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第46話 魔王ラビアラ交遊と交友

 英雄王が来てから5時間後。

 魔王ラビアラが200人の配下を連れてこの国にやって来た。

 突然の訪問でビスカ達は出迎えられなかったが、本人は気にしないように話してくれる。


「のんびりしてしまったせいで出迎えられなかった。すまない」


「構わないよ!ウチらが勝手に来ただけだからな!」


 そう言ってから魔王ラビアラはチラッとイニーのことを見た。

 今は安定してここで暮らせてるようなのでホッとした。

 それからループのことを見る。

 自分と同じくらいの強さを得ていることを知って少しだけ慌てた様子を見せた。

 まぁ、今はそれより重要な用事があるから気にしないことにするようだ。


「それにしてもこれなら国と名乗っても問題ないね。こっちとは大違い」


「そういえば国を名乗ったって話を聞かないね。うちだってすぐに知られたのに」


 その話をしたことで魔王ラビアラの顔が曇った。

 配下の連中は魔王が乱心するんじゃないかと心配している。

 だが、その予想は外れてため息をついただけで終わった。

 魔王ラビアラは曇りの消えない顔で話す。


「こっちの現状は動物以上獣人以下って感じなんだよ。ウチも含めて文明レベルは最悪なんだ。だから、森の魔王達は認められないって言われてまだ国になってないんだよ」


「あー、確かに私でも認められないわ。ちゃんとしてたら私にその権利が出来たから使っても良かったんだけど」


「そんなー!ウチを助けてよー!」


 魔王ラビアラは完全に弱っている。

 そのせいで配下達が困るくらい素が出てしまっている。

 これを放置するよりも恩を売った方が良くね?

 てことで、今のビスカに出来る協力をすることにした。


「なら、私の国を見てく?ついでに魔都見学をしてみたら?」


「魔都見学?そういえば魔王ミューカスからそんな話来てたね」


「それを未熟な魔王とかがやるの。私は実験台なんだけど。成果は出てるよね?」


 この国の新しい住宅はテクノロジアの建築技術で出来ている。

 畑の野菜はアルマドラ特有の物で、街の隅に植えられた竹もアルマドラ産だ。

 それらを利用して国らしさを生み出している。

 この真似で出来た国家にすら魔王ラビアラは負けている。


 この成果を見れば現段階でもあれが有効であることは明らかだ。

 今すぐにでも魔王ラビアラにやらせるべきだ。

 だから、ビスカはもっと本気でおすすめする。


「魔王ラビアラ様もこれをやれば他国の技術を吸収できると思う。だから、最初にここを見ておけばいい。言ってしまえばここも魔王イニーツィオの居る魔都になるからね」


「なるほどねぇ。それならお言葉に甘えようかな」


「どうぞ。好きに見ていってください。それで、国として認められるようになった仲良くしましょう。うちとしても敵対は避けたいので」


「この恩をそれで返せるならいくらでも仲良くするよ!ウチは馬鹿にされてもいいけど、同族が馬鹿にされるのは我慢できないんだ。それが改善されたら返しきれない恩になるよ」


