第56話 フィアンマバトル
今回はマキナと話し合ってドールと堕天使だけで戦うことになった。
こっそりと話し合ってケイトだけを例外で参加させることになっている。
最近のケイトは裏で鍛えて強くなってるらしい。
だから、期待して大将の役職を与えた。
今回は魔王達が指揮を取る気がない。
だから、ケイトに任せて魔王フィアンマと本気でやり合う。
偵察に送ったアリッサの情報ではフィアンマはこちらに少しずつ接近してるそうだ。
到着まで4時間を切った。
本来はシエルからアルマドラまで歩くと3日は掛かる。
それを魔族の足なら10時間に短縮できる。
ドールならそれをさらに短く出来てしまう。
さて、今すぐにでも行かないとシエルの近くでやり合うことになってしまうな。
ビスカは西の空き地に100万の堕天使軍と5万のドール軍を集めた。
そこで出陣前に士気を上げるための演説を行なう。
「皆、今回の戦争は我々の勝ちで終わると予想しているだろう。この人数差で負けたらダサいからな。でも、たった1人の魔王に壊滅させられる恐れがある。105万と1万だからって油断するな!やるなら徹底的に抑えろ!もしもの時はヒスイ達が控えてる!安心してぶつかっていけ!私達も居るから安心だ!」
「「おぉー!!!!」」
これだけで士気が上がった。
でも、ドール達は自分達の王から言葉を聞きたいらしい。
そういう目をしている。
マキナはしっかりと王として好かれてるみたいだ。
なら、安心して前に立たせられる。
ビスカはマキナにその場を譲った。
「ドールは無理しなさい!私達は彼女達と違って戦争の経験があります!私に操られていたとしても体はその経験を覚えているでしょう!だから、今度はちゃんとした戦争をしてやりましょう!不意打ちをした彼らを見返すのです!ドールを甘く見たことを後悔させましょう!」
「「イェス!!!!」」
ドール達はしっかりと動きを合わせて敬礼した。
なんて統率だ。
この短い間にマキナは魔王として十分以上にやっていたみたいだ。
こっちの方が勝てる気がしない。
鬼より強そうに見える。
でも、これが味方なら安心できる。
ビスカは早速出陣の指揮を取る。
「では、これより進軍を始める!堕天使軍は上空より仕掛けるぞ!アリッサを目指して進め!」
その次にマキナも指揮を取る。
「ドール軍は二手に分かれます!ドールは地上から移動してください!テクノは堕天使の後を追ってください!その後の指揮はシエルのケイトに任せます!」
「堕天使も聞け!私は魔王とやり合う!そうなれば指揮は取れない!だから、戦闘開始したら指揮をケイトに一任する!彼に従え!」
「「進軍開始!」」
号令と同時に軍はそれぞれの移動方法でフィアンマ軍を目指して進み始めた。
上から行く連中はアリッサとの合流を目指して進む。
地上から行く連中はフィアンマが見えるとこまで進む。
そこから先はケイトの腕の見せ所だ。
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1時間ほどで空から進んだ連中がアリッサとの合流を果たした。
ビスカは合流と同時にアリッサからすでに相手がこちらに気付いていることを報告した。
地上の連中が近くなったときに動きが変わったらしい。
これはまずいと思ったのでケイトに指示を出した。
早めに囲むように。
その陣形はすぐに完成した。
それどころか相手も進行進行してるので陣形を組んでる最中に罠にはまってくれた。
それじゃあ、始めようか!
魔王達は降りる前に指示を出す。
「堕天使軍!魔法攻撃用意!撃てぇ!」
「テクノ隊!地上戦開始!魔法を避けながら戦ってください!」
この2人の指示によって戦争が始まった。
地上でもケイトが指揮して陣形を小さくして一気に攻める。
その事態に魔王フィアンマは焦って指示が出せなかった。
ビスカとマキナは指示を出される前に地上に一気に降りて奇襲を仕掛ける。
剣のエンチャントをしたビスカと、腕を変形させて剣にしたマキナが斬りかかった。
その攻撃は素早く刀を抜いたフィアンマにあっさりと止められてしまった。
しかも、素の腕力は負けているので弾かれてしまった。
着地した2人は武器を構え直す。
その2人にフィアンマは言う。
「仲良しな2人で来るとは感心だな。話し合ってきたのか?早いじゃねぇか」
言ってる感じはいつも通りだ。
だが、顔は本当に余裕が無さそうだ。
ビスカは試しに聞いてみる。
「魔王フィアンマ。あんたは何に怯えてるんだ?」
見抜かれたことにフィアンマは人生で一番驚いた顔をした。
その顔をすぐに消して言う。
「何だっていいだろ。勝ったらそっちは捕虜を好きに出来るんだ。それで拷問でもすればいい」
この言い方が引っかかる。
まるで負けることが決まってるような、捕まることを望んでるような言い方だ。
それが引っかかるが、今は敵同士だからいつまでも話してるわけにはいかない。
攻撃を再開することにした。
「そうだね。勝った後に考えるよ。そのために、マキナは私に合わせて!」
「分かりました!」
そう言うと2人同時にスキルを発動した。
ビスカはエンチャントで肉体を強化して鬼と張り合える力を得た。
マキナは操り人形劇で鬼並の力を書き込んだ。
さぁ、これでやり合える。
そう思った次の瞬間にフィアンマが必殺技を使った。
その名も『灼熱炎焦拳』だ!
