第63話 問題を全て解決したら
あの激動の1日から3日が経過した。
リアンは今じゃ王様だったのが嘘みたいにイニーと仲良くしている。
いや、一方的にじゃれついてるだけだ。
それを嫌がらないからイニーもまんざらでは無いのだろう。
なんか微笑ましい。
現在、ビスカはいつもの会議室にいる。
メンツは微笑ましさのかけらもない。
ビスカ、オスクリタ、マキナ、マーレ、ウェル、デモニオ、ラビアラの計7名が集められた。
発案者はオスクリタで、会場提供者はビスカだ。
わざとここを提供してやった。
さて、重要な話が始まる。
まずはオスクリタから話す。
「みんな、よく集まってくれた。では、早速で悪いが本題に入らせてもらう。これまでの問題発生の裏にはダリア商会が居ると考えられる。それについて何かある者は話して欲しい」
「何かあるからこのメンツなんでしょ?聞くなら先に言えばいいじゃん」
ビスカはめんどくさくなってそう言ってしまった。
でも、彼はその方が楽だなと思って書き方を変える。
「では、ビスカから思い当たることを話してもらおうか」
「思い当たることなんてたくさんあるよ。フェリチタを襲った軍の一部はそれなりの物を揃えてた。それらを用意するのにいくら掛かるの?合成魔獣用の魔獣はどうやって集めたの?不思議なことばかりだよ」
「それについては余が調べたから分かる。ダリア商会はたくさんの噂と金を渡したのだ。あの国は他の国をそれで説得して動かした。魔王マリスはビスカのことがあるから協力したのだな。何も知らずに」
「だから優秀なリーダーと魔導師が揃ったのか。確かにそれだけの用意があれば大規模魔法や完璧な統率も可能だね。フェリチタってそんなに邪魔だったの?」
「今ではカケラも無いが、神の加護はとても目障りだ。あれがある限り無敵の軍勢が存在し続けることになる。だから、人間達は潰したかったのだ。それを叶えるチャンスが来たわけだな」
「納得した。確かにダリアが関わってそうだ」
ビスカは謎がわかった気がしてスッキリした。
その様子を見てオスクリタは次にマキナに尋ねる。
「魔王マキナはどうだ?何かあるか?」
「確か魔王ルーチェに戦争を仕掛ける前にそれらしい人と話しました。今思えば彼女はエリカさんだった気がします。彼女に『同族を見返したいなら魔王になればいい』と言われました」
「それで戦争になったのか」
「そうです。1番楽な道を教えてもらったんです。ですが、今思えば無謀だとしか思えません。なんであんなことをしたのでしょう?」
「本当にエリカだったなら可能なことだ。話術で相手を操るのは奴の得意技だからな」
「そういえば、ラビアラさんはどうして元勇者に会えたんですか?」
マキナが急に話を振る。
急だったのにラビアラは焦らずに答える。
「ウチの知能が低い頃だからね。正しい記憶じゃないかも知れないけど、エリカっぽい人に『魔王にしてやる』と言われた気がする。それで、『元勇者を連れてきてやるから食え』って言われた気がするよ」
「だとすると、ダリア商会がうまく誘導してラビアラにぶつけたということだろう」
「そんなに力がある組織なの?」
「人をティーア大森林に送れるくらいには力がある。奴らなら魔族に人が殺されたことを隠すことも出来る。それなら魔王ラビアラの誕生を阻止されなかった説明になる」
「言ってもダリア商会って商人がメインだよね?それがどうしてそんなことするの?」
その話にデモニオが口を挟む。
「ダリア商会で考えずにエリカで考えるべきじゃないか?こっちで起きた問題もダリア商会の下っぱを切り捨ててやってたゼ。あいつらが進んで自分を犠牲にするとは思えねえ」
「それならさ。ウチらのところに自分で来たのはどうして?」
「この話には違いがあるゼ。魔王が誕生しそうなことにはエリカが動いて、時間稼ぎには下っぱを使ってるんだ!」
「それならビスカにはなんで近づかなかったの?」
「決まってるだろ!生まれてすぐに堕天するなんて誰も思わねえからだ!あいつもビスカが堕天使で魔王になるなんて思わななかったんだろ」
