小人姫と乙女心
今回も短い…(;一_一)
学院長室を出て、今度はドミニクさんに抱っこされながら長い廊下を進む。
「ほんとちっせーな。すげー可愛いけど。ほら、頼れる寮長様にほっぺちゅーしてくれよ。」
この人は真顔で何を言ってるんだろう。ちょっと気持ち悪い。学院長室を一歩出た時点でこれって、この学校大丈夫かな?
「すみませんね、ミホ。この変態はあとできっちり躾直しておきますから。もともとこんなナリで可愛いもの好きを公言していたぐらいでしてね。だから最上級に可愛らしいミホを見て、頭のネジが飛んで行ってしまったんでしょう。お気の毒なことです。」
そして副寮長もなんかおかしいし。アレンやピートの方がまともに見えるなんて…。
なんとも残念な空気が漂いつつ、次に案内されたのは玄関ホール近くの会議室だった。
マルリさんが扉を開ければ、一斉に振り返る生徒たち。コワイ。
そんな中大きな声を出しながら、ピートが手を振って近付いてくる。
「ミホ!服買ってきたよ!あといろいろ!こっち来いよー!」
なんとこの短時間で、私の生活に必要なものを買いに行ってくれていたらしい。
うわー嬉しい!と思いつつ買ってきたものを広げているらしいテーブルへ近付くと…
な ん だ こ れ は
そこには大量の服と天蓋つきのベッド、クローゼットにソファセット、ダイニングテーブルや椅子まであり、目の前の光景に開いた口が塞がらない。
「ピ、ピート。これ、もしかして全部買ってきたの?」
若干震える声で尋ねれば、それはもうイイ笑顔が返ってきた。
「もっちろん!店で一番いいやつ選んできたから!」
ええーそんな「俺って気が利くでしょ?」みたいな顔されたら「返してきなさい!」なんて言えないじゃないか…。
そして落ち込む私を余所に、買ってきた服を品評し始める外野たち。「ミホにはブルーが似合うだろう。」「いやでも、ここは王道のピンクも捨てがたい…。」などなど、正直年頃の男どもが何やっちゃってんの状態だ。しかも何なの、この量。まさかとは思うけど、店にあった服全種類とか言うんじゃ…。
恐る恐る聞いてみれば、あっさり肯定されてしまった。なんてこった。その金はどこから来ているんだ。私は一文なしだから払えないよ。
「大丈夫だ。可愛い可愛いミホにかかる費用は、全て学院の経費から出すから。ミホは何も心配しなくていいぞ!」
無駄に明るい笑顔と共にとんでもない発言をしてくれたのはドミニクさん。
ひぇー!学院長先生、申し訳ございません!
「おいピート!これはまだ早いだろ!返品してこい!」
そこへ突然アレイの怒鳴り声が。びっくりしながら振り返ると、アレイの手には下着のセットが…。下着って当然あれですよ、パンツとブラですよ。といっても私サイズなのですが。
動揺を隠しつつ、先程のアレイの発言を思い返す。
こいつ…私には必要ないとか言ってなかったか?それはあれか?まな板の私にはブラなんていらねーだろってことかい?ふふふ。
しかも皆の前で広げるだなんて、セクハラもいいところじゃない?それ、今日から私が使うんだってこと、忘れてるのかな?
この怒りをアレイへ躊躇いなくぶつけてやろうとしたその時、アレイが吹っ飛んだ。文字通り。
ぽかーんとするしかなかったよ。
「すまないな。お前は女の子なのに。」
そう言って拳を見せたのはバスクスさんだった。やっぱりこの人は最高だと思います。
「いえ、今のでだいぶスッキリしました。…アレイ!このセクハラ男!乙女の下着を触るなんてサイテーだ!反省しなさい!」
「んだとー!ガキが一丁前に色気づいてんじゃねーよ!どうせ必要ねーじゃん。」
むっかあああああ!もう頭来た!
「例え必要性を感じなくても、お年頃の乙女には必須アイテムなんだよ!いいからさっさとしまってよ!」
「乙女だあ?どこにいるんだそんなもん。俺の前に連れて来い!」
「その目腐ってんの?今現在、あんたの目の前にいるでしょーが!可憐な十五歳の乙女がいーまーす!」
「…………………十五歳?」
小さく呟いたアレイの声がはっきり聞こえるほど静まった部屋。ちょっと、なんで皆「心の底から驚きました」みたいな顔してるの?!
「ミホ、本当に十五歳?」
「俺、十歳くらいかと思ってた…。」
「俺も!だってこんなにちっちゃいし。」
「異世界とは歳のとり方が違うんじゃないか?」
どいつもこいつも…!!
そのあとしばらく私の年齢に納得いかないのか、議論が交わされていた。私の機嫌が最高に低下していることにマルリさんが気が付くまで。
とりあえずアレイはいい加減、その下着から手を離すべきだと思う。