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廃人ゲーマー、異世界のラスボスを秒で倒す  作者: 大輔
転生の始まり

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4/23

最初の依頼

 登録を終えた翌朝。



 遊は宿屋のベッドで六時間寝て、すっきりした頭でギルドに向かった。


 引きこもりとはいえ、ゲームのために生活リズムは整えていた。起きて、動いて、飯を食う。それだけでいい。



 掲示板には大量の依頼が貼り出されていた。遊はそれを眺めて、一枚だけ抜き取った。



 ────────────────


 【討伐依頼】


 対象 :フォレストウルフ×5


 報酬 :銀貨10枚


 推奨 :Cランク


 場所 :南の森


 ────────────────



 初日から無茶をする理由はない。


 まず世界の感触を掴む。MMORPGで言えば、チュートリアルを丁寧にこなすタイプだった。




 南の森に入って、三分で依頼が終わった。



 フォレストウルフを五頭、発見した。群れで移動しているところだった。


 近づくと一頭がこちらに気づいて牙を剥いた。ほかの四頭も振り向いた。



 遊が視線を向けた。



 五頭全員が、ぴたりと動きを止めた。



 それから一頭ずつ、ゆっくりと地面に伏せた。尻尾を下げて、頭を低くして。昨日の黒い獣と同じ様子だった。



(やっぱり神の加護の効果か)



 遊は辞典で調べた内容を思い出した。


 『神の加護』は「周囲の生命体が本能で格の差を認識し、敵意を失う」という効果らしい。要するに、見られるだけで相手が戦意喪失する。



(便利なんだか、つまらないんだか)



 戦闘にはならなかった。ウルフたちの毛を採取の証拠として数本いただいて、遊は森を出た。



 ギルドに戻ると、エリスがカウンターで書類を捌いていた。遊が依頼書を差し出すと、受け取りながら時計を見た。



「……早くない? 出てから三十分も経ってないけど」



「向こうが戦う気をなくしてたので」



「意味がわからない。遭遇はした?」



「しました」



「戦闘は?」



「してないです」



 エリスはしばらく遊を見た。そして毛の束を確認して、依頼完了のスタンプを押した。



「……聞いていいか」



「どうぞ」



「魔物を前にして、怖くないの?」



 遊は少し考えた。



「ゲームに出てくる敵を怖いと思ったことがないので。感覚的にはそれに近いです」



「この世界に来て、怖いものは何もない?」



「強いて言うなら、ネット環境がないことです」



「……ゲット、なんとか?」



「説明すると長いので省きます」



 エリスはため息をついた。でも今日は昨日より、少し笑っているように見えた。



「わかった。次の依頼、もう少し難しいのにしてみる?」



「どのくらいですか」



「Bランク相当の魔物。普通の冒険者なら三人パーティで挑む案件」



 遊は特に表情を変えずに頷いた。



「構いません」



「……怖いもの知らずか、本当に強いか、どっちかだね」



「たぶん後者だと思います」



「根拠は?」



「鑑定の結果を信じるなら、ですけど」



 エリスはまた笑った。今度ははっきりと、呆れ混じりの苦笑いだった。



「確かに、あれを見た後じゃ疑えないか」



 翌日の依頼書を受け取って、遊は宿屋に引き返した。



 夕暮れの石畳を歩きながら、ふと空を見上げた。


 元の世界と同じ青で、でも少しだけ色が濃い気がした。



(なんとなく、悪くない)



 遊にとって、それは最大限の肯定だった。



 チート無双男の、異世界漫遊記。まだ始まったばかりだ

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