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第27話 ダリア商会

ようやくもう一つのメイン要素を出せました。

楽しんでいってください。



【農業国レギュウム】の居酒屋。

 この世界に元々なかった文化に一頭の竜が触れに来た。

 その竜とは、あの火災竜ヴォルカナ。

 真っ赤なドレスを身に(まと)った女性の姿で飲みに来た。

 その見た目は若く見える。胸も小さいし。

 でも、この国で力を持った魔族が簡単に飲みに来ることを許した。

 見た目だけなら酒なんてまだ少し早いように見えるが、そいつには本体までお見通しらしい。


 ヴォルカナはビスカが何を気にしたのかを考えた。

 何故あのようなことを聞いたのか。

 それを知ることでヴォルカナにどんな影響があるかは分からない。

 でも、ヴォルカナの趣味は相手の嫌がることをすることだ。

 だから、その魔族に会いに来た。


「日が暮れる前から飲んでいるとはな。暇なのか?」


「あなたに言われたくありませんね。ヴォルさん」


 ヴォルカナは一番奥の席に座る魔族の女の子と向き合った。

 相手の魔族も若く見える。でも、魔族は歳を取るのが遅いから実際はもっと上かもしれない。

 その魔族が自分を忘れていないことにホッとした。

 これなら話せると思ってヴォルカナは対面の席に座った。

 そうしてる間に魔族は店員を呼んだ。


「ヴォルさんも飲みます?お酒」


「飲む。貴様は趣味がいいからな。我に合いそうなのを前みたいに選んでくれ」


「じゃあ、ビールかな。服装的にはワインだけど。ここ居酒屋だし」


 形を気にした魔族は店に合わせてビールを6杯頼んだ。

 竜種ならそれくらい飲めるが、1杯は魔族が自分で飲むために頼んだ。

 店員が注文を受けて去ったのを見てからヴォルカナは魔族に話しかけようとした。

 だが、口を開こうとしたところで人差し指を当てられてしまった。


「ここでは仕事の話は無しですよ。それ以外なら話せる範囲で話します」


 ヴォルカナは(うなず)いた。

 それを見ても魔族はしばらくじっと目を見つめた。

 その間ヴォルカナの目線はどこにも動かなかった。

 それで信用してくれたらしくニコッと笑ってから指を離してくれた。


「それで?ヴォルカ…ヴォルさんがまた来るなんて、どうしたんですか?」


 魔族は一瞬間違えそうになった。


 この世界では竜種の上位にいる連中は恐れられている。

 だから、そいつらには災害を名前に付けて呼んでいる。

 それが【火災竜】ということだ。

 そういう名を持ってる竜は限られる。

 間違っても街中でその名前を口に出すことは許されない。

 もし、厄災級の竜が来てるなんて知れたら即避難になってしまう。

 それはこの魔族にとって最悪のシナリオなのだ。

 だから、わざわざ別の呼び方をしている。


「今日は聞きたいことがあってな」


「何でしょうか?一応聞きますよ」


「なぜ我にあそこの封印が解けることを教えた?いや、違うな。我を利用してあの天使に会わせたのか?」


 睨むようにしてそう尋ねた。

 そんなことを聞かれて魔族は意外そうな顔をした。


「私がわざと会わせたというのですか。シエラ・ビスカさんにあなたをぶつけさせて私に何の利益があるんです?」


「それは分からぬ。だが、将来的に見れば国が一つ増える前に潰したいと思ったのではないか?実際にスライムとクモがほぼ同時に国を(おこ)したことで損害が出たのであろう?」


