結婚の準備は着々と
召喚されて、はやいものでもう2か月。お城は連日大騒ぎ。
「こちらのレースはお嫌いですか?」
「ケーキの飾りは、こちらでよろしいですか?」
召喚して100日目に結婚式を挙げるのが通例だということで、急ピッチで準備が進められています。
プロポーズされた記憶もないけれど、『こうなる予定ですから』という感じで勢いよく流されていく私。
王妃様のように、召喚されたらサラッと結婚、そして1年後にはベビー誕生!!が期待されているのを痛感しています。18歳で母になるのか、、ちょっと想定外過ぎる。私の親が知ったら、どんな気がするのかな、と一瞬、懐かしい両親の顔が浮かびました。
たったの2か月だけど、私の記憶はかなり失われてしまいました。記憶が消えるというのは恐ろしい気がするのだけれど、不思議と焦りや悲しさを感じません。アンソニー様に話したら、『召喚の影響によるものなのかもしれないね。悲しく感じないのも含めて。』と申し訳なさそうな顔で言われました。
実際、王妃様も過去のことをほとんど覚えていらっしゃらないそうです。そして、悲しく感じてもいないそうです。
アンソニー様は、金髪イケメンであるにも関わらず、素敵な方であることは、この2か月でよーく分かりました。マリア様の言った通り。
そう、マリア様も、よく会いに来てくれます。この世界のことを知らない私のために、花や果物、流行りの小説などを持って。
『カップの持ち方が間違ってますわよ。』とか『笑うときは口元をお隠しになって。』とか、鋭く指摘してくれて、聖女教育マナー部門の教師のようです。ありがたや。
アンソニー様とマリア様の婚約は、聖女到来祝賀パーティの翌日に、正式に解消になりました。とても事務的なものであったと、侍女達の噂話で聞きました。
時々、マリア様の長いまつげがキラリと光った、あの美しく寂し気な横顔を思い出します。そして、、前言撤回。やっぱりアンソニー様はクズ男だなと思います。