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「明夫、明夫、起きなさい。いったい、この部屋は何?」
何だよ、うっとうしい。
休みの日の朝くらい、ゆっくり寝かしてくれよ。俺は疲れているんだ。
「・・・いったい何のようだよ。」
「やっと、起きたのね。
いいこと、今日こそ、この部屋を掃除しなさい。
この四月で、六年でしょう、自分で片付けるのよ。」
また、かあちゃんのグチが始まった。
俺は、むずがゆい目をこすりながらあくびをした。
かあちゃんには散らかっているように思われても、俺にとっては居心地いいし第一便利。
敷きっぱなしの布団のまわりに、マンガとお菓子の袋。
机の上には、教科書とノートが、ごちゃまぜに置いてある。
部屋全体、足の踏み場はないかもしれないけど、寝転がりながら欲しいものが取れる。
でもたまに、学校に必要なプリントをなくして、大騒ぎする時もあるけど。
「明夫、ちゃんと聞いてるの?」
かあちゃんが俺の顔を覗き込んだ。
「はい、はい。」
俺は適当に返事した。かあちゃんは、首をふりふり部屋を出た。
俺は大きく伸びをした。
「もう少し寝転んでいようと・・・」
手探りで、テレビのリモコンを掴んで、電源のボタンを押す。
ニュースが映った。
「〇〇市〇〇区で、また小学生が行方不明になっています・・・。」
俺はチャンネルをいろいろ変えてみた。
つまらない。あーあ、何かおもしろいことないかなあ。
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「明夫君、明夫君・・・。」
どのくらい時間がたったんだろう。
俺の名前を誰かが呼んだ。
「何?」
俺は声のする方へ顔を向けた。
お菓子の袋やマンガが散らばっているだけで、誰もいない。
「私です、明夫君。」
俺の布団と畳の隙間から、黄ばんだ新聞紙が起き上がった。
新聞紙に続いて、ポテトのお菓子の袋やマンガなど、部屋中の物が一斉に起き上がった。
「うわあ!!」
俺は思わず大声を出した。
「これは失礼、驚かせてしまったね。」
新聞紙には、手と足があった。俺の側に近寄ると、腕組みをしながら、ひょいと座った。
俺は慌てて立ち上がった。その拍子に作りかけのプラモデルを踏んでしまった。
「痛い、気をつけたまえ!」
プラモが叫ぶ。
「さあ、君をわれわれの町へご招待いたします。」
新聞紙が恭しく言う。俺は訳が分からないまま、意識が遠のくのを感じていた