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絶望の仮想世界  作者: ぷらずま
第1部
6/22

夢の中での再会

―――

「………」

10日間の記憶が無い。

なんか……真っ暗な……

場所にいた気がする。

でもそれ以上は全く覚えていなかった。

覚えてないのは仕方がない。

またこっちに来たんだから、気を引き締めないと…

今度は、ジャングルみたいなところに来ていた。

少し様子見で歩いてみたけど、前の森とは違い、結構見渡しはよかった。

あまり鬱蒼とはしていない。

でも、前みたくここを出た先の目的地……

…に、意味があるのか、それとも、このジャングルに何か、もしくは誰かがいるのか…

出来れば…誰も殺されないようにしたい…

その前に会って、私が元の世界に戻してあげないと…

みんなも、こっちに何日もいるはずだから、早く助けてあげたい。

そして、今は一番、里菜ちゃんに会いたい。

里菜ちゃんがいれば、頑張れるんだけど…

今、どうしてるんだろう…

なるべく早く、会いたい。

そのためにもたくさん動かなきゃならないんだけど…

しばらく歩いていると、微かに、川の音が聞こえる。

私はその音が聞こえる方に向かって歩いていった。


「……あ」

少し歩くと、音の通り川があった。

川幅は思ったより広く、見晴らしもいい。

川の向こう側にもこっちと同じようにジャングルが広がっていた。

川の水は、澄んでいる。

少し飲んでみた。

「……ん…大丈夫かな」

普通に飲めた。

特に問題はなかったし、喉が渇いたときは飲みにこれる。

それに、川沿いに歩いていれば何かしらあるかもしれない。

そう思い、歩を進めようとしたとき…


……どぐぁわああああぁぁぁん


「!? うっ!?」

とてつもなく大きい爆発音が聞こえた。

音は後方から聞こえ、直後私は熱風に体を押され川に落とされた。

「……ぷはぁっ! な、何…?」

泳いで川沿いに体をあげる。

しばらく様子を見て、森の中を音が聞こえた方に向かって走る。

私が最初に来た方向とはずれており、しばらくすると植物がほとんど無い地面が荒れた場所に来た。

熱が残っているのか、まだ周囲は熱く、荒野を挟んで向こう側の木は燃えている。

その手前。

煙がたっている。

そこに向かっていると…

泣き声とともに、聞いたことのある声。

「うあああぁぁ… 実夏? ねぇ… 返事してよ… お願いだから…!」

「………うっ…うっ…」

「……鈴ちゃん…? 芽露ちゃん…」

「!! 莉奈ちん!」

「………あ…」

そこにいたのはクラスメイトのりんちゃんと芽露めろちゃん。

それと……下半身がない、実夏みかちゃんだった物…

「ね、ねぇ莉奈ちん… 実夏が喋らないんだけど… ね、ねぇ…ねぇ!」

「……う…」

喋らない。

当たり前だ。

いくら痛みが無いとはいえ…

下半身が吹っ飛んでて生きてられる訳がない…

「…………や、やめなよ鈴ちゃん……莉奈ちゃん困ってるよ…」

「だって……実夏が……実夏が…っ!」

―激しく錯乱してるのは鈴ちゃん。

クラスの中でも活発な子で、お世辞でも頭がいいとは言えない。

そのかわり運動能力が高く、陸上部のエースをつとめる。

物静かな方は芽露ちゃん。

彼女はおしとやかで、すごく静かな子なのだが、時には鈴ちゃんを凌ぐ程の記録を叩き出す、陸上部のもう一人のエース。

そして…下半身が吹き飛び、物言わぬ人となってしまったのは実夏ちゃん。

彼女も陸上部。

そして、その陸上部をまとめるキャプテンだ。

恐らく、陸上部3人組で一緒にここに来て、3人で行動していたのだろう…

そして、一人が悲劇に陥った…―

「…何があったの?」

「分かんないよ…3人で歩いてて、実夏が何かに気づいたらしくて、いきなり『離れて!』って言って走り出したと思ったら…いきなり、目の前がどかんって…」

あの爆発のことかな…

「…それで、二人は無事だったんだ…」

「…いきなり走り出すから、呆然としてた…」

「…………風がすごい勢いでふいて、向こうまで吹き飛ばされた」

「だ、大丈夫だった?」

「それに関しては全然… 驚くくらい痛くなかった」

やっぱり…

私たち以外は、痛みを感じなくなっているのかな…

なんでなんだろう…

「そ、そっか…」

「…でも…実夏が…… ここ、なんなの…?何もないし、想像してたところと全然違う…」

「………」

「…………何か知ってるの? 莉奈ちゃん」

「え…… あ、うん… 少しだけだけど…」

