった。
拓人は24歳ということもあり、未来があるからねと諭され半ば辞めさせられる形で辞める事になった。
自分のアパートに戻ったがしばらくは呆然と立っていた。今後の事を考えると気が重かった。
就職活動をやり直すことになるのか。同じ業界の似たような会社に再就職すればいいのだろうか。貯金もさほど残ってないから家賃や光熱費、食費とかはどうしようか。
と、まずは親に連絡をしなければならない。拓人の父親は研究者であり、次元の研究をしていた。拓人はメールを打った。
「仕事、なくなったよ。」
数十分後に返信がきた。
「大方、そろそろかなとは思ってたよ。ある程度は想定内。それで、どうするわけ?」
父はおしゃべりなのか余計な事をたくさん言う。今後の事を聞きたければ最後の一文だけでいいと思う。拓人は心の中で文句を言いながらメールを打った。
「就職活動をやり直すよ。」
今度はすぐにメールが来た。
「行って欲しいところがあるんだけど・・・・・」
拓人の父が大学時代いた研究室の助手をしていた人らしい。その人の所へ行き、話をしてきて欲しいと言っていた。名前は吉田先生というらしい。
拓人からしたら完全に赤の他人である。そんなことを頼む意味がわからなかったが、悲しい事に時間はたっぷりあるので父の言う通り、その人に会いに行くことにした。
すこし小さい研究所だった。受付の人に話しをすると来る事はあらかじめ伝わっていたようですんなり会う事ができた。父よりは10歳くらい上だろうか。ところどころ白髪はあるが優しそうな人だった。
「君が拓人くんかぁ。君が子供だった頃は何回か会ったんだぞ。」
拓人は覚えているはずもなく相槌をうつくらいしかしなかった。
「君のお父さんは元気かな?」
「元気ですね。基本的にいつも元気です。」
「おしゃべりな人だからなー。元気なのは何よりだ。」
拓人の父、優はおしゃべりであり、余計な事もたくさんいう。
理系であり、科学的な事が好きだった。おしゃべりである上、理系であるからか拓人は口喧嘩で優に勝った事がなかった。
「優くんはなかなか優秀な学生でしたよ。あの子は学生時代にしたい研究と出会えたのが大きかったのではないかな。」
なんだか拓人はうれしくなかった。自分の現状はとてもいい状態とは言えないのに父はすごいと言われ、逆に拓人自身を否定されているような気がした。
複雑な表情をしている拓人に吉田は言った。
「君は次元という概念に興味はあるかい?」
「父からたくさん話は聞きましたから、なんとなくはありますね。」
口ではそういったものの、興味はなかった。いや、むしろ嫌いだと言ってもよかった。父さんは帰れば研究内容の事を頼んでもいないのにたくさん話す。母さんは父さんと同じ理系出身だからかそういう話題が好きで楽しんで聞いているが次元とか研究とか正直おもしろくはなかった。そんな毎日を聞かされているうちにすっかり嫌いになっていた。部屋でゲームをしている方がずっとよかった。
「興味があるのならば、せっかくだから見てもいい範囲で実験機器もあるし見ていこう。」
気を使って興味があるなんて言ったのが失敗だったか。用事を済ませたら早々に帰りたかったがこうなればこの人と見て歩くしかないか。
大きなタンクや、メーターなどがあった。いかにも理系らしい機器だった。
久しぶりの客人だからか吉田先生はうれしそうにいろいろ話をしてくれた。笑顔で相槌をうちながら話を聞いていた。
しかし、会話に出てきたとあるフレーズに拓人は大きく興味を引かれた。
「・・・・・計測するわけさ。こうすることではじめて過去に飛べるようになる。」