表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/30

◇28

 キオがちらりと、包みの端っこをもったいぶりながらめくる。


「こっ、この白くてぷにぷにしたコは……!」


「はあ、マシュマロですな」


「キオ、マシュマロ知ってるの?!」


 このおやつはケイトの店でも未発売だから、屋敷内でもまだ知ってる人間は限られている。


 キオは珍しく焦った様子で咳払いをした。

「ん゛んっ! ケイトさんから、聞きましたんでね、ほら、大切なお荷物の事は知っとかんと」


(本当かしら)

 隠し事の匂いがプンプンするけれど、いまはそれどころじゃないのだ。


「……────まぁいいわ、デザートまで大事にしまっておいて。あなたも、手伝ってくれるんでしょ?」


 キオは意外そうにシーラを見て、にっこりと笑った。


「承知しました」


(何よ、普通の笑い方もできるんじゃない)


 今の笑い方は胡散臭くなかったわね、と、シーラは思った。


(いつもそうやってればいいのに)

 


          ◇



「ねぇ、さっきの男の子は?」


 シーラが問いかけると、恰幅の良いご婦人は汗を拭いて顔を上げた。

「アランかい? いま、火おこし用の枝を集めてるよ」


「ちょうどいいわね。ありがとう」


 礼を言って、シーラはサラサのもとに駆け寄った。

「サラサ!」

「うん」

「アランに言って、子供たちを集めて。動ける子だけね。皆でかまどを作る手伝いをしてもらうわ」

「了解、探してくるよ」


 


 しばらくして、サラサたちが戻ってきた。子供たちも一緒だ。10人はいる。皆持てるだけの枝を集めてきたらしい。

「かわいた木を選んで、こういうふうに、空気が入るように積んでくれる?」


 シーラが見本を見せると、子供たちは仕事をもらったのが嬉しいのか、きらきらとした目で頷いた。

「わかった」


「着火は私たちがするから」

「うん。消し炭にしないように気をつけようね」

 サラサが不穏な事をぽろっとこぼす。

 口に出したら本当になりそうだから、やめてほしい。

「大丈夫よ、たぶん」

「そうだね。でも、子供たちは避難させようね」

「もちろんよ」


(あ、そうだ)

 と、シーラはひらめいた。


「着火前に、かまどの土台部分を作っちゃいましょう。私の土魔法でつくれば、多少の衝撃じゃ崩れないわ」

 魔法の微調節もずいぶんと上手くなったし、消し炭にする事はないけれど、念には念をだ。


「サラサ、魔力をお願い」


「はいよ」

 ボールでも寄越すような気軽さで、サラサは魔力を放った。 

 光の玉のようなそれは、スピードをあげてシーラへと飛ぶ。

 シーラはそれをキャッチボールのように手のひらで捕まえた。

 シュン、と魔力が消える。


 子供たちが手品を見るように目を丸くして、おおっ!と声をあげた。


 シーラはとらえた魔力の一部分を再錬成して、土魔法で半球のかまどを作った。

 てっぺんと、正面に穴をあける。


 威力のある魔法だけが魔法じゃない。

 ふたりの特訓の成果はこんなところでも役立つのだ。

 ついでに残った魔力で、かまどの中の枝木をしっかり乾燥させておいた。

 これをあと三つくらい作ればいい。


 さて解体の方はどうかなと見やった先に、見慣れた笑顔がいた。


「ザロ!」


「おうおう、やってるな! 見てたよ、嬢ちゃん、魔法が上手くなったじゃないか! よし、今日はごちそうだ! 屋敷でいちばんデカい鉄板も持ってきたぞ」

 頼もしい料理長は、自分より大きな鉄板を軽々と持ち上げた。


「わーい♡」


「こっちも終わったよ」

「白おじ!」


「危険な状態の人はいない。怪我人は治療済み。あとは休息と栄養だな」

「よし、俺の出番ってわけだな! 解体の済んだ肉からどんどん運んできてくれ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