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魔術師の閉鎖試験  作者: あしべ
1章
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キャラエディ!



 ここは何だろうか。体がどこか軽い。目を覚ましたは良いものの、周りが完全な真っ暗闇だ。

 そこに俺は漂っているようである。

 暗所恐怖症の人、大丈夫か?

 つーか、そもそも人は完全な闇の中に長時間居ると精神に異常をきたすと聞いた事がある。でも、ゲームでそんないきなり鬼畜な――


『ようこそいらっしゃいました。星の者。』


 不穏な事を考えていた宗二の思考を遮るように頭に直接声が降り注いできた。

 すると、目の前の空間に、じんわりと光点が生まれる。

 それはしだいに大きくなり強く光り輝く。その光は直視するには強く、姿かたちが一応人の形をとっていると判断できるぐらいの存在。のはずなのだが、不思議と不快であるとか、目が痛くなることは無かった。

 また、声は中性的で、優しい穏やかな感があるのだが、性別を断定できるほどではない。全く持ってアンノウンな存在だ。

 あんた……は?

 口は動けど言葉にならなかった。

 よくよく考えて、宗二はどうやら強制イベントの扱いなのだろうと当たりがつく。テスターの話ではこのようなオープニングは無かったという話なのだが、製品版の実装と納得した。

 ――ゲーム基準で考えれば、よくある展開ともとれる。


『ここはあなたの精神。今は、あなたの精神体に私が干渉し、眠っていた意識を覚醒させた状態。光を得るための名をお考え下さい。』


 キャラクターエディットが始まった。


「えーあー。おお、喋れる。」

『エーアーでよろしいですか?』

「なんで?! 違う違う。いいえです。ノーサンキュー。」


 あ、危ない。何を基準に認識しているのかわからないな。カタカナにしたらちょっとかっこいいかもとか思ったけど、でも違う。ちなみに、ノーサンキューもちょっと違うな。


「ジソウ。カタカナ表記で、ジソウです。」


 この名前は宗二がゲームで使う名前だ。ソウジのジを上に持ってくるだけだが、妙に気に入っている。


『ジソウ様ですね。』

「はい。」


 ようやくまともに会話が成立した。なぜか達成感を感じていた宗二。

 すると、この、名前決定がトリガーだったのか、唐突に闇に光が灯る。

 あちらに1つ、こちらに一つと見ていたが、気がつくと、周囲は大小様々な星が煌く宇宙空間に変わっており、宗二はそこに立っていた。

 足元には、なにやら地球によく似た青と緑の広がる惑星があった。恐らく、ここが『ハイローズ』の舞台となる惑星『ブルーローズ』。意味は夢かなう・神の祝福だ。

 今では一般的だが、昔青い薔薇は不可能の代名詞だった。しかし、とある日本企業によって開発された結果、青い薔薇は一転して、不可能を可能にした、神の祝福を受けた花とされた。

 宗二は体がふわっと浮いたような感触を得る。なんだろうと思い、視線をやや下方に向けると下着姿の男が立っていた。


「げ、これ俺の体?」


 どうやら、幽体離脱とは違うみたいだ。なんとなしに、正面を見ようと思ったら体が勝手に回ったのだ。

 そういえば、自分の状態を見ようと思っても手や足が視界に出てこない。そして、なぜか目の前にある体が腕を上げ、足を上げてのセクシーポーズを取っている。

 見ていて悲しくなったので、まっすぐ立てーと念じてみたら起立の状態に戻った。

 ちょっと面白くなり、グルグル回して遊んでいたところ、耐えかねたのか光の人に声を掛けられた。


『ジソウ様!』

「は、はい。すみません!」

『こちらでのお姿をお教えください。』


 反射的に謝ってしまうのが日本人らしいところだ。気恥ずかしく思う宗二だったが、姿という話にあれかと思い当たり、自分の体を注視する。すると、なにやらモニターが前方で展開されそこにはずらりとよく見た事のある名称が並んでいる。


『今の状態がヒューマンと呼ばれる種族となっています。お早いですね。モニターに気がつかれましたか。そちらからジソウ様の種族をお選びください。詳細は選択すると表示されるのでそちらをご覧下さい。』


 『ハイローズ』の世界は選べる種族が人型に限るが多様にある。基本的なヒューマンから始まりエルフ・ドワーフ・ホビット・獣人・ドラゴニュートなどの亜人種はもちろんのこと、妖精やゴーレム、悪魔やスケルトン・スライム・といった魔物のような人外まで取り揃えてある。また、獣人を例に挙げるならば、猫や犬、猿、鳥といったように一つの種族に何種類か設定されているものがある。それを挙げると、総勢100種以上となる。また、パラメーターの上がり方の違いも各自に設定されているという手の込みようである。

 今回、既にやりたいことを考えてきている宗二は、なりたい種族を決めている。


「このままで!」

『ヒューマンでよろしいのですね?』

「はい!」


 そう、ヒューマンのままで、だ。つーか、日本人、俺! と言いたかった。が、痛い人だと思い、流石にやめておいた。弁明すると、夢の一種を叶えるためだ。ナルシストではない。そういったつもりではない、決して!

 さて、宗二の宣言を聞いたところで、ここで軽くヒューマンの種族について説明しよう。能力は器用さ・生命力が上がりやすく、物理防御が上がりにくい設定となっている。特殊な力は持ちえてないが、逆に言うと、下手な制限が無い種族ともいえる。生産に若干のボーナスが入るが、ドワーフ程ではない。そんな感じだ。


『分かりました。では細かい調整に入ります。』

「いえ、このままで!」

『……本当によろしいですか?』

「うぐ。は、はい。大丈夫です。」


 本当はちょっとばかり髪の毛を染めたり、鼻を高くしたり、鋭くて生意気(でもそこがカワイイといわれるのが嫌)な目を柔らかくしたいが、決めているのだ。

 現実リアル割れという言葉が浮かんだが、男なのでさして問題は無いだろう。何かあっても大体のことは対処できるはずと、過信しているわけではないが考える。


『かしこまりました。では、ジソウ様、あなたをこれからブルーローズへと召喚いたします。私はあなたが健やかである事を願います。そして、この世界に散らばる星のカケラを集め彼の者の解放を願います。それは、あなたをここへ導いた大いなる意思の願いともなるでしょう。しかし、一番はこの世界を大いにお楽しみください。ブルーローズはあなたを歓迎します。』


 光る存在が大きく輝く。その光は下方に見えていた自分の体を包み込んだ。その瞬間に、宗二は体へと引っ張られるのが分かった。


 ――うぅ、ちょっと気持ち悪い。


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