尋問
――――
「...............」
何日が過ぎただろうか。
私が、動くことを諦めた時から。
疲労、空腹、睡魔...様々な理由で頭はぼーっとし、物事を考えようとすると頭痛がする。
その働かなくなった頭では、昼と夜が何回繰り返されたかはわからなくなっていた。
とにかく、もうずっとここにいる。
妹の血の匂いがするこのだだっ広い草原のような場所で。
いつかは衰弱死すると考えていた過去の私の予想は日数が重なるごとにに薄くなっていった。
もうどれだけ日数が経過したかは分からない。
だけど、いくらお腹が空いていても、動くことすらまともにできない状態になっても、この世界で私の命が絶えることはないのだろう。
今まで味わったのとは違う、まだ経験したことのないような苦しみが私を蝕んでいた。
―今は左半身を下にして横になっている。
寝返りを打つか、辛うじて体を起こして座る体勢になるくらいしか体は動かせない。
そして、今は夜なのだろう。
顔の前にある手だけがうっすらと、暗闇の中から見えている。
......欠伸すら出ない。
でもまた、目蓋が重くなってきた。
それに逆らうことなく私は再び起きても意識が覚醒しない眠りについた......
―
「莉奈」
「......」
「大変そうだね」
「......」
「私ももう、考え疲れた」
「......」
「別なこと、やりたいよね」
「......」
「............」
「......」
「1つ、言っておくね」
「......」
「今までのことは、全部、これ。」
―
「......」
僅かに目を開けると、眩しい光が射し込んでくる。
...何か音が聞こえた気がする。
カン カン カン カン...
......鐘の音?
遠くから、鐘らしき音が僅かに聞こえてくる。
...なんなんだろう。
まぁ...私には関係のないことだし...
身体も動かないし...
もう1回、寝ちゃおう...
目が覚めてから全く体を動かさずに、再びまぶたを閉じる。
............
...なんか音が聞こえる。
鐘の音じゃない。
騒がしい、これは...
「いたぞ!! あれだ!」
人の声。
ドドドドドド……
人が流れ込むような音が、聞こえてくる。
そしてその音は次第に大きくなり…
私の背後で、音は止まった。
「………見つけました。死んだ筈の人間を。………いや…
魔女を」
私は不意に腕を引っ張られる。
「なんでこいつがここに……」
「嘘……殺したはずじゃ……」
人の話し声が聴こえる。
しかし、疲労が限界の私には、その言葉の意味を理解することは出来なかった。
何が起こったかはわからない。
「…よし、回収した。じゃあ、戻ろう…」
私は疲労から意識を失った。
そして、私の体は、別の場所に運ばれていった――
………
音が聞こえる。
それは、人の声。
どよめき、怒り、…殺意。
様々な声が、眠りから覚めた私の耳に入ってきた。
「………」
さぁ、また静止の1日が始まる…
筈だった。
…何故か体が動かない。
疲れて動かないんじゃない。
動かせない。
-その時。
「おらあっ!」
男の人の声が聞こえた。
そして直後に、腹部に痛みが走る。
「………痛い…」
何かが当たった。
そして、その直後にまた…
どかっ! ごすっ!
「………っ!」
今まで機能しなかった頭が、衝撃によって無理矢理動いた。
どごっ! どかっ!
「…痛い……痛い…!」
目を開ける。
その先に見えたもの…
それは-
たくさんの人。
それを若干見下ろすような位置に私はいた。
「…え?……え?」
頭が考えることを始めた。
何日ぶりの行為だろう。
頭が痛くなる。
そして、自分の状況にやっと気が付いた。
私は周りの人より高い位置にいる。
手足を縛られ、動けない状態で。
手は広げられ、手首の位置で縄で巻き付けられている。
…後ろの木の板に。
そして、足はまとめられ手と同じように縛られていた。
ーー張り付けにされている。
どがっ!
「がっ……!」
私に向かって投げられた石が、頭に当たる。
直撃時の鋭い痛みの後に脳みそが揺れるかのような鈍い痛み。
左側頭部を熱い液体が流れるのを感じた。
「はあっ……はぁっ……ぐっ………いっ…だっ……」
投石は続く。
この人間達は私を殺すつもりなのだろうか。
どうして、こんなことに…
ふと、周りの人間と自分の状況にしか向けてなかった注意を反らしてみる。
……やっぱり、あの町。
以前私が、理不尽に拷問を受けた城下町だった。
そして、今度は張り付けにされ、石等を投げつけられている。
…何故、私はこんなに恨みを持たれているのだろう。
訳が分からない。
そんなことを考えている最中も、投石は止まらない。
寧ろさっきよりもたくさん飛んできている。
がっ! どごっ!