「! じゃあ、ここから出られる方法とかわかんの!?」

「わ! し、知ってるから、落ち着いて… 今すぐ戻してあげるから…」

「早く教えてよ!」

「ひっ…」

「…………鈴ちゃん… ちょっと落ち着いて。 莉奈ちゃん怖がってる」

「あ… ご、ごめん…」

「ううん、大丈夫… 二人とも、ちょっと手を貸して…」

そう言って二人の手をとり、前のように念じてみた。

しかし…

「………あれ…?」

「…………? どうしたの、莉奈ちゃん」

「う、ううんなんでもない… むん……」

おかしい…

二人の体が光に包まれない。

なんで…?

「…大丈夫…? 汗、すごいよ?」

「ご、ごめん… ちょっと疲れちゃって、力が出ないや…」

いつの間にか、疲労感が溜まっていた。

前よりは動いてないし、さっき水を飲んだばかりだし…

この疲れはおかしい…

風邪でも引いちゃったのかな…

「うーん…… あ、私今ペットボトル持ってるから、水汲んできてあげるよ! それを飲めば、きっと元気でるし!」

!! 今、この場所から動くのは…!

「ま、待って! 今、ここから動くのは危…」

そう途中まで言ったその直後。


どぐぁわああああぁぁぁん……


「!!!! うっ!」

再び、さっきと同じ爆発。

私達は、熱風により後ろに吹き飛ばされる。

「……ぅあっ!!」

吹き飛ばされた先にあった木に頭を強打して、私は意識を失った。



――――

「…あ、里菜ちゃん!!」

「あ、莉奈… やっと会えたね」

「ずっと探してたんだよ!」

「…ありがとう。 やっぱり莉奈大好き」

「う、うん… …?」

「どうかしたの?」

「う、ううん。なんでもないよ」

「そっか。 ねぇ、莉奈。何か忘れてることない?」

「…え? 忘れてること…?」

「うん。 それを思い出せれば、莉奈は真実に、大きな一歩を踏み出せるよ」

「え? 何を……」

「でも、莉奈はその真実にたどり着いてはいけない」

「……はい? 何を言ってるの? 里菜ちゃん…」

「ふふ。楽しいね、この世界。理科ちゃんに感謝しないとね」

――――



「………うーん…」

今…何か見ていたような…

「…………大丈夫、莉奈ちゃん」

「…あ、芽露ちゃん……」

膝枕されていた。

気絶、してたのかな…

そういえば…

「……鈴ちゃんは…?」

嫌な予感を感じつつ、分かっているはずの事実を否定しながら芽露ちゃんに聞いた。

「………………いない」

「そ、そうかっ。 川に行ってるんだったよね。 あ、あはは……」

「生きて、いない」

つまり。

「………………あは……」

死ん……

「…なんで」

仮に、本当にいなくなってしまった訳でなくても。

「…おかしいよ」

そんなこと、考えられるわけがない。

「…嫌だ」

…目の前で、友達が死んだのだから。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だああああああああ!!」

「…………落ち着いて」

「また…また… 私が行動を起こさなかったから…!!」

「…………莉奈ちゃん」

「嫌だぁ… もう嫌だよ… こんなの…」

「…………」

恐らく、二人もう現実の世界に戻ってる。

じゃあ、あとすること。

「……っ」

「…………!」

芽露ちゃんの体が光に包まれる。

「…………莉奈ちゃん」

「もう、大丈夫だから… みんなは。 二人とも、いるから。 向こうに…」

「…………分かった。ありがとう…」

私の言ってることが分かったのか、芽露ちゃんは私に礼を残して光に包まれて消えていった。

「………うっ…うっ…」

誰が。

何のために。

このようなことを。

そのとき、ピロリン、と、音が聞こえた。

目の前には前と同じ箱。

「………」

戻ろう。

一旦現実に戻って、気持ちを落ち着かせよう。

戻るためには…

「……銃だ…」

死ぬしかない。

箱に入っていた銃をとり、銃口をこめかみに当てる。

恐怖感は無かった。

今は、ただ。

「…………」

とりあえず、目を背けたかった。

絶望的な、非現実から。

引き金に指をあて、その指を引く。

一瞬、痛みかどうか分からない感触が頭に感じ、視界が揺らぐ。

その直後。

声が聞こえた。

聞いたことのあるような、ないような。

でも、私の名前を呼んでいた。

しかし、その思考は、意識と共に闇に葬られた…

――― 

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