第07話 03月08日【3】
私は記載頂いた質問用紙に目を走らせた。
内容は以下の通りだ。
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質問1:
【当院に応募して下さった理由はなんですか】
回答1:
『以前から医療職に興味があり、子供が好きだから』
質問2:
【通勤に片道どの程度、時間が掛かりますか】
回答2:
『片道約30分』
質問3:
【交通機関は何を利用されますか】
回答3:
『JR◇◆線』
質問4:
【週の勤務回数、または勤務時間はどの程度を希望していますか】
回答4:
『週3回程度。週20時間程度を希望します』
質問5:
【勤務可能な期間はどれくらいですか】
回答5:
『3年間』
質問6:
【患者様の来院状況によって、業務終了が遅くなる場合もあります。問題ありませんか】
回答6:
『問題ありません』
質問7:
【子供は好きですか】
回答7:
『大好きです』
質問8:
【飲酒や喫煙はしていますか】
回答8:
『一切していません』
質問9:
【病院にはよく行かれますか(当院以外でも)】
回答9:
『風邪を引いた時や怪我をした時など、通院していました』
設問10:
【勤務できない曜日や時間帯はありますか】
回答10:
『月曜日と火曜日の夜。土曜日の終日』
設問11:
【夕方からの勤務は可能ですか】
回答11:
『週に1~2回なら大丈夫です』
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続いて2枚目の用紙にも目を通した。こちらは簡単な学力テストになっている。とりあえず、記載漏れなどは無いようだ。
「ありがとうございました。それでは、こちらの回答に沿って、いくつか質問させて頂きますね」
「はい」
「答えにくい内容でがあれば御遠慮なく「答えられない」と仰ってください」
「はい、わかりました」
「恐れ入りますが、履歴書に記載頂いている住所は御実家ですか?」
「はい、そうです」
「通勤もご実家からとなりますか?」
「はい」
「家族構成などお伺いしても宜しいですか?」
「はい。父と母、それに妹の四人です」
「妹様がいらっしゃるのですね。妹様とは、仲が良いのですか?」
「はい。とても良いです」
「勤務可能な期間を”3年”とされていますが、何故ですか?」
「それは………両親との約束で、『3年間だけ』と決めていて…」
「そう……ですか。分かりました。ありがとうございます」
「月曜日と火曜日の夜、それに土曜日は勤務が難しいのですね。失礼ですが、理由をお伺いしても?」
「あ、はい………習い事をしていて…」
「なるほど。その日にレッスンがあるのですね」
「は、はい…」
「子供好きなんですね」
「は、はい! わたし、子供が好きで大学でも教育学部に進んだんです」
「それは素敵ですね。では、将来は幼稚園の先生を志しているのですか?」
「いえ。それは両親が認めてくれなくて…」
「それは残念でしたね」
「でも、なので小児科さんでお仕事をしたいと思って、応募しました」
「ありがとうございます。光栄です」
「耳鼻科さんで、半年ほど看護助手をされていたのですね」
「あ……はい…」
「では、ご存知とは思いますが、医療の仕事は難しく覚えることも多いです。半端な気持ちでは務まりません。それでも、頑張れますか?」
「は………はい…!」
「他にどこか面接は受けていますか?」
「いえ、こちらだけです」
「ありがとうございます。では――」
※※※
その後もいくつかの質疑応答を繰り返し、彼女からの質問も受け付けた。けれど特に聞きたいことは無かったようだ。
気付けば20分ほどで面接は終了した。緊張して時間を気にする余裕が無かった。
事務所の外までお見送りして、本日お越し頂いた交通費代わりに図書券をお渡しする。彼女に渡したのは500円券一枚だ。
事務所に戻りドッカリと椅子に腰掛け、疲れを溶かす様に大きな溜息を吐いた。
「彼女は、採用できないな……… また募集をかけないと…」
お預かりした履歴書と質問用紙を一瞥して、無造作に机の上へと置いた。