表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃人ゲーマー、異世界のラスボスを秒で倒す  作者: 大輔
王都への道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/23

第四話 王都の門、あるいは圧力というもの

王都が見えてきたのは、五日目の昼前だった。


丘の頂上に出た瞬間、視界が開けた。


広い。


それが最初の感想だった。城壁だけで高さが十メートルはある。その向こうに建物が密集していて、中心部には白い尖塔がいくつも伸びていた。人の手で作られたものとしては、ユウがこの世界で見た中で間違いなく最大だった。


「大きいでしょう」とトバスが言った。少し誇らしそうな顔をしていた。生まれ育った街ではないが、長く住めば愛着は湧くものらしい。


「思ったより、はい」


ミアが「すごい?」と聞いた。


「すごいです」


正直な感想だった。ゲームで言えば、メインストーリーの核心に近い大都市。フィールドの作り込みが段違いになるポイント。ユウの中のどこかが、わずかに浮き立った。


(……また、バグか)


自己診断。原因不明。思考を打ち切って坂道を下り始めた。



南門には検問があった。


兵士が四人。旅人の列が十人ほど並んでいる。ユウたちも列に加わって待った。


順番が来ると、兵士がトバスの顔を見て「王都市民か」と確認し、子供たちを見て、ユウを見た。


「冒険者か。ランクは」


「Aです」


兵士が認識票を確認した。それだけで表情が少し変わった。警戒、というより、値踏みするような目だった。


「入都の目的は」


「ギルドへの登録と、情報の報告」


「情報?」


「街道沿いで魔力異常を確認しました。古井戸から漏れ出している可能性があります。ギルドか、然るべき機関に伝える必要があると判断しました」


兵士が隣の兵士と顔を見合わせた。小声で何かを話している。それからユウに向き直って、「少し待て」と言った。


しばらくして、別の兵士が小走りでやってきた。階級章が違う。上の立場の人間らしい。


「街道の魔力異常について、詳しく話を聞かせてもらえるか」


「構いません。ただ、ギルドにも同じ情報を渡す予定なので、どちらが先でも内容は変わりません」


上官らしき男がユウをじっと見た。年齢は四十代。目が鋭い。値踏みの目ではなく、判断している目だ。


「名前は」


「ユウ。冒険者ランクはAです」


「どこのギルドの出身だ」


「北の街のギルドです。王都への転入登録はこれからになります」


男は少し間を置いてから、「通れ」と言った。「報告はギルドを通してくれ。我々にも共有が来るはずだ」


「わかりました」


検問を抜けると、トバスが小声で言った。「手慣れてるな」


「そうですか」


「普通、兵士相手にあんな話し方はしない。もっと萎縮する」


ユウには萎縮する理由が思い当たらなかった。相手が兵士でも貴族でも、伝えるべきことを伝えるだけだ。ゲームのNPCに階級で態度を変えるプレイヤーは少ない。



王都の中は、外から見た印象よりさらに広かった。


大通りに人が溢れている。露店、行商人、馬車、走り回る子供たち。前の街の数倍の密度だ。ミアが目を輝かせてあちこちを見ていた。レンは人混みに少し緊張しているようで、トバスの服の端をそっと掴んでいた。


「ここで一度別れよう」とトバスが言った。「妻の実家はここから東の区画だ。お前はギルドへ行くんだろう」


「はい」


「連絡先は……そうだな、東区の『トバス雑貨』で通じる。今後も店を続けるつもりだから」


ユウは手帳にメモした。


ミアがユウを見上げた。「またね」


「たぶん」


「たぶんじゃなくて、またね、って言って」


ユウは少し考えた。


「……また」


ミアが笑った。レンは小さくうなずいた。トバスが「世話になった」と頭を下げた。


三人が人混みに消えていくのを、ユウは少しの間見ていた。


見送るという行為を、これまでそれほど意識したことがなかった。前世でも今世でも、別れは基本的に「終了」だった。ゲームのセッションが終われば接続が切れる。それだけのことだ。


なのに今は、人混みの中のミアの赤い上着が見えなくなるまで、なんとなく目で追っていた。


(……また、バグか)


三度目の自己診断。やはり原因不明のまま、ユウは大通りを歩き始めた。



王都ギルドは大通りの中心部にあった。


外観からして規模が違う。三階建ての石造り。入口の上に金色のギルド紋章が掲げられている。扉も分厚い。


中に入ると、広いフロアに受付カウンターが五つ並んでいた。冒険者の数も多い。ざっと見ただけで三十人はいる。雰囲気も前の街のギルドとは少し違う。全体的に、緊張感が高い。


受付に近づくと、担当の女性がユウを見た。


「転入登録ですか、依頼ですか」


「転入登録と、ギルドマスターへの取り次ぎをお願いしたいです」


「ギルドマスターへの取り次ぎは予約制になっておりますが、ご用件は」


「グレン・ドーンからの紹介状があります。それと、街道の魔力異常について報告があります」


受付の女性の表情が変わった。


「……少々お待ちください」


彼女が席を立って奥へ消えた。ユウは待合のベンチに座って、フロアを眺めた。


何人かの冒険者がこちらを見ていた。Aランクの認識票が目に入っているのかもしれない。あるいは単純に、見慣れない顔だからか。


どちらでもよかった。


受付の女性が戻ってきた。


「ギルドマスターがお会いになります。こちらへどうぞ」


ユウは立ち上がって、封筒を鞄から取り出した。


グレンの封筒。まだ開けていない。中身が何であれ、渡すのが自分の役目だ。


奥への扉が開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