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第4章:3
ガラリと教室の扉が開いた。
陽向は顔を上げなかった。けれど、教室の空気がほんの少しざわついたのを感じた。
数人の女子が「大丈夫?」「もう保健室行った?」と声をかけている。
さっきの――黒髪の少女。
足取りはまだ少しおぼつかないように見えたが、彼女は静かに席についた。
陽向の斜め前。隣でもなければ遠くもない、妙に気になる距離。
ちらりと視線を向けると、彼女もこちらを見た。
一瞬だけ、目が合った。けれど、それだけだった。
笑うでも、話しかけるでもなく、彼女はそっと視線を逸らした。
陽向はまた前を向いた。
別に、気にする必要はない。ただのクラスメイトの1人。
……なのに、どうしてこんなに、心が落ち着かないんだろう。