クズ男について
お城のお庭には、あちこち灯がともしてあり、道に迷うことはないようにしてありました。
「一緒に来てくださって、ありがとうございます。」
慣れないヒールで足は痛み、慣れないドレスで腰が痛い私は、噴水の縁に腰を下ろしながら言いました。アンソニー様の目を盗んで、大急ぎで移動したのも足に来ました。
「すみません、もう、足が痛くて、、、ベンチとかも見当たらないし、座ってお話してもいいですか。」
「まったく、だらしないのないこと。」
ヘロヘロになっている私を見て、マリア様はため息をつきながら言いました。
「でも、仕方ないですわね。ドレスも靴も、慣れてらっしゃらないのでしょう。いつもは、さきほど着ていらしたようなお洋服でお過ごしなのね。」
そうですそうです。こんなドレス、私には合いません。
「で、お話って、なんでしょう。」
私に合わせて、マリア様も噴水の縁に腰かけてくださいました。
私がマリア様を連れ出したのは、アンソニー様との婚約について確認してみたいことがあったからです。
「あの、アンソニー様とご婚約されているって、、」
「ええ、そうですわね。でも、もうお終いでしょうね。」
マリア様の長いまつげが揺れ、わずかにキラリと光りました。
「先ほどは、少し取り乱してしまいましたけれど、頭では理解しておりますのよ。心の底からおめでとうとは、まだ申せませんけれど。」
ココロノソコカラオメデトウ、、、
「いえ、あの、私アンソニー様と結婚したいわけじゃないんですけど。」
「は?」
マリア様の目が、もともと零れそうな目が、さらに大きくなりました。
「タイプじゃないっていうか、、、イケメン王子さまって、うさん臭くないですか?」
「あなた、、何言っているの?」
「私、イケメン苦手なんですよね、、、かっこよくて、スタイルも良くて、上品で頭も良くて性格いいとか、有り得ないですよね。」
「アンソニーはそういう人よ。学業の成績もいつもトップですし、剣術も、政治も、すべてきちんと学んでおりますわよ。」
「えー、じゃあ、女好きで浮気ばかりとか、暴力的とか、、」
「アンソニーはそんなことは致しません。」
「聖女が来たから婚約破棄って、クズ男のやることですよね。」
「アンソニーが好きでやっているわけではありませんのよ。というか、あなた!さきほどからアンソニーのことを悪く言ってばかりじゃありません?アンソニーと結婚するということの幸運が分かっていらっしゃらなさすぎますわ!アンソニーは、、、、、」
それから、マリア様が侍女のエメラルダさんに連れ戻されるまで、マリア様のアンソニー様素敵話は続きました。