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気がつくと俺は自分の部屋にいた。
しかし、初めは、ここが自分の部屋だとわからなかった。
俺の部屋にあった物というものが、全くなかったからだ。
「明夫、明夫ちゃん、帰ってきたのね。」
かあちゃんが、俺の部屋に入ってくるなり、目から涙をこぼして抱きついてきた。
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俺はこっちの世界(人間の世界)で、一ヶ月の間、行方不明になってた。
同時に行方不明になってた他の子ども(裕太たち)も、家に戻った。
新聞やテレビは
『現代の神隠し、謎の解決』
なんて、言ってる。
俺たちは誰もダスト・シティのことは話さない。
話しても誰も信じそうにないし、変人扱いされそうだし。
俺が家に戻ってきた時は、気持ち悪いくらい優しかったかあちゃんは、
最近、教育ママゴンに変身している。
家庭教師を頼み、そいつが来る日には、強制的に掃除させられる。
俺は勉強嫌い。
今に見てろよ。
俺の部屋の物は、すっかり新しくなった。
俺は道端に粗大ゴミなんかが捨てられていると、つい足を止めてしまう。
ゴミたちが集まって、ダスト・シティ再建の相談をしているように思うからだ。
それにしても、暑くなった。もうすぐ夏休み。
とても楽しみ。裕太と遊ぶ計画があるもの。
もちろん、かあちゃんには内緒のこと・・・。