「全部返したければ一応神様に推薦して。私も魔王にしてもらえればそれで恩は返されたことになる。恩の大きさは同じくらいだと思うから」


「分かったよ。そうなるようにしっかりと勉強させてもらうよ。君の成長ぶりは期待以上だ。出来れば私と友人関係になってくれない?」


 これは願ってもない申し出だ。

 魔王と友人になれるということに大きな意味が生まれる。

 ラビアラ程度でも魔王としてかなりの実力と権力を持っている。

 それが横に居るとなればビスカの国は他国から襲われるリスクが極端に減る。

 イニーを利用しなくても安全に暮らせるなら最高の友人だ。


 それだけじゃない。

 自分が魔王になったときにこんな友人が居れば発言力が増す。

 そのついでとして先輩魔王達が手を出しにくくなるだろう。

 他にもメリットがたくさんある。


 でも、友人になるには理由も必要だ。

 その1番の理由は1人の魔族としてみれば魅力的な人だからだ。

 友達になるのに『友達になりたいから』以外の理由が必要のなのだろうか。

 そんなもの必要ない。


「あなたにやられたクロムは許さないかも知れない。でも、私は友達になりたい。だから、よろしく」


「こちらこそよろしく」


 今回は握手していないが、口で言っただけなのにつよい繋がりが生まれた。

 このキズナは縄のように切れづらいだろう。

 もうこの2人を引き離すことは叶わない。


 ビスカは友人としてラビアラと真剣に向き合うことにした。

 もうほとんど対等だし、別にいいでしょ。


「それじゃあ、早速友人として言わせてもらう。まずは服を着ろ」


「なんで着ないといけないの!」


「服は知能ある証拠みたいなものだ。元がただの魔獣だとしても人に近い見た目なら着るべきだ。そうしなければ永遠に人以下の扱いで馬鹿にされるだろうね」


「そうなのか!帰ったらすぐにでもクモの国に交渉しに行かないと!」


 とても明るくなったラビアラはあの魔王の技術を教えてもらう気でいる。

 ビスカもそれはいい判断と思っている。

 勉強したから知っているのだが、魔王アラーニャの国は布や生地が特産品なのだ。


 ビスカの場合はあの技術があっても活かせそうにない。

 だが、ラビアラの場合はヒツジの魔獣や森の虫などが居る。

 その力を借りれば糸はいくらでも用意できるだろう。


「それはいい考えだね。そことで技術を手に入れられたらこっちも手を貸せるよ。材料から服を作る技術はうちも手に入れてる。私なら無償で教えてやるよ」


「それはありがたい!あのビスカだから本当に頼りになるなって思う!」


 このウサギもかわいいかよ!マジ尊い!

 口では言えないけど、顔にはモロ出ている。

 それでも普通の笑みと捉えられた。

 相手が元獣で助かった。そうじゃなければ多分引かれてる。


 ビスカは煩悩を振り払って真面目に話を続ける。


「他にも色々教えるよ。なんなら魔獣にしか出来ないことも一緒に考えてあげる。国として貿易するなら特産品は必要になるよ」


「それってここにもあるの?」


「まだないよ。でも、他の国がやってないような研究や、いろんな物の加工品なんかを使うと思ってる。そういう考えもなかったでしょ」


「うっ…!」


 魔王ラビアラは図星を突かれて確実に威厳を失った。

 ここまでフレンドリーで弱点まで見せてくれちゃうと、もうあの時のような怖さは一切感じない。

 いや、これはビスカが成長した結果なのだろうか。

 堕天してから何をしても平気だとさえ思ってしまう。

 そのせいもあって魔王に対して丁寧に接することをやめてしまった。

 友人に対してならそれでも問題無いだろう。

 今回は友人のために心を鬼にしよう。


「国という形で仲間を守るならもっとしっかりしなよ。こんなんじゃ強くても国民がついて来ないんじゃない?」


「すでに不信感持たれてる…」


「その評価をひっくり返そう。私は友人のためなら前に出て守るくらいやるよ。だから、私を利用して立派な王様になりなさい。そしたら私としても胸を張れるからさ」


「そっか。諦めるのはまだ早いのか。そうだよね!ビスカの友人に恥じない王様になるよ!」


「そのために優秀な頭脳を使って学んで考えて国を立派にしなさい。その前に現状を把握しよう。ラビアラ、一緒に領地に行ってくれるよね?」


「分かった。その前に配下達を見学に使うから、準備が終わるまで待ってて」


「了解。こっちはラビアラが魔都見学のために来たことを伝えておくよ。それで、職人達に仕事場を見せるように言っておく」


「お願いね」


 こうして成り行きでラビアラと友人になってしまった。

 でも、そのおかげで楽しいことが増えた。

 自分の国もまだまだだけど、これからはもう一つの国と一緒に成長できるぞ。

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