ノーモーションから繰り出されたそれは2人の間を300mに渡って焼き尽くした。
パンチから出た炎は多くのドールを蹴散らして、魔王達に衝撃を与えた。
「何だよ!これ!ドラゴン並みじゃんか!」
「油断はできません!私はドールを作りますから、その間の時間稼ぎを任せました!」
「チッ!任された!貧乏くじでもやってやる!」
そんなことを言ったら間にフィアンマが隙をついてビスカの頭を掴んだ。
そのまま300m先まで連れ去った。
マキナは連れて行かれるビスカに向けて叫ぶ。
「ビスカ!今助けます!」
「気にすんな!こっちでやっとく!」
これは仲間を助けろという意味だ。
それを察したマキナは親友を助けたい気持ちを抑えてドールの作成を始めた。
その背中を鬼が襲おうとするが、晩年のクロムレベルになったケイトによって倒された。
彼は魔王マキナの援護に回るようだ。
連れ去られる途中のビスカは全力でフィアンマの腕を掴んだ。
その腕に五属性の魔法を同時に発動しようとした。
それに気づいたフィアンマがビスカを投げ捨てた。
「やるな。水、氷、雷、風、金属の5つを使おうとしたな。さすがは堕天使だ」
「こんな物が効くと思ってない。やるなら水と炎で爆発とか、水と電気で感電とかする」
「なら、今は何をしようとしたんだ?」
「その腕を切り離してやろうかなって思ったんだよ!私にその危険な手で触れたからさぁ!」
魔王フィアンマは邪悪な顔をしてるビスカに恐怖を感じた。
そりゃそうだ。今のビスカは全力なら魔王の中で5番に強い。フィアンマじゃ少し届かないからだ。
その本気をまだ出してないが、ビスカはすでにキレて7割を出している。
今のこいつを捕まえるのは容易じゃない。
「今度は上手くやる!だから、避けんなよ!」
「受け止めてやる!」
「なら、死んどけ!」
ビスカは足にエンチャントをした。
属性付与、切れ味付与、斬撃付与、射撃付与、脚力付与、破壊付与、貫通付与、遅延付与、痛覚倍加付与、これだけでも十分すぎる。
それを4回連続で掛けた。
これはもはや足技じゃない。剣だ。
その足を全力で振り上げて斬撃を飛ばした。
魔王フィアンマはそれが危険だと気づいた。
それでもあんなことを言ったからには逃げられない。
だから、刀を捨てて両手に全力の炎を発生させた。
その超火力で化け物の斬撃に立ち向かう。
「受け止めてやらぁ!この程度で死ねるかぁ!」
魔王フィアンマは出来るだけ触れないようにして受け止めた。
だが、相手のパワーがデカすぎて止めきれない。
炎を分散させた足や背中から出せば勢いを落とせるだろう。
でも、それをすれば魔力が足りなくなる。
なら、やるべきことは1つ!
「止めきれねえなら、上に逃すまで!」
そう言って炎を利用して軌道を逸らした。
それによってビスカの攻撃は堕天使達の方に向かって飛んでいく。
「予想済み。もう一回やろっか」
ビスカはいつの間にか上空の攻撃を逸らした先に居た。
そこから何をする気なのかは予想しなくても分かる。
「ほら!もう一回遊ぼう!」
ビスカはもう片方の足に別のエンチャントを掛けて全力で蹴った。
その行動によってさっきより速くなった斬撃が帰ってくる。
今度は何をされるか分かってるので、魔王フィアンマは灼熱炎焦拳で応戦した。
「うおぉぉぉぉぉ!!!!!」
超火力で異次元の力に立ち向かう。
その光景は見てるだけならかっこいい。
でも、敵として見るなら余計な行動だ。
ビスカは瞬天で斬撃に近づいて蹴りで支えることにした。
「止められるならやって見ろぉ!魔王フィアンマぁ!」
「砕いてやるぅ!魔王ビスカぁ!」
2人は全力で力ぶつける。
どちらもパワーは全開だ。
だが、ビスカには他のエンチャントもある。
何もパワーだけが力じゃない。
ビスカは一瞬で500mも離れた。
そこから瞬天もエンチャントの速度を加えて蹴りを繰り出す。
それをエネルギーの塊である斬撃にぶつけて押す。
これによって一瞬でも魔王フィアンマが後ろに下がった。
つまり、彼のパワーを越したということだ。
「アッハ!あと何回かやれば倒せそう!」
「やらせるか!」
急に魔王フィアンマの火力が上がった。
それによって斬撃が砕かれてしまった。
それを間近で見させられたビスカは瞬時に避ける。
次の瞬間にドデカイ炎が空を貫いて明るく照らした。
「異常でしょ。ヴォルカナでもこんなの出せないぞ」
ビスカは驚いて空を見つめてしまった。
その間に魔王フィアンマがまた大技を使うために魔力を練っている。
完成したらもう一度あれが来る。
かなり危険な状況だ。
さて、どうしたものか。




