軽精神崩壊・腹パン
※残酷・グロい表現が出てきます。
読む場合は注意してくださいな
――
「………うーん…」
頭が痛い。
どうやらまた転送されたみたい。
今回は装置をつけてない状態で転送されたようなので、どうやら私はこの世界を変えるまで現実世界で行動出来るのは10分だけのようだ。
これからはとても大変なことばかり起きそう…
仮に実際に死んでる訳じゃなくても、人が―ましてや仲のいいクラスのみんなが―目の前で殺されるのを見なければならないのは辛すぎる。
早く終わらせたかった。
でも、転送された場所は多分、さっきの森。
それに…
「きゃっ!?」
血の匂い。
そして、隣の木と地面には赤い血がべっとりとついていた。
恐らく私がさっき死んだところ。
死体はない。
あまりに濃い血の匂いに、気持ち悪くなった。
急いでこの森を抜けて、みんなを探さなくちゃ…
幸い、一度抜けて入ってきたら疲労感は抜け、撃たれた脚に傷はのこっていなかった。
空腹感もなくなったけど、食べ物がないことは変わりがないので、辛いことにも変わりはない。
精神を気丈にもち、終わりの見えない森を私は再び歩き出した…
――
「……はぁっ… あっ…!」
光が若干見える…
森の出口だと思い、私は残る力を振り絞って走った。
ようやく…この森から抜けられる…!
歩き始めてから多分…4時間ぐらいだろうか。
調度お昼ごろ。
私は遂に、前方に漏れる光を見つけた。
光が近づいてくる…
歓喜をため、光に向かってひたすら走る。
「やった… これで…!」
森の出口付近、外の景色を目に入れた時…
惨劇が始まる直前だった。
「!!」
私は出口付近の木の影に隠れ、外を見る。
誰かが、磔にされている。
クラスの誰かだと思うけど、そこまではよく見えない。
人工的に建てられたと思われる、十字架になった木に磔にされている。
だけど、彼女以外に人がいる様子はない。
「今なら…」
助けられる。
と、思い木陰から出ようとしたとき…
「…!!」
どこからか、さっき私を殺したような、人形のなにか、が4、5体現れた。
今度は、マシンガンのような物を持っている…
恐怖心から、私は再び木陰に隠れてしまう。
彼女は、殺されてしまう…
しかし、助けに出たら、私も殺されてしまうかもしれない…
怖かった。
私は木を背にして、目を瞑って惨劇が終わるのを待った。
「………」
しかし、それらしき音は全く聞こえてこない。
様子を見ようと、木陰から顔を出した瞬間、
がががががががががが……!!
耳をつんざくような銃声が鳴り響いた。
「…あ、ああ…… ああああああああ!!」
赤いものが飛び散っている。
五方からのマシンガンの集中射撃を受け、彼女の体は崩れていく。
もう人なのかどうかも分からないくらいぐちゃぐちゃになっていた。
そしてその後すぐに銃声は止まり、マシンガンを撃っていたやつらはどこかに姿を消して行った。
「………」
私は恐る恐る、元クラスメイトだったもの、に近づいていく。
辺りに真っ赤に染まった肉片が飛び散っている。
「………うっぷ……」
すごい血の匂いがする…
気がおかしくなりそうだった。
「……あぁ…」
まともに見える範囲まで近づいた。
それは、もう人としての原型を留めておらず、ただのグロテスクな肉の塊となっていた。
誰なのか認識すらできない。
「……ごめんなさい…ごめんね…」
謝ることしか出来なかった…
でも、これで彼女は現実世界に戻れたはず…
だったらいいんだけど…
と、その時、後ろから声が聞こえた気がした。
「莉奈ちゃん!」
「………」
でも、目の前の惨劇を目の当たりにした直後の私には、聞こえるはずがなかった。
「莉奈ちゃん!莉奈ちゃん!!」
「えっ… ………桜…ちゃん…?」
呼ばれて、肩を掴まれて、そこで初めて気が付いた。
彼女は、私と同じクラス、同じ女バス部の子。
雪ちゃんという、クラスと部活が私達と同じの、双子の妹がいる。
「…ゆ、雪が… 殺され… こ… ころ…」
激しく混乱している…
と、いうことは、この殺されてしまったのは雪ちゃんだったのか…
「……ま、待って… お、落ち…落ち着いて…」
「…う、うぁぁ… ご、ごめん… 衝撃的すぎて……」
妹が恐らく、目の前で殺されたのだ。
落ち着いている方がおかしい…
その後、さっき私が隠れてた木陰まで移動し、桜ちゃんが落ち着くまで、じっと待っていた。
…自分自身の混乱を静めるためにも。
そして、ようやく話せるレベルまできたことを確認して、少しずつ話していく。
「…二人は、一緒にいたの…?」
「う、うん… 一緒に…この世界きて… そしたら、さっきのに私達は拉致られちゃって…」
一つ一つの単語を絞り出すように話していく。
「そしたら、私達は殺されかけたんだ…」
「……え?」
「で、私は腕を撃たれたら、雪がブチギレて…ここまで連れてこられて、磔にされちゃったんだ… 私は、体を押さえられて強制的にさっきの様子を見せられてた…」
「そうだったんだ… 腕、大丈夫…じゃないよね…」
体を弾が貫通する激痛は私も味わった。
しかし…
「いや、大丈夫だよ。痛みはないから、平気だったし」
「……え?」
痛みが…ない?
