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第4章:「出会い」
高校の廊下は静かで、陽向はいつものように無言で歩いていた。
誰かと話すことはほとんどなく、目も合わせない。
ふと、足音が慌ただしく響き、ざわめきが聞こえた。
振り向くと、黒髪の少女がよろけていた。
「大丈夫? ひーちゃん!」
周囲の声が遠くで響く。誰かが彼女を呼んでいる。
陽向はその名前がまだわからなかった。
だが、反射的に彼女の腕を掴み、支えた。
ぼそりと、心の中で呟く。
「昔も、こんなことあったな……」
陽向は無言のまま、少女を見つめていた。
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