「はぁ……はぁ……うぐっ…………っ!」
辛うじて開けてる目。
その直前に、こぶし大の灰色の物体が見えた。
とっさに目を瞑る。
しかし遅かった。
「あ゛っ…!いだぁ……ぁぁ痛い痛い痛い痛い!!…あああああああ!!!」
左目に激痛が走る。
今まで当てられてた痛みよりも何倍も何倍も痛い。
顔が熱い。
右目に涙を浮かべるが、左目に流れたのは熱い赤い液体だった。
開かない。見えない。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
「よっしゃあ!クリティカルヒットだ!左目潰したぜ!!」
「よくあんな小さい的直撃できたな!」
「ま、俺にとっては朝飯前だったっていうか?www 次は右目も潰してやるぜ!」
「…………っ」
何を言っているんだろう。
私の周りに群がっているゴミは、本当に人間なのだろうか。
……右目は辛うじて開けることができた。
しかし左目は激痛と物理的損傷によって開けられない。
痛い。
なんで、こんな目に。
ーーーガッ! ドガッ! ドゴッ!
時間がいくら経過しても、地獄は終わらない。
顔面には当たってないものの、頭からは血が至る場所から流れ、顔を赤く染めている。
体も恐らく痣だらけになっているだろう。
スカートを穿いていたから露出している脚からも血が流れている。
意識が朦朧とする。
呼吸をするだけでも辛い。
こいつらは私が死ぬまでやるつもりだ。
そう改めて思ったその時。
後ろから、ピーッピーッ!と、高い笛の音。
「退きたまえ! 今から魔女を火炙りにする!」
偉い人が来たのだろうか。
周りから歓声が聞こえる。
魔女って何?
頭おかしいだろこいつら。
私の足元に、藁が敷かれる。
そして……火が放たれた。
ぼおぉ……という音とともに徐々に足の裏に熱を感じる。
そしてその直後、炎は私の足を焼いた。
「……あっづっ………熱い…熱い…熱い熱い熱い熱い熱い!!」
疲労で意図的に出せない音量の声が、悲鳴によって吐き出される。
足は足首で縛られているため、全く動かせない。
抵抗すら出来ない。
為されるがままに足を焼かれる。
「あ゛ぁ゛………止め゛………て……」
懇願の声が出る。
しかしそれは掠れた音だった。
まともに発せたとしても聞く耳持たずだと思うが。
「ははっ!魔女っぽくていいじゃねーか!あ、魔女なのか!魔女狩りだな!」
あはははははははははは!
「……ぅ………ぁあ……」
笑い声が聞こえる。
そこまで意識を向けられない。
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。
足の裏の感覚がどうなっているのか分からない。
火炙りにされているのかどうかすら、分からない。
熱さ以外に感じるものはない。
意識が遠くなる。
…………………………………………
「…よし、もういいだろう。 気を失ったみたいだ。 処刑の間へ運べ。」
ーーーーーー
「………そろそろ起きろ!!」
「……! がはっ……えほっ…げほっ………」
お腹に鈍い激痛を感じ、叩き起こされる。
気を失っていたみたいだ。
もう何がどうなっているのか分からない。
「……ちゃんと起きたのかぁ?どれ、もう1発…!」
め゛り゛っ゛
「……ぁ゛!! がはっ……!え゛ほっ……げっ…ほっ…」
お腹をバットの用なもので殴られる。
血を床にぶちまけた。
なんでまだ生きてるんだろう。
早く死んで楽になりたい。
「ん~~? まだ意識がないみたいだな~?」
は?
「仕方ねぇなぁ……! もう1発くれてやるよ!!」
ごり゛っ
「……がはっ………げほっ……あ゛ぁ゛ぁ゛………」
頭おかしい。
なんで。
「起きたかぁ~~?」
イラつく。
「……もういいだろう。その辺にしとけ。下がっていいぞ。」
「……はっ」
…………
……誰?
「そこの女。これから尋問を始める」
「私の質問には『はい』か『いいえ』でのみ答えること」
……何が始まるの…?