「痛く…ないの?」
「うん…最初に理科が痛みもリアルに伝わってくる、って言ってたからすごく怖かったんだけど…何かが当たった、くらいの感覚しかなかったよ…」
なん…だと…?
「え…嘘…」
「ほんとだよ… 雪も……表情が見えてる時までは…特に痛そうな顔はしてなかったし… 苦しくは無かったと思うよ」
じゃあ、私が感じた痛みは一体…
「…大丈夫?莉奈ちゃん… すごく汗出てるけど…」
「あ…うん、ごめん。大丈夫大丈夫…」
「ならいいけど… でも、雪が…」
「あ、それなら多分、意識は現実世界で戻っていると思うよ…」
そう言った瞬間、桜ちゃんの表情が一気に明るくなった。
「え、ほんと!?」
「うん…」
多分、普通の装置だから私みたいに戻ってくるってことは無いと思うけど…
「じゃあ、私達も戻る方法を探さなくちゃね!」
「あ、待って…」
桜ちゃんを戻すことが、私にならできるかもしれない…
直感的に、そう思い、彼女の体を掴み、少し念じた。
すると…
「え?」
「あ…」
桜ちゃんの体は光を帯び始めた。
できた…
「なんか、体が軽くなった気がする… 莉奈ちゃんこんなこと出来るの?」
「多分… 私は、なんか他の人とは違う装置をつけたみたいだから… 桜ちゃんは、多分それで起きると思う…」
「そっか… ありがとう。このお礼は今度個人的にさせてもらうね」
「え、いいよ~…」
「いや、どうやら莉奈ちゃんにしか出来ないみたいだし… それに、これから先大変そうだし…」
勘がいいな…
その勘のよさも、彼女のバスケのプレーに発揮されていた。
「うん… ありがとう。とりあえず、向こうに戻ったら理科ちゃんにここで有ったこと連絡しておいて」
「わかった。頑張ってね、莉奈ちゃん…」
そう言って、桜ちゃんは聖なる光に浄化されるかの如く、消えていった。
これで、大丈夫なはず…
とりあえず、二人は救出できたと思う。
肉の塊となってしまった雪ちゃんの死体も、同じように光に包まれながら消えていった。
と、その時。
ピロリン、と頭の上で音がした。
気づくと、さっきまで雪ちゃんが磔にされていた場所に箱が置いてあった。
恐る恐る箱を開けてみると…
中には、おにぎりが二つ、入っていた。
「やった…!」
人を助けるとこういう何がが貰えるのかもしれない。
私は出てきたおにぎり二つをすぐに食べた。
調度時間としては正午あたりだと思うし、何よりお腹がすごい空いていた。
こっちにまた入ってきたときに空腹感は無くなったものの、ご飯を食べたのは約24時間ぶりだった。
お腹が膨らみ、さっき悲劇を目にしてしまったものの…
助けられたということもあり、少しは元気が出てきた。
周りを見てみると、後ろに森、前の方にかなり遠くに建物が見えた。
すごく遠い感じがしたけど、目標が見えるのは終わりが見えないのよりはずっとマシだ。
ここは草原らしく、見渡しがいい。
森よりはずっと好条件だった。
天気は晴れみたいだし、体力的に問題は特になさそうだった。
私は遠くに見える建物を目指し、再び歩き出した――
―目的地は予め見えていたので、気が滅入ることはなかった。
しかし、思ったより遠く、かなりの時間がかかり空は赤色がかっていた。
歩いて約4時間。
思ったより遠かった目的地に着いた。
そこは、おおきいお城と城下町で、外からでも人がたくさんいるのが分かった。
