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VRボロ屋敷外伝第2勇者:魔王倒したけど別世界へ~クズらしく生きる?元の世界に帰れるので悟りを開きます~  作者: 無頼惡兎


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第1話 小鬼とクズ勇者のリアル鬼ごっこ

遂に本日外伝1話が登場!サクッと終わってしまう文量ではありますが……

楽しんでお読みになってください!!!

数多のプレイヤーたちの絶交と、運営の突貫工事によって書き換えられたエフェクトの光が最前線エリアを白白と染め上げていた。不祥事を隠蔽するために急造された禍々しき『魔王第二形態』の巨躯が、空間そのものを噛み砕くような暗黒の咆哮を轟かせる。無尽蔵に湧き出す配下のモンスターたちが前衛のプレイヤーを蹂躙する中、エンドレスな泥沼の死闘を繰り広げていた最前線のNPC勇者パーティーの面々は、すでに限界を迎えていた。

(なんで俺が、ただ働きしなきゃいけないんだよォァァ!!!)

 完璧な表向きの顔とは裏腹に、その脳内は完全に泥棒じみた不満と愚痴で埋め尽くされている。何が何でもこの割に合わない戦場を終わらせて、どこか安全な別の場所へ逃亡したい。その一心だけで、クズとしての本能が限界突破した。

 第二形態の魔王が放った最後の攻撃は、絶対消滅ビームが陣形を貫こうとした、まさにその刹那。しかし、それは勇者めがけて飛んでいった。自らその光線の軌道上へと立ち尽くす結果となり、表面上は、世界を救うために自ら命を投げ出した自己犠牲そのものである。光の渦に呑み込まれながら、クズ勇者は脳内で冷や汗混じりの叫びを上げていた。

(か……身体が動けないだとっ!もーどーにでもなれだァァァ!!!)

 凄まじい爆発。

 固有識別データを弾かれ、元の最前線エリアから完全にシャットアウトされたその魂は、次元の狭間をマッハで突き抜けていく。

 ――ガサッ、と硬い草の感触が頬を叩いた。

 クズ勇者は激しく咳き込みながら、勢いよく上半身を起こした。どこまでも青く広がっていた空と、頬を撫でる穏やかな風。見渡す限りの草むらと近くには家が見えた。

「――ぐっ、おのれ魔王……相打ちだと……ッ!?いや生きている......?お、家があるじゃん! ラッキー、とりあえずあの中に逃げ込もう!いや略奪でもグヘヘ……」

 そこが『ゴブリンの村』だとも知らず、完全に普通の人の家だと勘違いしたユウは、勢いよくそのハウスの扉を開け放った!

ガチャッ!!!

――その瞬間。部屋の奥にいた数匹の緑色の肌をした小鬼(ゴブリン)どもと、扉を開けた美少女(ユウ)の【目と目が合う】。

「「「「「 ……ッ!? 」せめる。……っ!」」」お互いに完全にフリーズしたまま、気まずい静寂がほんの一瞬だけ世界を支配した。

ゴブリンたちが「ギッ、人間の女……?」と認識し、ギラついた目をさらに見開いたその刹那。ユウの脳内フィルターが、泥棒上がりの徹底的なゲス思考と圧倒的な生存本能へと一瞬で切り替わる。

(ハァ……っ! ヤバいヤバいヤバいッ! ここは人間の家じゃなくてゴブリンの巣窟だァァァ……!)

 ユウは満面の引きつったビジネススマイル(中身はゲスおじさん)を浮かべると、脱兎のごとく叫んだ。

「お、お邪魔しましたーーーー!!!」

バンッ!!!と凄まじい音を立ててドアを力任せに閉めると、ユウは180度体の向きを変えて全力で走り逃げ出す。

「ギギャギャー!」と我に返って大激怒したゴブリンたちが大暴走で家から飛び出してくるが、だが自分は勇者、ゴブリンに後れを取るなどあるわけがない。

 足を止め振り返り、距離を詰めてくるゴブリンたちに対しクズ勇者は一切の動揺を見せなかった。自分はこれでも最前線を戦い抜いた上位職。こんな初期エリアの雑魚モンスターなど、指先一つで消し飛ばせる。そう高を括りながら、腰に下げた輝かしい『聖剣』の柄に手をかけた。

「おいおい、挨拶代わりにしちゃあ随分と手荒だな。だが相手が悪いぜ。この俺の聖剣のサビにして――」

 誇らしげに聖剣を引き抜いた瞬間、間の抜けた音が草原に響き渡った。

 ――ビヨォォォォォン。

「……は?」

 手元にあるはずの聖剣の刀身は、なぜか超高反発のスプリング仕様へと退化しており、自重だけでべんべんと情けなく左右に揺れている。試しに足元の草を叩いてみるが、一本の雑草すら刈り取れない。ただのプラスチックのバネ。武器としてすら絶対に使えないという絶望に勇者の動きが完全に硬直した。

 冷や汗を滝のように流しながら、ユウの脳内フィルターが泥棒上がりのゲスな生存本能へと一瞬で切り替わる。彼女は懐から、最前線のどさくさに紛れて掠め取って身につけていた未知の立体裁断布地――『スポーツブラジャー』を力任せに引き剥がした。クズとしてのプライドも恥じらいもすべて投げ捨て、無駄に高いホールド性と伸縮性を誇るその機能性下着を、前方へと全力でぶん投げる。

 放物線を描いて宙を舞うスポブラ。ゴブリンたちにとって、それは未知の呪術が施された神聖な遺物に見えた。

「ギギッ!? な、なんだアノかのような聖なる防具は……!」

 群れ全体が畏怖と混乱でピタリとフリーズした瞬間、ユウは自分の両足にすべての命を預け、一心不乱に全力走で遠ざかった。とにかく身を隠せる安全な場所、立てこもれる城を探して、村の中に点在する粗末な掘っ立て小屋へと勢いよく飛び込む。

「ハァ、ハァ……! ここなら、ここなら隠れきれるか――」

 しかし、滑り込んだ薄暗い室内の奥は、完全に緑色の影で埋め尽くされていた。

「ギギッ? ニンゲン、入ってきた!」

「またゴブリンかよォァァ!!! どうなってるんだよここの村はァァァ!!!」

 安全な家などどこにもない。入る家すべてが完全占拠されているという無慈悲な現実。使い方のわからないスプリング聖剣を抱えたまま、ユウは涙目で家を飛び出し、さらなるドタバタの逃走劇の渦中へと逃げ回り続けた。執拗に迫る緑色の包囲網を、ゲスな急転回と泥臭いステップだけで必死にすり抜けていく。

 肺が焼け付くような疾走の果て、集落の中開けた場所で視界の先に、にわかに入り口である木製ゲートを発見し――よく見るとゲートの向こうに森が飛び込んできた。最後の力を振り絞ってその境界線と滑り込む。森の中まではゴブリンたちも追ってこれず、悔しそうに引き返していった。

ゴブリン村の中と言う無情な場所から、一着のスポーツブラジャーと己の脚力だけで最悪の包囲網を突破しその木製ゲートを勢いよく潜り、日の沈む太陽に向かい走り去っていくのでした。こうして新たなる異世界でゲスく生き抜く第1歩を踏み出し始めたのであった。

1話お読みの皆様明日、2話が更新された後のお昼にYouTubeにて相棒であるパナイダー&パナメちゃんの紹介動画を始めます。内容も含めまだ秘密ですがぜひ見に来てくださいね。

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