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第3.5話 Side:エイミア


 今日も私はいつも通りに起床し、身支度を整え、軽い朝食を食べて畑へ向かった。


「いってきます!」


「おぉ、気いつけての。」


家族に挨拶し、畑に向けて歩き出す。天気は晴れ。日差しも良く、いい日だった。私は晴れている日が好きだ。畑までのんびりと歩けるし、日光がとても気持ちいい。雨の日は煩わしい外套を着なければならないし、空気も良くない。だから私は晴れの日は気分がいい。


「おはようエミちゃん。今日もお手伝いかい?」


「おはようございます。えぇ、そうです。」


「偉いねぇ。うちの子にも見習ってほしいよ。」


近所のおばさんに声をかけられた。この村の住人はいい人ばかりだ。獣人の私にも優しくしてくれる。町のほうへ行くと、あからさまではないが、嫌な目で見られることがある。


「それじゃ、私行きます。」


「がんばってね、エミちゃん。」


再び歩きだす。少しすると、自分の家の畑が見えてきた。既に父が作業を始めている。


「お父さーん!」


遠巻きに声をかけてみる。すると父は手を挙げて返した。私は小走りになり、畑で午前中を過ごした。


 午後にはすっかり作業も終わり、私は昼食を取るため、持ってきたバスケットを抱え、お気に入りの場所へと向かっていた。父は他にも仕事があるらしく、農作業を終えると、家へと帰っていった。私はお気に入りの木陰でお弁当にしようと思い、軽い足取りで歩いていた。


「うん?何だろう…」


すると、地面に何かが落ちているのが見えた。まだ遠くてよく見えない。


「…血の匂い…!?」


人狼族の私は人間より数倍鼻が利く。微かな血の匂いが、物ではなく、人が倒れているのだと告げた。


(大変、怪我してる!助けないと…)


私は走り出した。すぐにその人のそばに駆け寄る。意識は無いようだ。


(あ……綺麗…)


私は思わずドキッとしてしまう。倒れていたのは青年…20歳位だろうか?黒髪で、キリッとした目元に長いまつげ。スラリとしつつも鍛えられ、整った体躯。そんな彼を見て、カッコいいとか、逞しいとかの男性へ向けるような賞賛ではなく、ただただ綺麗だなという印象を受けた。


「出血してる…」


私は見とれていたことに気づき、頭を少し振る。手当てのために傷口を水筒の水で洗い流した。


「これは銃創ね…」


私は、その傷が銃で撃たれた物だと思った。


(こういう時って確か…!)


処置の仕方を思い出し、私は赤面する。


(で、でもやらなきゃ。うぅ…恥ずかしいけど、仕方ないわ…)


私は思い切って決意する。傷横たわる青年の傷口にそっと口付け、血を吸い出す。鉛の毒を取り除くためだ。少しだけ吸って私はその血を吐き出す。それを二回ほど繰り返してからハンカチを裂いて傷を覆った。


(あ、血が付いてる…洗わなきゃ。)


自分の口元に血が付着していることに気づいた私は、とりあえず青年を引きずって、お気に入りの木陰に寄りかからせた。そして、血を洗うために、小川へ向かった。

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