それなら理解できる。
他にもその法則に当てはめられるから。
ビスカが補足する。
「イニーツィオが魔王になる前にはエリカの元部下が来てた。それは確定してる。自爆された後の焼け焦げた破片からエリカの魔力が発見された。証拠として今も保管してる」
この発言で空気が変わった。
オスクリタは自分でも見つけられなかった明確な証拠を提示されて白くなってる。
他の魔王達はダリア商会とエリカへの不信感が募って怒りが沸々と湧き上がりつつあるようだ。
「ワタシも証拠を持っている。いや、ワタシが怒って波で飲み込んだ奴の遺体から回収したんだ。この妹が」
「そう!私が足の悪いお姉ちゃんの代わりに潜って探したらリヴァイアサンが預かっててからだんだよね!マジ助かった!」
「そいつが遺体のダリアに気づいて保管したそうだ。クロムが5年前にダリアの危険性を話したらしい。おかげでこれが手に入った。ついでにその話を聞いていた魚の記憶も付けよう」
マーレはウェルから商品を受け取ると乱暴にテーブルに置いた。
ボロボロのダリアの制服と記憶から取り出した録音記録だ。
どちらも有力な証拠となるだろう。
だが、まだ足りない。
「マーレさんが証拠を出すなら俺もだそう。俺の国で元ダリアの人間を捕らえて拷問させてもらった。証人になることも約束させたゼ!エリカが動かない限りは問題ない!」
「ちょっと待って!自爆されなかったの!?」
「気づいてすぐに魔法を解除した。神話級の魔法だったが、俺なら簡単に解けるゼ!本来の魔法は全て悪魔のものだ。解けない魔法なんて無いんだよ!」
あのデモニオがかっこよく見える。
実際イケメンなんだけど、悪魔らしい見た目のせいで悪人に見えていた。
それが今はただのイケメンに見える。
「なら、うちの証拠はデモニオに預けよう。そんで、残留する魔力が一致するか試して欲しい」
「分かったゼ。俺に任せとけ!」
「ついでに僕も手を貸しましょうか?」
急に魔王マギアが現れた。
しかも、魔王デモニオの真横に。
どういうことだ?
「勝手に来てんじゃねえよ!」
「いいじゃないですか。契約してる仲なんですから」
「だからって悪魔の道をたどって来る奴があるか!危ねえんだゾ!」
「何の問題もありませんよ。僕は魔法の天才なんですから」
「チッ!俺に使えない魔法を開発したからって偉そうにしやがって!」
「偉そうになんてしてませんよ。魔族なのに人間に歩み寄ってくれたあなたのおかげで魔王になれたんですからね。感謝して頭は下げても、上には絶対に立ちません」
「まあいいや。暇なら分析を手伝え。そういうのはお前の得意分野だろ?」
「えぇ、もちろんやらせてもらいます」
「てことなんで、ビスカの所持する証拠を渡してくれねえか?」
ビスカはそれを渡すためにヒスイを呼ぶ。
「ヒスイ。例のアレを持ってきなさい」
「すでにここに」
シュッとどこかから現れたヒスイは証拠品が入った小箱を差し出す。
ビスカはそれをヒスイの手から取り上げると魔力を流し込んで開けた。
中身はしっかりと焼け焦げた遺体の一部だ。
その灰を取り出して小さな袋に詰め直して渡す。
「これがその証拠だよ。後で取りに来て」
「分かりました。後で受け取らせていただきます」
魔王マギアはペコリと頭を下げた。
さて、これで一応出揃っただろう。
これ以上の重要な話は出ないと考えられる。
復帰したオスクリタが今日のことをまとめる。
「ダリア商会がゲスなのはこれで分かっただろう?今後は注意しながらエリカが何かをした証拠を見つけよう。今はダリア商会全体が悪いという証拠しかない。今後また何かあれば集まって話をしよう。では、解散!」
この後すぐに魔王達は帰った。
証拠を分散させる必要はあると思う。
だから、デモニオの所に2つもあるのは少し怖い。
もしもの時に警戒してビスカはエリカを見張ることにした。
ホノカをエリカ担当に任命して送り込む。
この世界の鬼なら万能だからどうにでもなるだろう。




