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第1話 彼女と居酒屋
僕は彼女と一緒に暮らしてます。
お互いに働いていますので、食事は交代で作ろうと約束しています。ですが、彼女は今まで一度もご飯を作ってくれたことがありません。
前に、一度だけお願いしたことがありました。
「たまには、キミの手料理を食べてみたいな」
「豚に食わせるエサなんかねぇよ」
けんもほろろでした。
今日は、仕事が遅くなってしまったので、彼女と居酒屋に行くことにしました。
居酒屋って最初に出てくる食べ物があるじゃないですか、お通しって奴です。
その居酒屋のお通しは、キャベツでした。名前は「やみつきキャベツ」。塩とか、マヨネーズとかをつけて食べると病みつきになるくらい美味しいんですよね。
で、早速食べようかなって思っていたら、なんと、僕の取り皿に彼女がキャベツをよそってくれたんです。
珍しい事もあるもんだなぁと思いつつ、そのキャベツを食べたら……。
――ガリッ。
……固い。ええ、キャベツの芯でした。
見ると、彼女は手を叩いて笑っていました。絶対に確信犯です。
僕の彼女はドSです。