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俺は裕太たちのいる灰色のドームへ急いだ。
灰色のドームにも煙があがっている。
(裕太。)
俺は煙を突っ切って、ドームの中へ入った。
ドーム中も煙で見えにくい。
口を押さえ煙をなるたけ吸わないようにしながら、牢屋のある方向へと足を向けた。
「みんな無事か!!」
「だいじょうぶだ。」
すぐに裕太の返事が返ってきた。
俺は声のする方に進んだ。
煙の向こう、ぼんやりと鉄格子近くに固まる裕太たちの姿が見えた。
ほっとするのもつかの間。
耳が破れそうなくらいの大きな爆音がドーム内に響く。
俺はあわてた。
爆音は裕太たちのいる牢屋からだ。
白煙が一気に辺りを覆う。
「裕太!!」
ごほごほと咳き込む声がした。
「・・・心配ない。」
裕太の声だ。俺は少しほっとした。
裕太は言葉を続けている。
「この町が壊れかかっているみたい。
今ので壁が崩れた。そこから外に出る。明夫もここから逃げろ!」
「了解、絶対、家に帰ろうな!」
「おう、あったりまえじゃん!!」
このドームにも火が移ってきた。
鉄格子の向こうが静かになった。
外に向かったのだろう。
俺もぐずぐずしてられない。逃げなきゃ。
「明夫くん、ダストシティは、終わりですね。」
出口に向かおうとした瞬間、声がした。
もうもうと立ち込める煙の向こうから、声の主はゆっくり姿を現した。
新聞紙。俺をこの町に招いた新聞紙だ。
新聞紙がスローモーションのかかったビデオみたいに、ゆっくり近づいてくる。
俺は金縛りにあったみたいにその場から動けない。
足がかくかく小刻みに震える。
「わたしは、君を責めようというのではありません。」
新聞紙は言った。
「わたしたちは、君たち人間に復讐しようとしたのは事実だ。
人間はわたしたちを作っては、飽きるとすぐに忘れたり、捨てたりしてしまう。
わたしたちは、その度に傷ついた。
わたしたちの、この思い、君に理解できるかい?」
新聞紙が焦げ始めた。
「しかし、人間がいなければ、わたしたちは生まれなかった。
わたしたちはほんとうは、君たち人間を愛しているんだ。
わたしたちの気持ちを忘れないで・・・。」
新聞紙がみるみるうちに燃え上がった。
俺の体も熱い。
ほほも体もかっかとしている。
ドグォーンと低い爆発音が続けて起こる。
天井からばらばらと壁が屑になって降ってくる。




