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◇18

ハクおじ!」

 名前をよぶと、白の綺麗な顔がふわりと緩んだ。


『シーラ。変わりはなさそうだな。まだ寝ないのか?』

 

「だって」

 むう、と口を尖らせてしまう。

「白おじのお仕事の邪魔をしないように、この時間にしたの! 無理しないでね、ちゃんと怪我しないように気をつけてね」


 血のつながりはないけれど、白は大切な家族だ。

 なるべく怪我はしてほしくない。


『ああ、心配してくれたのだな。大丈夫だよ。この仕事が終わったら、研究所に遊びにおいで。皆が会いたがっていた』


「うん!」


「白」

 ひょこ、と、レフちゃんが手鏡ーー通信具の前に出た。

『レフ。元気そうだな』

「白もね。何か手伝いは要りそうかしら?」


『大丈夫だよ。思ったほど、悪いものではなさそうだ。コラン殿には伝えたが、ここからは逃げ出したようだ。何か異変に気づくことがあれば、そちらも警戒してくれ。また連絡するよ』


「了解っ」

 そう言って、レフちゃんが一歩さがる。

 シーラはもう一度、身を乗り出して鏡の中を見つめた。


『じゃあ、おやすみ。シーラも』


「うん、おやすみ! またね、白おじ」

 白おじに手を振って、コンパクト型の手鏡を閉じる。




「ね。白なら大丈夫よ。今日はもう遅いわ。寝ましょうね」

「はーい」

 もぞもぞとベットに入る。

 足元のクッションに、レフちゃんも寝そべる。

「ねぇ、シーラ。明日のお弁当は何にしようかなぁ」

「唐揚げがいい! 骨付きの」

「わかった。あと卵焼きよね」

「おにぎりも!」


 レフちゃんは、遠い遠い国で死んじゃって、この国で生まれ変わったんだって。

 レフちゃんが話す遠い遠い国のお料理はどれも聞いたことがないけれど美味しそうで、シーラはその話を聞くのが大好きなのだ。


 レフちゃんと料理長が手を組んで素材を探して再現しているお料理はもちろん美味しすぎて、レシピを提供している街のお店でも大好評なのだって。


 だからお弁当だって、とっても美味しい。

 訓練をがんばったあとの、ご褒美なのだ。



          ◇



「晴れたわねー! ピクニック……じゃなかった、特訓日和!」

「お弁当は後でだよ、シーラ」

「んもう、わかってるわよ、サラサ」


 森の入り口で、三人はプラシノを待っていた。


「プラシノももう来ると思うんだけど。遅いわね」

 と、レフちゃん。


「先にやってようか?」

 大技の訓練を後回しにすれば、三人でも軽い特訓はできる。

「そうね、簡単な結界なら私でもーー」

 と、言いかけて、固まったように動かなくなるレフちゃん。


「レフちゃん?」


 名前を呼ぶと、パッと、レフちゃんの意識がこちらに戻ってきた。

「プラシノから緊急の念話だわ。気をつけろってーー。とりあえずプラシノにこちらの場所を送るわ」




「レフ!」

 ほどなくして、プラちゃんが飛んできた。

「プラシノ。どうしたの?」

 レフちゃんの問いに対するプラちゃんの表情は、固い。


「西のほうから、地中をこっちに進んでくる魔力がある。禍々しい感じはしないけど、正体がわからない以上、警戒しないと」

「シーラ。サラサ。私の転移術で戻りましょう」

「そうだな。森の様子は逐一報告するから、ふたりはレフと一緒にカーラのところへーー」


「待って!」


 シーラはふたりに待ったをかける。

 まだ出来ることが残っていると思ったのだ。


「白おじも言ってたやつじゃないの? 『悪いものではなさそう』って。私なら、話ができるかも」

「だけどーー」

 レフちゃんは渋い顔をする。

 レフちゃんにとっては、事件解決よりもシーラの安全が優先なのだろう。

 大事に思ってくれるのは嬉しい。でも。


「レフちゃんが、私の事を守ろうとしてくれているのはわかるの。でもね、私だって、いつまでも箱入りのお嬢さまではいられないし、いるつもりもない。

 ママのように、力強く公爵領を導いていく一翼になりたいの。

 ここで逃げたら、スマラグドスの名がすたるわ!」


 サラサが、私の前に出た。

「僕もいます。ここでなら、見る人もいない。竜の姿になっても良いでしょう?」

 そう、援護射撃をしてくれた。

 さすがサラサ、それでこそ私の友達ね!


 はー。と、プラちゃんが息を吐いて頭を掻いた。

「レフ。危ないと思ったら、すぐ、シーラだけでも連れて戻れ。俺とサラサは何とでもなる」

 こくこくと頷くサラサ。

「そうです。魔物の一撃くらいじゃ、僕は死なない」

「……わかったわ」


 レフちゃんはそう言うと、自分の尻尾にかぶりつく仕草をして、ブチっと毛を抜き取った。

 そしてそれを、シーラの手にそっと置いた。


「もし私から離れていても、すぐに転移できるように。これは肌身離さず持っていて」

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