表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/77

第30話 スライム魔王の力はすごい

 しばらく休んでビスカは整理ができた。

 だから、落ち着いた気持ちで魔王ミューカスと真面目な話をしようと思った。

 その時、タイミング悪くこの国のドールが悪い人間に襲われてるのが目に入った。

 ビスカがそれをじっと見ていると、急に魔王ミューカスが殺気が混ざった魔力を放った。

 それを受けた人間、5人はビビりながらも子供に見えるやつに負けるかって感じで向かって来た。


 ビスカは言われる前に飛んで離れる。

 それに従って魔獣と鬼も距離を取った。

 これで魔王が戦う舞台が整った。

 その前にゲスな人間が何かを言う。


「なんだこのガキ。これが魔王か?あっちの人形の方が強そうじゃねえか!」


 示された人形は震えている。ただのドールなのでマキナと違って雑魚だ。

 魔王ミューカスはそれより下に見られたことを気にしない。

 気にしたのはこの国に住む者を傷つけられたことだ。


「てめぇはスライムなんだろ?一丁前に殺気と魔力なんて出しやがって」


「それでビビるのは魔族だけだ!だが、俺らにとっても強さの基準になる。でもなぁ。お前みたいなガキなら怖れねえぜ!」


 そう言うと人間は大型ナイフを抜いた。

 そして、スライムの腕を両腕をサクサクと切り落とした。

 血は出ていない。それどころか悲鳴も無い。

 それを見て人間達はつまらなそうに舌打ちした。

 でも、魔王ミューカスはこれが狙いだった。


「はいはい!これで正当防衛成立!過剰防衛なんて無いからこの先は何したっていいんだよ!」


 そう言う魔王ミューカスの目は本気で殺す気になっていた。

 それを見て人間の1人がビビって引いた。

 それに気づいたおっさんが言う。


「こんなの怖がる必要ねえよ!どうせ何も出来な…」


 言ってる途中でおっさんは食われた。

 何に?スライムは腕の切れた人型のまま動いていない。

 じゃあ、何に食われた?

 それは魔王ミューカスを魔王にしたスキルだ。

完璧擬態(パーフェクトトランス)』という世界最高のスキルの一つで、擬態する相手の情報が揃っているとその相手に擬態してスキルまで奪える。

 そのスキルは他の魔王も恐れるほどの物だ。これは仕組みがバレると対策されやすい。だから、人間達には隠して来たのだ。

 そうすると、このようになるから。


「ひっ…!待てよ!なんでこんなのがここにいるんだよ!」


 怯える人間はあり得ない光景を目にした。

 目の前に居るのは伝説上の生き物だがすでに死亡しているはずなのだ。

 しかも、こんなに小さくはなかった。

 それでも存在感のある生き物たちを見て人間は確信した。


八頭蛇王(ヤマタノオロチ)火炎蜥蜴(サラマンダー)を操ってるのか…?」


 魔王ミューカスはその賢い発言に感心した。

 ほとんどの人間は危険がなくなれば死んだ魔族のことなんて忘れてしまう。

 それなのに彼だけが気付いたのだ。

 魔王ミューカスは死にゆく彼をもったいないと思った。

 でも、容赦しない!自分の腕を擬態させた二匹に食わせる!


「死んじゃう人が知る必用はない。でも、抗いなよ!私は食べた相手に擬態できるの!一部の擬態でも奪ったスキルを使えるからさ!食う価値を見せてよ!」


 そう言いながら魔王ミューカスは腕を再生させた。

 さらに絶望させたところでしばらく(もてあそ)ぶことにした。


 人間達はスキルや魔法を使って応戦する。

 だが、伝説の生き物たちは無効化して一方的に攻撃をぶつける。

 吹っ飛ばされた人達は思う。もっと勉強しとけば良かったと。

 まぁ、それでも勝つことは不可能なんだけど。


「うーん。全部持ってるなぁ。食べる必要ないけど、放っとくのもあれだし、飲むか!」


 そう決めた魔王ミューカスは二匹をスライムに戻して合体させた。

 そして、人間にとって一番見たくないものに姿を変えた。


「この子なら丸呑み出来るよね!だってみんな大っ嫌いなドラゴンだもんね!」


 それは見たことのないドラゴンだ。

 ヴォルカナとは別系統のドラゴンに見える。

 そいつはまるで自分で考えて動いてるかのように人間達を数秒の間に丸呑みした。

 この時、魔王ミューカスは目をつぶっていた。

 それでも勝ててしまうのだから魔王らしい魔王だ。


「ご馳走様。君らのデータは少しだけ使えそうだよ。だから、喜びなよ!君らの知識は死してミュー達の役に立つ!」


 これはおそらく演出だろう。

 まだ近くに居るドールに見せるためにやったに違いない。

 でも、これで安心してくれたみたいだ。しばらくは魔王ミューカスの人気がなくなることなど無いだろう。




 ドールはあの後すぐに魔王に感謝を伝えて帰ってしまった。

 その姿が見えなくなったところでビスカは魔王ミューカスのところに戻った。

 それからすぐに問い詰める。


「ちょっと!魔王ミューカス様!あれ何なんですか!」


「ミューのスキルのこと?」


「それです!切れた腕が腕が再生するのもヤバいですけど!落ちた腕が怪物になるなんてあり得ないでしょ!」


 もう興奮しすぎて何を言ってるか分からない。

 でも、魔王ミューカスは優しく答えてくれた。


「五本指に数えられる魔王ならこれが基本だよ。世界に100個しか存在しないスペシャルスキルを持ってないと厳しいね。その点をビスカは気にしなくていいよ!最強の10個に含まれる聖力付与(ホーリーエンチャント)を持ってるんだからね!」


 ここに来て初めて知った。

 最初から持っていた力がまさか最上位のスキルだったとは。

 あの神様はお気に入りに甘すぎない?


「ミューから見れば概念まで付与するビスカの方がおかしいよ?ミューは食べた物から力を取れるけど、そっちは全く違うからね。無いものを作れそうな力なんてぶっ壊れだよ」


「そんな私を食べれば同じことが出来るんでしょ?」


「まぁね」


 そう答えた時の魔王ミューカスは何だか怖かった。

 今のビスカじゃ戦闘になったら逃げることもできないだろう。

 おそらく天使も食われてるだろうから、瞬天のようなスキルを持ってる可能性だってある。

 それなら食われるのは確定だ。

 今まで以上に怒らせないようにしようと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