第6.5話 アーク帝国編予告
私は悪路に揺れる兵員輸送装甲車の車内で同僚たちと会話をしていた。
「それで、今度の任務は炎天山近郊にでた小型翼竜の討伐だったな。」
「そうらしいわね。火属性のワイバーン級が一匹、楽勝よ。」
私は同僚の問いに元気良く返す。私たち、アーク帝国騎士団第一大隊は今回、帝国領に跨る炎天山から沸いた小型の飛竜の討伐を命じられていた。飛竜種の討伐は、傭兵ギルドなどでも余されているため、騎士団に依頼が回ってくることが多いのだ。
「…いつも完璧に行くとは限らないよ、ヘンリー。」
「分かってるわよクラウス。士気を高めただけ。」
「…油断は禁物。」
会話に混ざってきたのは、私のバディであるクラウス・ホロディンだ。彼はエルフで、普段はその特徴的な耳をフードで覆っているため、人間だと思われがちだ。顔もエルフ特有の美形で、金髪碧眼の持ち主だ。透き通るような美しさを放っている。
「おいおい、夫婦漫才は他所でやってくれよリア充どもめ。」
「なっ、夫婦言うな!」
「…心外だ。」
「ちょっと、それどういう意味!?」
混ぜっ返す隊長に反論するが、クラウスの呟いた一言もガツンときた。そんなこんなで騒いでいるとスピーカーから運転席の声が届いた。
「隊長、前方で火の手が上がっています!例のワイバーンです!」
「急いで接近しろ。皆聞いたな?人が襲われているかもしれない。民間人がいたら、その救出が最優先だ!いいなっ」
「了解!!」
同志達は雰囲気を切り替える。戦闘が始まろうとしていた。
このときだ。私、ヘンリー・アイゼンブルクがあの男と出会ったのは。
作者です。現在11話まで書き溜めてあるので、順次更新していきます。