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第28話 新しい仲間達と次の予定

 あれから3ヶ月が経過した。

 どっかの国で騒ぎあったらしいけど、そんなことを気にせずに街を建設した。

 今回は囲いとか作らずにオープンな感じで行くことになった。

 閉鎖的にするよりは印象がいいだろうというビスカの判断だ。


 新しい街の名前はまだ決まっていない。

 前のリーダーだったクロムの意志を引き継ぐと変な名前になりそうだからだ。

 しばらくは何も無いだろうからこのままで行くことになった。

 まぁ、人魚の魔王が来たりダリア商会という連中が挨拶に来たりと忙しかったけど、これでしばらくはゆっくり出来そうだ。




 ビスカは鬼の協力を得て完成させた和風の屋敷に住んでいる。

 彼らは魔王フィアンマの命令でビスカの下につくことになったらしい。

 魔獣と同じだ。志願したところまで同じらしい。

 自分で主人を選べるなんて彼らは幸せ者だ。


 そんな彼らは街が完成してすぐにビスカの前に(ひざまず)いた。

 今ちょうど縁側に座るビスカの目の前にその光景が広がっている。

 ひとまず彼らの話を聞くことにした。


「君らがここで働くことは認めたはずだけど。他に何かあるの?」


「魔獣達から聞きました。彼女達は正式に仕えてもいいと言われたと。我々はそんなことを言われておりません!我々10名は不満なのです!」


 ああ、なるほど。

 確かにそんなこと言った気がする。

 彼らには建築に力を貸してほしいと言っただけだ。あと、遠くからの材料運搬。

 そういえば彼らの気持ちをその辺にポイ捨てしてた気がする。


 ビスカはこの状況は自分のせいだなと認めた。

 だから、諦めて魔獣の時と同じようなことを言うことにした。


「うーん。そっかぁ。じゃあ、私を認めてくれたらついて来なよ。でも、安易な気持ちはやめてよ。ただでさえ色々不足してるんだからね」


「承知いたしました!では、今一度あなた様を品定めさせていただきます!」


「良い答えを出しなよ」


 彼らは頭を下げて持ち場に戻っていった。

 それからすぐに入れ違いでマキナがやって来た。


「何カアッタンデスカ?」


「んにゃ。私を認めたらついてきなさいって話をしただけだよ」


「ソウデスカ。平和デスネ」


「平和が一番さ。でも、少しは何か起こらないと腕がなまりそうだけどね」


 しばらくそうしてのんびりしていると、今度は魔獣達がやって来た。

 その顔は覚悟が決まったという感じだ。

 それ見てマキナが気を利かせようとする。


「ビスカ、私ハ離レテイマショウカ?」


「いや、一緒に見ておいて。親友としてさ」


 そう言われたからマキナは親友としてそばで見届けることにした。

 当の本人であるビスカは縁側から立ち上がって彼女達に近づく。

 すると、彼女達はこの街の(あるじ)(ひざまず)いて見せた。


「で、答えは?」


「我々はビスカ様について行くことに決めました」


「その理由を聞いても?」


 そう聞かれて魔獣達は想定外だという様子を見せた。

 しかし、先頭に立っているメス狼だけは違うようだ。


「ビスカ様は他の魔王と違うタイプのお方です。我らの魔王、ラビアラ様は典型的な魔王です。上に立って下にいる者達に力を見せつけました」


「私がそれとは違うと?」


「そうです。ビスカ様は力で従えていません。今では人も魔族もビスカ様の魅力に()かれてついて行っています。我々も魅力的なビスカ様の下で正式に働かせていただきたく思います」