いつかの人形の何か、ではなく、ちゃんとした人でかなり安心した。
「…脚痛い…」
もう4時間もずっと歩いている…
某ゲームみたいに、城下町には休める場所があるのがつきものなので、それを期待して町に入ろうとする。
とにかく今は、ふかふかのお布団で体を休めたかった。
しかし、城下町に入ると様子がおかしい…
なんか、町の人の視線が、怖い。
まるで、殺人犯を見るような、蔑みの視線。
「…あ、あの…」
「………」
話かけても、無視されてしまう…
宿屋を探し、町を歩いていると…
男の子が私を見た瞬間、こちらに思いっきり走ってきた。
…何かを恨むような形相で。
「死ねー!」
「っ!! くっ……ぅ…」
全体重を乗せたパンチが、私のお腹のど真ん中に入る。
立っていられなくなり、その場にうずくまると…
「死ね! 死ね! 死んじゃえ!」
体に蹴りを何発もいれられる。
「待っ…ちょっと待っ… がっ…」
私は今この町に入ってきたばかりなのに…
私が何をしたっていうの…
「や…止めて… 蹴らないで…」
しかし男の子は依然として私を蹴り続ける。
「……うっ…」
うずくまり、蹴りが収まるのを待つ。
「……ばーか!」
しばらくして、男の子はそう言い残しどっかに行ってしまった。
「助かった…」
身体中が痛い…
理由は分からないけど、この町でゆっくりはできなさそうだった。
私は立ち上がり、そそくさと町を出ようとする。
しかし…
「……何帰ろうとしてんだよ…」
「人殺しが…!」
「……え…?」
町の人が出口を塞いでいた。
私は後ずさるものの、後ろの人にぶつかってしまった。
大人の人に、囲まれてしまった。
「オラっ 動くんじゃねぇ」
「ま、待って下さい… 私が何をしたって言うんですか…」
「しらばっくれてんじゃねぇ!」
両腕を捕まれた。
振りほどこうにも、力が大きくてびくともしない。
大の大人の腕力に、非力な女子高生の力が勝る訳がない。
「や、止めて下さい… 本当に何も知らないんですって…!」
「うるせぇ!」
「がっ…!」
お腹をまた殴られた。
訳がわからない…
何もしていないのに…
「オラ!」
「あ゛っ… ぐっ…」
複数の人に、何度も何度もお腹にパンチをいれられた。
さっきの男の子のでも十分痛かったが、大人の人の比ではない。
胃袋が潰れてしまいそうだ…
「……はぁっ… ぐっ…」
これは、ヤバい。
最悪死んでしまう。
「…………おえっ… げほっ…げほっ…」
お腹の中の物を地面にぶちまけた。
「うわ… きたね…」
あなたたちが吐かせたんでしょ…
それでも、なお町の人達は私のお腹を殴り続ける。
「止めて… 死んじゃう…」
私は、そう頼むしかなかった。
しかし、一向に殴ることを止めてくれる気配はない。
私が一体、何をしたのだろうか…
赤く染まり、これから夜に向かう空のように、私の気持ちも、意識も、重く、暗い方向に持っていかれる……
この人達は、本気で私を殺そうとしている。
素手だけで。
ある意味、一瞬で殺されるより地獄だと思えた。
「…あ゛…おえっ………がっ………」
あ、ヤバい…
意識が朦朧としてきた…
「待っ…待って……」
「チッ… うるせーんだよ… いいからさっさと……
死ね!!」
その単語と同時に、今までよりも強い一撃が私のお腹にめり込んだ。
今まで蓄積されたダメージを大きく上書きされ、私の意識を深い闇に葬った…――




