表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

◇22

「元上司の気配、しますねぇ」


 キオはそう言ってしゃがみ込み、枯れた下草をつまみあげた。


 泉も沼も、水辺と呼べるものは、もう、ない。


 その場にあるのは、命を失った植物と、骨になった動物の死骸だけだ。

 

 白は変わらず厳しい顔だ。

「……そうか、封印は簡単に解けるものではないと思ったが」


 パンパンと手を払って、キオが立ち上がる。

「本体かどうかはわかりません。あのレベルになると、あちこちに眷属はいますさかい」


「……この地に現れたのは、偶然だろうか」


 考え込む白に、キオは首をひねる。


「いまさら仇打ちでっか? どうでしょうね? あの元上司に心酔するような物好きに、心当たりはありませんな。まぁ、オレが知らんだけかもしれへんけど」


「見張りを強化しておこう。二度と、この国土を戦場にはさせん」


 キオはははっと笑って、細めた目で白を見やる。

「あんたも変わった魔物やなぁ。人間より人間らしいわ」


「そんな我を受け入れてくれる人たちがいたからね」

 ふふっと笑って、白は言う。


「ずいぶんと、居心地の良い場所を得てしまった。……情もわくというものだ」



          ◇



 プラシノの能力で、スマラグドスの屋敷へと転移した。


「おかえりなさい!」


 白は、かけよってきたシーラを受け止める。

「ただいま。いい匂いがする」


 プラシノも白の肩の上で鼻をひくひくさせている。

「絶対うめぇじゃん、このニオイ。白、さっさと報告すませよーぜ」


 キオとは、転移前に別れた。


「ふっふっふ。でしょお? 今日はレフちゃん監修の麺料理よ! 焼き料理もあるわよ!」

 小さな体をふんぞりかえらせて、シーラが得意げに言う。


 白はシーラの頭を撫でて、にこりと笑う。

「楽しみだな。じゃあ先に報告を済ませてくるよ。カーラ、一緒にいいかい?」


「ええ」


 エプロンを外して、カーラはシーラの前にしゃがむ。


「あとはお願いね」


「任されたわ!」

「頼もしいわね」

 シーラの頭を撫でてから、カーラは白とプラシノとともに厨房から出て行った。


 よし、と、レフが立ち上がって、指示を再開する。

「じゃあトッピングを用意しましょうか。シーラ、そこの緑の細い野菜を細かく切れる?」


「りょーかい!」



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