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廃人ゲーマー、異世界のラスボスを秒で倒す  作者: 大輔
転生の始まり

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2/23

ステータスがおかしい

 目を開けると、森だった。



 青い空。木漏れ日。足元に柔らかな草。風が吹いて、木の葉がさらさらと揺れている。


 鳥の鳴き声がする。どこかで川の音もする。



 遊は仰向けのまましばらく空を眺めて、それから起き上がった。



「転生、成功か」



 感慨はなかった。「新しいフィールドに来た」という感覚に近い。



 体を確認する。身長が少し伸びた気がする。体つきも引き締まっている。顔は触ってみても変化がよくわからなかったが、転生前に神様が「見た目も整えておいたよ」と言っていたので、たぶん悪くはなっていないだろう。



「ステータス、オープン」



 神様から教わった呪文を呟くと、半透明のウィンドウが目の前に現れた。



 遊は無表情のまま、それを読んだ。




 ────────────────────


 【ステータス】


 名前 :田所 遊(異世界名:ユウ)


 年齢 :17(転生時)


 職業 :勇者(★★★★★)



 HP  :999,999 / 999,999


 MP  :999,999 / 999,999


 攻撃力:99,999


 防御力:99,999


 魔力 :99,999


 速度 :99,999



 【スキル】


 ・全魔法適性(全8属性)


 ・剣術:神域


 ・無限再生(致死ダメージ無効)


 ・言語理解(全言語自動習得)


 ・気配遮断:極


 ・神の加護(常時発動)


 ────────────────────




 遊は三秒ほど無言でウィンドウを見つめた。



「……神様、やりすぎでは」



 返事はなかった。風が吹いて、まるで笑っているようだった。



 全魔法適性。剣術神域。無限再生。数値は全部カンスト。


 MMORPGで言えば、最強装備を全て揃えたキャラクターをニューゲームで始める状態だ。



 序盤のフィールドにこれで乗り込む。そのシュールさを想像して、遊はふっと息をついた。



「……まあ、いいか」



 不満はなかった。


 強いならそれでいい。どうせゲームをするなら最強のほうが楽しい──遊はそういう人間だった。



 ウィンドウを閉じて、立ち上がって、歩き始めた。


 木々の隙間から、遠くに街が見える。石造りの建物。煙突から上がる煙。



(あそこが最初のフィールドか)



 遊は特に急ぐでもなく、森の中を歩き出した。




 歩き始めて五分もしないうちに、魔物が出た。



 オオカミより一回り大きい、黒い体毛の獣だ。黄色い目が遊を捉えて、低く唸った。



 遊は足を止めて、相手を眺めた。


 敵意はある。ただ、何かを測るように動かない。



(ゲームで言えばエンカウント、か。でも)



 遊が視線を向けた瞬間、獣の動きが止まった。



 全身がぶるりと震えて、それから──ゆっくりと、地面に伏せた。



 尻尾が小さく揺れている。



「……降参?」



 遊は首を傾げた。獣は顔を上げないまま、小刻みに震えている。まるで巨大な何かの前に立っているような、そういう震え方だった。



(神の加護、ってスキルのせいか?)



 後でちゃんと調べようと思いながら、遊は獣の横を素通りした。


 獣はずっと伏せたまま、遊が完全に見えなくなるまで動かなかった。

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