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俺は外に出た。
俺のいた部屋は白い小さなドームの中にあった。
それと同じようなドームが、点々と並んでいる。
奥の方には森が見える。
俺はドームの間にある道を歩いた。とても静かだ。
「明夫君、いい所でしょう」
振り返ると、ポテトの袋がいた。
「やあ、明夫君、なに不思議そうな顔をしているのです?
ぼくですよ、ぼく。」
「・・・あっ、俺の部屋のポテト。」
ポテトの袋はうなずいた。
「ここは、まさに理想郷、ユートピアですよ。
僕たちの生活に必要なものは、すべて自給自足で賄われ、むだなものは何もないんだから。」
ポテトの袋は、一番大きなドームを指さした。
「あれは、シティの機能を支えている発電所です。」
ポテトの袋は、言葉をかみ締めるように言った。
「僕たちは年をとるともろくなる。
そうした物たちが、あの発電所に集まって、最期の仕事をするんです。
自分の体を捧げて、シティのエネルギーになるのです。」
「それって、死ぬってこと?」
「人間の言葉では、そうなるかも。
でも違います。
最期まで、物として役に立つのですから、名誉なことなのですよ。」
ポテトの袋は、胸を張って言った。ほんとうに最期の仕事、怖くないんだろうか。
俺たちは、森に向かって歩いた。
ポテトの話によると、森の前にある広場で何かあるみたい。
ポテトの袋は、口笛を吹きながら歩いている。
「ほら、見えてきましたよ。」
広場と行ってもそんなに大きくない。
中央に小さな噴水があり、まわりを派手な色したお祭りの露店が並んでいる。
露店の定員も客も、マンガや、ごみ袋、ミニカーとかの物たち。がやがやと、にぎやかだ。
「皆さん、お待ちどうさま、
ダスト・シティ建国の父であり、特別ゲストの明夫君です!」
ポテトの袋が大声で言った。
拍手とともに、歓声が挙がる。
「さあ、この露店はすべて、明夫君のために用意しました。
存分に楽しんでください。もちろんお金はいりません。」
ポテトの袋は、どうぞと俺をうながす。
俺は頭を掻いた。
あまりにもすごい歓迎ぶりだ。
的あて、スーパーボール、わなげ、たこ焼や、焼き鳥や、どの店で遊べばいいのか目移りしてしまう。
ポテトの袋は戸惑う俺に笑いかけながら、手を引いて、近いところにあった店にはいった。
そこはミルクせんべいや。
店主は、へこんだサッカーボール。
代の上でさびた小さなコインがダンスしている。
「いらしゃい。」と言うと、
水槽の中に大ジャンプして飛び込み、
シンクロナイトスイミングしながら、そこに置かれた欠けたガラスコップに入った。
「大当たり!!」
サッカーボールは十五枚のミルクせんべいを作ってぼくに渡した。
どの店もこの調子。くじにはずれはない。
物たちは陽気で親切。
俺は、調子に乗って遊んでたけど、だんだんくたびれてきた。
歓迎ばかり、当たりばかりは、いいけれど、なんかむずがゆい。
ポテトの袋が俺の疲れを察したのか、俺が元、休んでいたドームへと連れていった。
「休んでください。
歓迎会はずっとありますから、慌てて遊ばなくとも大丈夫です。」
おれはドームの中にあるベッドに横になると、すぐにまぶたが重くなった。
目をつむると、すぐに眠ってしまった。
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どのくらい時間がたったのだろう。
どこからか話し声がする。
「・・・あの人間はどう始末するの。」
「決まっているじゃないですか。他の人間のように・・・。」
「そうね・・・。」
声をひそめた笑い声がする。俺の額に油汗がにじみ出した。