「確かにそうですね。ですが、私はダリア商会を生み出したネゴシオ・エリカです!500年を生きる私は十分に経験を積みました!もうあんなことにはなりません!」


 ダリア商会のエリカは感情が(たか)りすぎて魔力が地味に溢れた。

 その魔力は1500年を生きる竜を(うな)らせた。

 それ程までに純度の高い魔力ということだ。

 純度が高いということはかなりの修行を重ねて(にご)りを消しているということだ。

 ここまでの純度は竜にも出せない。つまり、彼女はその一点だけヴォルカナを確実に超えている。


 ヴォルカナはもう少し見ていたいと思った。

 しかし、純度の高い魔力はほんの少しだけでもとてつもない圧力を持つ。

 そんな物を人間に浴びせ続けたら体調を崩してしまう。

 だから、ヴォルカナはオブラートなんて無視して注意する。


「それは分かった。だから抑えろ。魔王以上の魔力が溢れてるぞ」


「はっ!」


 言われて気づいたエリカはすぐに魔力を完全に抑えた。

 全く溢れさせないのもすごい技術だ。

 それに関しては誰にも出来ない。人間も魔族も99パーセントまでは抑えられるがそれ以上は厳しい。

 それが出来る彼女をただ社長にしておくのはもったいない。

 でも、ヴォルカナにそんなことを言う資格はない。


「ありがとうございます。あと少しでまた叱られるところでした」


「よくやるのか?」


「結構やってしまいますね。イライラしたりすると集中力なんて無くなりますから」


 このタイミングでビールが到着した。

 1杯はエリカが受け取って、残りはヴォルカナの前にも並べられた。

 それを飲めば酒に弱いヴォルカナはすぐに酔うだろう。

 だから、重要なことを聞けるまで我慢することにした。


「さて、話の軌道(きどう)を修正する。貴様はどこで情報を手に入れたんだ?ここに来る前に調べたが、10日前はまだそう言う話し合いをしていなかったそうだぞ?」


「仕事柄わかっちゃうんですよ。魔王が生まれたとなると何が起こるか予想できちゃいました。あなたにはそういう『ウワサ』として教えたはずですよ」


「むっ…確かにそうだな」


「それに、私はいつ封印が解けるかなんて言ってません。解けるとは言ってもそれがいつになるかは不明という形で提供したはずですよ」


「そ、そうであったな」


「つまり、私はわざとやったんじゃありません。何か企んでるみたいに言われると困ります。損害が出たらあなたに賠償してもらいますよ」


 そこまで言われてヴォルカナは黙ってしまった。

 ヴォルカナはお金事情に(うと)いが、自分のせいで王に迷惑がかかるのは分かった。

 だから、黙って『やめてください』アピールをした。

 それに呆れたエリカは財布から金を取り出してテーブルに置いた。

 それから先を立つ。


「お釣りはいりませんから。あと、私の分の酒も飲んでいいですよ。そういう気分じゃ無くなったので」


 そう言い残してエリカはスタスタと出て行った。

 残されたヴォルカナはジャッキを握るとグイッと一気にいった。

 その勢いのまま6杯を飲み干した。




 外に出たエリカは待たせていた部下達と合流した。

 これからダリア商会に戻るつもりだ。

 その前に部下の男性がヴォルカナについて尋ねる。


「ボス。あの竜は何のためにこの国へ?」


「誰の影響か知らないけどさ。私のことを疑ってるみたい」


「まさか!これまでの全てを!」


 それで察する人は、この国には居ないだろう。

 しかし、もしもがあったらいけない。

 だからエリカはその男を睨みつけた。


「変なことは言わないで。あの竜が聞いてなくても他が聞いてるかも知れないでしょ。最近は魔王の動きが活発なんだから」


「すいません…」


 男は叱られて落ち込んでしまった。

 部下のそんな姿を見たくないエリカはため息をついてから応えてあげることにした。


「あいつはそこまで知らないみたいよ。気になったのは自分を焚きつけてあそこに向かわせたことだけみたい」


「つまり、他は…」


「まだ平気みたい」


「そりゃ良かった。ですけど、これからはしばらく動かない方が…」


 そんな弱気な態度にエリカは呆れた。


「馬鹿言うんじゃないよ!商売の手を広げるために色々やってるんだ!もう止まらないよ!」


「すいません!でも、獣は意味がなかったんじゃ…」


「あったよ。雛鳥(ひなどり)は獣のお陰で飛べるようになった。まぁ、あそこが滅びたのは大損害なんだけどね」


「そうっすよね」


「でも、お陰で魔王を増やす策を早く使えた。あの雛鳥にはこれからも働いてもらわないと」


 そう言ったところでエリカは魔族の気配を感じ取った。

 だから、ピンクの髪を揺らしながら歩き始めた。

 部下達は黙ってその後をついて行く。


 隠れて見ていたのは魔王ウェルの配下だ。

 その人魚は人間の姿で跡をつける。

 しばらくして曲がり角を左に曲がったので追いかけると、彼女達の姿はどこにも無かった。

 だが、人魚の目は背中にあったダリアの花を覚えている。

 それさえ報告できれば…!

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