 その理由をよく理解してビスカは判断を下す。


「では、許可する。でも、私はまだ配下とか部下とかいらないから、仲間という形でなら許すよ」


「ビスカ様の思いのままに」


 こうしてラビアラの配下達が正式に加入した。

 メス狼はこれを絶好の機会と見て新たな主人に早速頼んでみる。


「早速申し訳ないのですが、我々の頼みを聞いてもらえませんか?我々にとって重要なことなのですが」


「ん?何の話?聞いてあげるから言いなさい」


「では、我々に名前をいただけないでしょうか」


 そう言われてビスカは一瞬頭の中が疑問で埋まった。

 でも、すぐに思い出した。

 誰かが付けなければこの世界では一生名無しになる。

 元々話せない魔獣だったから彼女らにそれがあるはず無いのだ。

 それに気づいてビスカは魔獣って不便だなと思った。

 でも、この状況でつけられるのは自分だけだろう。仕方なく付けてやることにした。


「良いけど文句言わないでよ?」


「分かっております。我々5名は名をいただけるだけで光栄に思います」


「ホントかなぁ?ま、良いけどさ」


 名前を考えることになったビスカはしばらく黙って頭を働かせる。

 前世でもこんなことしなかった。

 今こうしていると親って苦労して考えてるんだなとしみじみ思う。


 さて、ここにいるのは狼、鹿、コウモリ、猫、(いのしし)の5体だ。

 それぞれに名前をつけるとなるとそれなりに面倒だ。

 でも、待ってるからすぐに決めるべきだろう。

 そういえば、地球にいた頃たくさん調べたな。日本語のあれこれを外国でなんて言うかとか。


 そう考えていると適当だけど思いついた。

 それを一人一人に与える。


「狼はループ。鹿はシエルボ。コウモリはムルシエ。猫はガト。猪はイーバ。で、どうかな?」


 魔獣達は最初無反応だったが、しばらくして嬉しそうに笑み浮かべた。


「ビスカ様!ありがたく頂戴します!」


 狼がそう言うと5人の肉体が少し輝いた。

 そして、ラビアラと同じくらいに毛が減った。

 6割人間といった姿でループ達は深く頭を下げる。


「さぁ、もう行きなさい。役割が決まったら伝えるから、それまでは他の連中と仲良く働きなさい」


「かしこまりました。それを最初の命令と思ってしっかりと遂行いたします」


 ループがしっかりと応えて立ち上がった。

 それから早歩きで敷地の外に向かう。

 その背後を部下達がついて行く。


 これで今日はもうやることがないだろう。

 そう思った途端に嫌なものを思い出した。

 ビスカはマキナを無視して縁側から中に入る。

 すぐそこにあるタンスを開くと厳重に封印させれた箱を取り出した。

 それを覗き見しているマキナの前で開く。


「ソレハ何デスカ?」


「招待状だよ。忘れててそのまま無視した。魔王様からの招待状」


 中に入っている13通全てを取り出しながらそう言った。

 13通……現在の魔王の総数と同じだ。

 つまり、全魔王から遊びに来いと言われていたのだ。

 それを無視してよく無事だな!

 それよりも何でフラグを折れたの?


 変な疑問が浮かんだが考えても無駄だと思って無視した。

 その代わりに今更ながら1つの招待状を使おうと思う。

 利用させていただくのはスライムだ。


「悪イ顔シテマスヨ」


「おっと!楽しみすぎて顔に出ちゃった!」


 マキナはそれで誤魔化されない。

 でも、今回は追求しないでいてくれるようだ。


「アナタノスルコトダカラ何モ言イマセン。デモ、気ヲツケテクダサイネ。魔王ミューカスハ4番目ニ強イ魔王デス。機嫌ヲ損ネレバ…」


「平気だって!私は瞬間的ならどの魔王よりも速いんだから」


 それって逃げる前提じゃね?

 ビスカは自分で言いながらそう思った。


 マキナはそれでどうにかなると思っていない。

 あの魔王は本当に異次元な強さなのだ。

 それを舐めているビスカには一度痛い目にあってもらうことにした。


「警告ハシマシタヨ」


 ビスカはそれを聞かずに残りの招待状を箱に戻して厳重に封印する。

 この封印を解けるのは悪魔か魔王だけだ。

 解除方法を知っていればビスカのように開けられるが、そうでなければ破壊するしかない。

 そんな封印を施した箱を元の場所に戻した。


 それからケイト達に明日出かけることを伝えに行った。

 マキナは心配でビスカの後を追った。

 この時ビスカは何かの魔力を微かに感じ取った。

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