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情を抱えて蕾が膨らむ

俺が殺されかけたあの日から

繁華街を中心にこんな噂が実しやかに

囁かれていった。

「某大企業の社長のご子息、

結城幸治郎を殺そうとしている奴が

ここいらを彷徨いているらしい」

そして、大体はこんな言葉が添えられた。

「そいつを殺せば莫大な報奨金が手に入るらしい」


堅気、いやちょっと考える頭のある奴なら

人を舐めきった内容だと

判断がつくようなバカげた噂だが、

これが恐ろしい勢いで広がったのは

確実に大金が手に入るという夢に

御曹司が狙われているらしい

という事実がそれを補強していたからだった。

それに特別口が軽そうで人脈の広そうな奴を

選んでわざわざ流させたのだから

広がってもらわなければ困る。

そう、この噂を流させたのは俺自身なのだ。


殺されるとわかっている相手は間違いなく

危険を排除しようとするし、

仮にそんなことを気にも止めないような

奴だったとしても

かけた覚えのない報奨金を払えと

言い続ける訳のわからん奴らに

付き纏われては迷惑もいいところだろう。


どう考えたとしてもドラマの悪役気取りの

殺人犯か噂の出所探しに躍起に

なるだろうし、そのための人手を警察ではなく

どっかのチンピラに求めることは予想がつく。

そいつらに話を持ちかけたその時、その瞬間が

過去のあらゆるの悪徳の全てを浮き彫りにさせ、

自らの手を汚さずに影に隠れて笑っていたクズを

光のもとに引きづり出すことができるのだ。

猛り狂う炎が奴らの身に迫っている、

身を焦がされまいかと涙を浮かべて怯えている、

そんなイメージが日毎に強く現れては

俺の心昂らせる。


まだか…まだなのか?

狂犬めいた思考が渦を巻き、

食い意地にも似た渇望が湧き上がる。

まだか…まだなのか?

焦りが余計に気持ちを乱し、

街を徘徊するように促す。

まだか!早く殺らせろ!

ぶっ殺してやる‼︎

もはや理性で抑えるのは限界に近い、

辛うじて残っている客観的な視点すら

消え去ろうとしていた。


そんな衝動に激しく心揺さぶられていたある日、

携帯に連絡があった。

「俺だ」

「いい加減動きはねぇのか?動きは‼︎」

「焦るな、そのことだ」

「………どうした」

「奴が動いた、狡い真似した甲斐があったな」

「狡いねぇ……まぁいい…

いつどこで接触するつもりなんだ」

「それは追って話す、報酬のこともあるしな」

「…そうだな……どの店だ」

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