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ダスト・シティ  作者: 大林秋斗
3/8

俺は外に出た。



俺のいた部屋は白い小さなドームの中にあった。


それと同じようなドームが、点々と並んでいる。


奥の方には森が見える。


俺はドームの間にある道を歩いた。とても静かだ。



「明夫君、いい所でしょう」



振り返ると、ポテトの袋がいた。



「やあ、明夫君、なに不思議そうな顔をしているのです?


ぼくですよ、ぼく。」


「・・・あっ、俺の部屋のポテト。」



ポテトの袋はうなずいた。



「ここは、まさに理想郷、ユートピアですよ。


僕たちの生活に必要なものは、すべて自給自足で賄われ、むだなものは何もないんだから。」



ポテトの袋は、一番大きなドームを指さした。



「あれは、シティの機能を支えている発電所です。」



ポテトの袋は、言葉をかみ締めるように言った。



「僕たちは年をとるともろくなる。


そうした物たちが、あの発電所に集まって、最期の仕事をするんです。


自分の体を捧げて、シティのエネルギーになるのです。」


「それって、死ぬってこと?」


「人間の言葉では、そうなるかも。


でも違います。


最期まで、物として役に立つのですから、名誉なことなのですよ。」



ポテトの袋は、胸を張って言った。ほんとうに最期の仕事、怖くないんだろうか。



俺たちは、森に向かって歩いた。


ポテトの話によると、森の前にある広場で何かあるみたい。


ポテトの袋は、口笛を吹きながら歩いている。



「ほら、見えてきましたよ。」



広場と行ってもそんなに大きくない。


中央に小さな噴水があり、まわりを派手な色したお祭りの露店が並んでいる。


露店の定員も客も、マンガや、ごみ袋、ミニカーとかの物たち。がやがやと、にぎやかだ。



「皆さん、お待ちどうさま、


ダスト・シティ建国の父であり、特別ゲストの明夫君です!」



ポテトの袋が大声で言った。


拍手とともに、歓声が挙がる。



「さあ、この露店はすべて、明夫君のために用意しました。


存分に楽しんでください。もちろんお金はいりません。」



ポテトの袋は、どうぞと俺をうながす。


俺は頭を掻いた。


あまりにもすごい歓迎ぶりだ。


的あて、スーパーボール、わなげ、たこ焼や、焼き鳥や、どの店で遊べばいいのか目移りしてしまう。


ポテトの袋は戸惑う俺に笑いかけながら、手を引いて、近いところにあった店にはいった。


そこはミルクせんべいや。


店主は、へこんだサッカーボール。


代の上でさびた小さなコインがダンスしている。



「いらしゃい。」と言うと、



水槽の中に大ジャンプして飛び込み、


シンクロナイトスイミングしながら、そこに置かれた欠けたガラスコップに入った。



「大当たり!!」



サッカーボールは十五枚のミルクせんべいを作ってぼくに渡した。


どの店もこの調子。くじにはずれはない。


物たちは陽気で親切。



俺は、調子に乗って遊んでたけど、だんだんくたびれてきた。


歓迎ばかり、当たりばかりは、いいけれど、なんかむずがゆい。


ポテトの袋が俺の疲れを察したのか、俺が元、休んでいたドームへと連れていった。



「休んでください。


歓迎会はずっとありますから、慌てて遊ばなくとも大丈夫です。」



おれはドームの中にあるベッドに横になると、すぐにまぶたが重くなった。


目をつむると、すぐに眠ってしまった。



**********************************************************************



どのくらい時間がたったのだろう。


どこからか話し声がする。



「・・・あの人間はどう始末するの。」


「決まっているじゃないですか。他の人間のように・・・。」


「そうね・・・。」


声をひそめた笑い声がする。俺の額に油汗がにじみ出した。


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