第1話 世界の最後と新たな世界
注意!このお話は人が死ぬ場面が度々登場します。苦手な方は閲覧をしないことをおすすめします。
その日は朝から暑かった。日差しは強く、気温も高い。
更には、空気も乾燥しており、外で仕事をしなければならない彼らにとっては最悪の朝だった。
「あ~あ。今日もあっちぃな…」
見た目20代前半位の男、神宮寺昴は今日の天候に悪態をつく。
「ぼやくなスバル。いつも通りだろ?」
そんな昴を彼の上司であ大男が嗜める。
「ニホンの夏だって暑いじゃねぇーか。」
「馬鹿、湿度が違えだろ。」
他の面々も口々に話始めた。いつもの風景である。
昴が所属する会社は、簡単に言うと傭兵派遣会社だ。
Private・Militaly・Company…通称PMCと呼ばれる民間軍事会社の一つである。
民営化された軍隊、というのが世間の彼らに対する意見である。
元々特殊部隊所属だった退役軍人が一番初めに設立し、その会社が成長していくと、新しい会社が次々参入していった。
彼の所属する組織もそんな中の一つだった。
今回、昴達に与えられた仕事はある要人の邸宅の警護だ。
一週間の期限付きで、それも今日で終わりだ。昴たちは、最後の日ということもあり、ゆったりとしつつも周辺に目を配り、危険がないか警戒していた。
そして、間もなく昼という時間帯、昴は、自分の持ち時間が終わったため、午後の担当社員と交代を行うところだった。
「あぁぁ暑い!飲み物ない?」
「お疲れさん。ほい、冷えてるぜ。」
「サンキュー!……んぐ…くっはぁ、生き返るな!」
昴は投げられたスポーツドリンクの缶を開け、一気に
半分ほどを飲み干す。
「さぁて、俺たちも仕事にいくかねぇ。」
昴に飲み物を渡したオペレーターが立ち上がり、傍らに置いてあった自動小銃の肩紐を担ぐ。
「何事もなく終わりそうだな。次はもっとスリリングなのがいいぜ。」
「馬鹿言え。平和が一番だろ。」
「軍人に混ざって戦争してるサラリーマンが言う台詞じゃねぇな。」
そんな雑談をして、午後担当の数名が邸宅の一角に貸し与えられた部屋から出て行く。
そして次の瞬間…
「RPG!!」
そう声が聞こえるとほぼ同時、先ほど仲間が向かった方から爆発音が響いた。
「くそっ、民兵か!?」
「敵の数は!!」
「分からん、山ほどいるぞ!!」
すぐに怒声が飛び交い、無線で連絡をとる。
おそらく要人を狙ったテロだろう。昴も自分の銃を手に取り、テーブルに置いてあった手榴弾を2つポーチに入れ、外に出た。
既に銃撃戦は始まっており、爆発し炎上するPMCの車両が目に入る。
オペレーターたちは、残っている黒い4WDトラックの陰に隠れ、応戦している。
「敵は!?」
「やつら全部だ!約90人!!」
「嘘だろ!?本社は?増援は!?」
「今からじゃ20分は掛かる!」
「くそったれ!どうしろってんだ!」
完全武装した男たちは口々に悪態をつく。
「ぐぁぁ!」
隣で銃撃していた味方が被弾し、倒れる。
昴はすぐさま見方を撃った敵を射殺し、応急処置をする。
「しっかりしろ!」
傷口上部を止血し、ガーゼで押さえ、包帯を乱雑に巻く。
「スバルっ、ガァッ!」
スバルの名を呼んだオペレーターが撃たれ、それをカバーしようとした味方が頭部を撃たれ、即死する。
(くそっ、くそっ、くそっ!)
必死に撃ち返すが、敵の数が多すぎた。
空になった弾倉を交換し、銃身が焼けるのも構わず撃ち続ける。
気が付けば味方は昴しかいなくなっていた。
「ちくしょおぉ!!」
こちらをしつこく撃ってくる民兵を排除しようと物陰から身を乗り出す。
そして、その瞬間を撃たれ、昴は利き腕を負傷した。
(くそ…ここで終わり…か……人生なんてそん、なもの…)
出血が酷くなり、意識が朦朧とする。
民兵の罵声が聞こえ、近づいてくる。そして、ついに昴の意識はそこで途切れた。