第2話 出会いと異世界
第2話 出会いと異世界
「うぅ…んん……?」
昴は、意識を取り戻した。ぼんやりと視界が開け、見たことの無い風景が見えた。
(何だ…俺はたしか…民兵どもとやりあって…撃たれて…)
「っ!!??」
そう、確かに撃たれて、倒れた。昴は飛び起きる。意識がはっきりと覚醒し、周りの景色もしっかり見えた。
(田園…ヨーロッパの田舎辺りか?いや、俺はアフガンにいたはず…)
ふと気になり、撃たれた右腕を確認する。包帯…ではないが布が巻かれていた。
「気が付いたんですね。」
突然背後から声を掛けられる。昴はとっさに、組手の構えで振り向く。そこには、見た感じ17、8歳位の少女が木製の小さな桶を抱えて立っていた。
「お前、いつからそこに?」
昴は少女に話しかける。
「え?あぁ、私は人狼族だから、気配があまりしないんです。」
そんなことを言う少女をよく見ると、頭に犬耳が生えていた。尻尾もある。
「……犬耳?」
「狼です!!」
素朴な疑問を口にすると少女は顔を赤くして怒鳴ってきた。
「そ、それって…生えてるの?」
「はい。自前ですよ?」
少女も疑問系で返してきた。そんなことなんで聞く?といった感じだ。見れば、耳も尻尾もピクピク動いている。小動物系の可愛さというのだろうか。見ていると心が落ち着く…ような気がした。
「あなたは道の真ん中で倒れていたんですよ?しかも血を流して。」
少女が話を変える。そうだ、重要なのはむしろこっちだ。昴は耳を触ってみたいというささやかな願望を殺して、話を聞く。
「助けてくれたのか?俺は武器を持っていたのに…」
一番の疑問を聞いてみる。普通、銃を持った人間が血を流して倒れていたら、逃げるだろう。
「えっと…あなた銃を持ってはいたけど、悪そうには
見えないし、盗賊の格好とも違ってるし…」
「盗賊?この辺は盗賊なんてのが出るのか?」
「いえ、この辺りは出没しません。」
少女は質問に答えていく。この少女も悪人には見えない。昴は話を信じることにした。
「それで、ここはどこなんだ?俺はアフガニスタンで…」
「ここはエノ村です。ラキシア大陸の北部の国マニエール共和国の端っこの方の…」
「ん?すまんが、もう一回いいか?聞き違えたかもしれん。」
昴は聞きなれない言葉の羅列を、自分の耳がおかしかったのだと判断し、聞きなおした。
「ラキシア大陸北部、マニエール共和国の端っこのエノ村ってとこです。ご存知…ありませんよね。田舎ですし。」
「………」
昴は聞いた情報を整理する。
(オーケーオーケー。落ち着け俺。まず、ラキシア大陸なんて、地球には存在しない。マニエール共和国なんてのも聞いたことない。とすると)
「ええっと、今何年何月の何日?」
「統括暦1803年の3月12日です。」
昴はこれを聞いて確信した。
(ここは俺のいた世界じゃない!?)
普通の人間ならこんな思考には至らないであろう。だが、昴の日本人的感覚、所謂オタク的な部分が理解してしまったのだ。
「じゃあ、ここは異世界?」
「・・・・・・」
するとなぜか犬耳(本人曰く狼)少女がジト目でこちらを見てきた。
「い、いや、なんでもない。そうだ、君の名前は?ま
だ聞いてなかった。俺はスバル、神宮寺昴だ。」
「スバルさんですね?私はエイミア・マギット。皆にはエミって呼ばれてるわ。」
「スバルでいいよ。それでエミ、とりあえずこの村の責任者…村長さんっているかな?」
「はい。いますよ。」
「じゃあ、案内して貰えるかな?」
「いいですよ。こっちです。」
昴はゆっくりと立ち上がり、エミに付いていった。
こうして物語の一ページ目は終わり、昴は何故か転移?してしまった世界で生きることとなった。