小人姫と自己紹介
まずは『幸せの小人姫』について説明を。
「さて、お前にはいろいろと聞きたいことがある。」
漸く乾いた服を着たので落ち着けるかと思いきや、目の前の男がそれを許してくれないようだ。ベッドの上に正座する私と、仁王立ちの男。上から目線かよ、むかつくな。
「名前は?」
「…その前にご自分から自己紹介したらどうですか。」
「!!…このっ!」
うわ、すっごい短気だよこの人。一瞬で拳が飛んできたんですけど!隣にいた人が止めてくれなきゃ今頃…巨人コワイ。風圧で後ろに倒れるってどんなだよ。今ワンピースだけだからノー…ごほん、つまり危険なんだぞ。
「まあまあ、落ち着けアレイ。彼女の言うことも最もだよ。…ごめんねお嬢さん。僕はマルリ・ディエスター。この単細胞はアレイ・マッカーソンです。」
「俺はバスクス・トレイル。」
「俺ピート・ブライト!」
ふむふむ。短気なアレイと優しげなマルリさん、落ち着いた感じのバスクスさんに、人形趣味疑惑のピートさんね。それにしても赤目やら金目だし、髪も青や赤や金に…カラフルですね。
「はじめまして。笠原美保です。ファミリーネームがカサハラなので、どうぞミホと呼んでください。」
第一印象は今更変えられないけど、たぶん友好的な人たちだろうと判断した。まずは自分の置かれた状況を把握しなくちゃ。
「それで、ミホはどうやってここに来たのかな?」
よくぞ聞いてくれましたマルリさん!
「実は私にもよくわからなくて。学校のプールにいたはずなんです。そうしたら水中から何かが光っているのに気付いて、確かめようと近付いたらいきなり水に襲われて飲みこまれました。あとは意識を取り戻したらなぜかここにいた、としか説明できないんですが…。」
ていうか待って。「学校」とか「プール」とか言っちゃったけど、意味通じる?って思ってたけど大丈夫そうだった。なんだかピートの顔が滅茶苦茶輝いたんだけど!
「やっぱり小人姫なんだ!すっげー!!俺本物見ちゃったよ!」
そして万歳しながらぐるぐる回り始めるもんだから、周りも私も唖然としちゃった。どうしよう、今の私の説明のどこに、そんなに喜ぶ部分があった?
「うるせーよっ!」
そうしてピートを殴って黙らせたのは、やっぱりというかアレイだった。部屋の隅に沈んだピートを見ながら、残りの二人は苦笑している。きっといつもこんな感じなんだろうな。
それよりさっきから気になっているんだけど…
「その『小人姫』って何ですか?」
そうぽつりと呟いた私の一言に、漸く空気が戻ったようで、今度はバスクスさんが話し始めた。
「まず初めに、ここはグレインという国だ。…そして恐らく君のいた場所とは全く異なる世界にある。」
やっぱりそうか。だよね、こんな明らかに日本人じゃない容貌なのに言葉通じてるし、なにしろ体の大きさが全然違うもん。薄々感じてたけどさ。
「この国は約三千年前に建国され、徐々に国土を拡大して今ではこの世界一の大国となっている。そして、国の発展に貢献したとされているのが『幸せの小人姫』と呼ばれる存在なんだ。小人姫は私たちの十分の一程の体の黒髪の少女だと伝えられている。大凡百年から二百年に一度この国に現れ、グレインに繁栄と栄光をもたらすという。そしてその小人姫は異世界から光り輝く水流と共にやって来るそうだ。これはこれまでの小人姫の記録が残っており、誰もが一度は読むおとぎ話にもなっているのでこちらでは有名な話だ。」
そこまで言うと、バスクスさんが「ここまでは分かったか?」という視線を向けてくる。えーっと、つまり…私みたいな存在は今までにも何度か存在していて、しかもこの国にとってラッキーチャーム的な人間ってこと?
私がここに来たのは何か意味があるの?戦争を勝利に導けとか、後継者争いを治めろとか、異世界の技術を伝えろみたいな、そういういかにもファンタジーなやつ。
「私は何をすればいいんですか?」
「…何もしなくていいんだ。君が幸せであれば国も安泰。ただし、君が苦痛や悲しみ怒りを感じれば、即ちそれは国の危機。だから小人姫は国に保護されるのが通例なんだ。」
まさかの役立たず。ただ笑って突っ立ってろってか。つーか苦痛はともかく、喜怒哀楽は人間の基本じゃないの?
そんな私の疑問に答えるかのようにマルリさんが続ける。
「もちろんちょっとイライラするとかなら大丈夫だよ。腹の底からの感情でなければね。…というわけで、我々はミホの存在を国主に伝える義務があるんだ。」
「ええーっ。俺まだ小人姫と一緒にいたい!」
「だからピートはうるせーんだよ!仕方ねーだろ、隠したってどうせすぐ大騒ぎになるに決まってんだ。だったらさっさと国の保護下に置いて、こいつが余計なことに巻き込まれねーようにした方がいいだろ。」
「アレイさんがまともなこと言うなんて…い、痛い痛い!髪の毛引っ張るとかあんたいくつですか?!」
「うっせーチビ!少し黙ってろ!」
「皆そろそろ静かにしようか。」
マルリさんが言った途端、静まる室内。やべー、今逆らっちゃいけないオーラ見えた。
次回四人の詳細載せます。




