見知らぬ世界で生きていくには
この世界には、テレビがありません。
この世界には、冷蔵庫がありません。
この世界には、シャワーがありません。
この世界には、水洗トイレがありません。
召喚されて1週間、私は聖女教育漬けになっています。聖女教育というのは、この世界、この国について知るもので、小学校の社会科のような感じです。
聖女というのは、名ばかりで、魔法が使えるわけでもなく、奇跡を起こすわけでもないそうです。
つまり、ほんとに、王子の花嫁召喚、暇つぶしお祭り騒ぎ、という感じでしょうか。
元の私の生活、家族に謝ってほしい・・・
しかし、悲観して流されるままになっていると、私はアンソニー様と結婚させられてしまいます。よく知らないイケメンと結婚、、、無理。
でも、単純に結婚回避すれば良いわけではないことが、この1週間で分かりました。この世界には、科学的な文明はありません。魔法もありません。リアル中世ヨーロッパ。
私は今、お城にいるので、毎日お風呂にも入れてもらえるし、快適に過ごしていますが、庶民の生活になったらどうなるのか。
お城以外で生活していく自信はありません。かといって、アンソニー様と結婚する気にもなれません。
『今朝、庭で咲いていた薔薇です。』
『料理長に頼んで、ケーキを焼いてもらいましたよ。』
『天気がいいから、散歩に行きましょう。』
アンソニー様は、忙しい中、毎日必ず顔を出してくれます。聖女である私との未来を、前向きに考えてくれていることが良くわかります。
もしかしたら、本当に、完璧な王子様なのかもしれない、、、
私の心は、少し揺れました。
マリア様の教えてくれた、アンソニー様の素敵なところ。そう、きっと良い人なのでしょう。王子だからではなく、マリア様はアンソニー様を愛している、、、そう感じましたから。
つまり、私って、お邪魔虫よね。気が付いちゃった。
勝手に召喚されて、しかもお邪魔って、、、最悪すぎて立ち直れない。だけど、アンソニー様と結婚しなかったら、名前ばかりの聖女には居場所がない。
お城を出されてしまったら、どのようにして生きていけばいいのか、、答えはまだ見つかりません。