「理解出来たか」
理解出来ない。
「………ぃ」
声が出せない。
「何か言ったか?はいかいいえでのみ答えること」
何も考えられない。
「………は……………ぃ……」
とりあえず何か言っておこう。
自分が何を言ったかは分からないけど。
「……よろしい。 私はこの国の王である。 今からそなたの存在及び罪についての尋問を始める」
「そなたの存在は魔女で間違いないか」
「…………」
…………
「なお、こちらが意図しない答えをした場合、又は沈黙を貫いた場合、ここにいるそなたと同じ身分の人質を処すことになる」
……人質…?
同じ…身分……て何……?
顔を上げる。
王様らしき人の横に、5人の人が断頭台に頭を嵌められていた。
見たことのある制服。
私と同じのだ。
……私のクラスメイトだ。
1人だけ、意識があるようで戦慄の表情をしている。
誰だかは分からない。
残りの4人は頭を垂れて寝ている。
「…! り、莉奈ちゃん!莉奈ちゃん! 莉奈ちゃん!!」
……誰だろう。
みんなのうちの誰かであるとは思うけど誰だかは分からない。
「助けて…! 怖いよ………怖いよ……!」
「……その五月蝿い者の首を落とせ」
…………
「やだぁ! 死にたくない!死にたくない!! や、止めて…… 助けて…莉奈ちゃん…! やだああああああああああああああああ!!!」
「…………え?」
「落とせ」
「止めてえええええええ
ドンッ
頭があった場所から、思いきり血が噴き出す。
「…………」
…………何?
「尋問を続ける。そなたの存在は魔女で間違いないか?」
……………
何が起こってるの…?
「……………」
「……もう1人の首を落とせ」
そう言って、ギロチンの刃が降り下ろされ、いとも簡単に人間の首が切断される。
ドンッ
頭があった場所から、思いきり血が噴き出す。
「尋問を続ける。そなたの存在は魔女で間違いないか」
………………
「………………」
「首を落とせ」
また1人、人の首が切断される。
ドンッ
頭があった場所から、思いきり血が噴き出す。
「尋問を続ける。そなたの存在は魔女で間違いないか」
…………………
私は……
「…………………」
「首を落とせ」
また、1人、人の、女の子の首が切断される。
ドンッ
頭があった場所から、思いきり血が噴き出す。
赤かった。
何が起こってるのだろう。
「尋問を続ける。そなたの存在は魔女で間違いないか」
……………………
今の出来事は……
「……………………」
人の……首が……
「首を落とせ」
そして、また1人、クラスメイトの首が切断される。
私の、クラスメイトの、首が。
命が。
ドンッ
「………え…?」
頭があった場所から、思いきり血が噴き出す。
一つの命が、消えた瞬間である。
「尋問を続ける」
また1人死んだのだ。
私のクラスメイトが。
「人質が全員死亡したので、次はそなたの首を落とすことになる」
目の前で。
「そなたの存在は、魔女で間違いないか?」
殺してしまった。
「………………………」
気づいたら、5人も、私のせいで殺してしまった。
「……」
今更理解できた。
また私のせいで、クラスメイトを殺してしまったのだ。
「あ……あぁ………ああぁあああぁあぁ………!!」
「……答える気がないと見なす。殺せ。」
(自分のせいで5人も殺しちゃったんだよねー。だったら、自分が生きる権利なんて、もちろんないよねー)
「…………!」
なんで……。
次の瞬間。
身体中をあらゆる方向から、あらゆる刃物が貫いた。
剣、槍、その他にもあるだろう。
四肢は切断され、胴体は細切れにされ、首は跳ねられた。
人が人間の手によって肉塊に変えられた瞬間だ。
この世界に、人なんか1人もいなかったんだ。
ここにいるのは、なんなんだろう。
ここにいるのは……
だれなんだろう。
今回の話は修正を加えてないので文章がおかしいところがあるかもしれません。
違和感があったら感想欄辺りから指摘してくださるとうれしいです・・・
すいません、夏休み中に完結、無理そうです。
ほんとすいません。
勉強が邪魔なんですほんと。
受験なんてしたくないです・・・
現実逃避もそろそろ限界を迎えそうなのでペースは相変わらずになります。
ほんとすいません。
自分でも最後の最後はどうしようか大まかに決まっているものの、話のひとつひとつは即興で、計画無しに書いてるので長くなるか、短くなるかは検討がつきません。
確実に言えることは、失踪はしないことです。
終わりがほんとにいつになるかは分かりませんが・・・
いつかは完結だけはさせるので、今までと同様に、気まぐれで更新を見守ってくださるとありがたいです・・・
次話は出来上がっているので、8月中には上げれそうです。多分。
至らないところもありますが、これからも気長によろしくお願いします・・・




