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第23話 魔王ラビアラ

 魔王達が来てから3日後。

 魔王ラビアラは隠れ家の洞窟で頭を抱えていた。


「早い…早すぎる…こんなに早く知らせが来るなんて…」


 その様子を心配に思った熊の魔獣が尋ねる。


「あの、ラビアラ様、どうなさいました?」


「どうもこうもない!魔王相手に話が簡単に片付くのはおかしいの!ウチは魔王の説得となればギリギリまでかかると思ってた…それが3日って…早すぎる!」


「それは、元勇者が原因では?」


 荒れ始めた魔王に抑えようと思って熊がそう言った。

 すると荒れていた魔力が静まって冷静になった。


「それはない。あの天使はそういう奴じゃないから」


「またそれですか。スキルでもないのなら本当にどうやって見透かしてるんですか?」


「簡単なことだよ。目を見れば分かる」


 魔王はここでは集中にて考えられないと思った。

 なので、その言葉を残して奥へと向かった。


 この魔王がペタペタと歩いている洞窟はあまり整備させていない。

 松明(たいまつ)もほとんどない。

 当然だ。人型に成長した魔獣は最近まで魔王ラビアラしか居なかった。

 この2日前に魔王の配下になった者達を成長させたのだ。


 魔王となったラビアラの血は魔獣にとって人間100人分の力を持っていた。

 それを配下になった魔獣の中でも信頼できる100体に与えたのだ。

 それによって急成長して上位形態が爆増したわけだ。


 彼女はそのトップとして時には非常な判断を下す。

 こんな狭い所に万を越える魔獣を受け入れられるか?

 たった1000体の配下でも(えさ)を確保できるのか?

 無理だった。すぐにそのことを伝えられて彼女は決断した。

 弱者の犠牲を持って強者を生かすことを選んだのだ。

 今でも後悔している。自分が魔王にならなければ仲間を…追い出して…命を奪わなくて済んだのではないかと。


「あの天使が早く協力を得られたキッカケはあれかもね。でも、()が強い魔王が弱者に簡単に力は貸さないだろうね。押し付け合いをするか奪い合いするかだよ。どちらでもハズレを引くしかない。そうならなかったのも納得がいかない」


 途中で考えを漏らした。

 口から出てしまうほどに困惑してるのかもしれない。

 その目は深い闇を覗いている。


 その目に光が映った。

 森の中で偶然見つけた広い洞窟は、一番奥の天井が抜けていた。

 お陰で日中はそこから洞窟に光が差し込む。

 深い洞窟で唯一日が差すここは魔王のために与えられた。

 何もなければ誰も近寄らない。

 ここでなら集中できるだろう。


 配下から献上された手作りのソファーもどきに腰を沈めた。

 そこから自然が見える上を向く。

 そのまま思考を巡らせる。


「もしかしたら天使は頭の回りが早いのかもしれない。だとすれば説明ができる。魔王は立ち場を重視する。その場で誰が上かを決定づければ話を通しやすくなる」


 実際にそうなった。ビスカがわざと雰囲気を作って魔王達に立ち場が逆転したように錯覚させたのだ。

 それによって好き勝手に意見を通してしまった。

 しかし、魔王ラビアラと違って特徴は知らなかった。偶然にその手が通じただけだ。


「そういえば、あの天使は幸運に愛されてそうだったなぁ。もしかしたら転生者で神様の加護をもらってるとか。流石にないか」


 彼女はあははっと笑った。

 それからもう一度考える。


 彼女の頭脳を実現したスキル『先読者(ヨムモノ)』は実際に起こる未来を1年先まで知ることが出来る。

 しかし、デメリットとして未来を見たことを自覚できない。

 見透かしたように話せるのは実際に見ているからだ。

 だが、それを自覚できないから本人も他人も『何故か見透かされた』という風に感じるのだ。

 そのスキルでまた未来を覗いた。


「あり得ないとは思うけど異世界から来てるのかも。それなら普通じゃないのを説明が出来る。初めって蹴ったときのことを思い出すと違和感を感じるんだよね。なんで生まれたてで装備が揃ってたの?なんで本能的に魔力防御をしなかったの?」


 すでに答えにたどり着いているが、その要素を繋ぎきれていない。

 その情報を手元に置けても、個別のものとして理解してるから一緒にできないのだ。

 あのスキルで見た情報はお菓子のように個別包装されている。それを一纏(ひとまと)めに出来ないとなると、一生気づけない可能性もある。

 そのデメリットもあって先読者(ヨムモノ)は有能なスキルという評価を受けない。


 そのスキルを魔王ラビアラは使いこなしている。

 それもあって魔王に選ばれたのだ。

 しばらく思考を適当に巡らせていると、偶然に頭の中の情報が絡み合った。

 意図的でなければ繋がることもあるらしい。


「あー、そっかぁ。そんなこともあり得るんだ。異世界転生して当たりを引きまくってるんだね。なら、神の加護の内容は《神の幸福》か。それに街の《神の命綱》を追加してる。なら、余計に分からない。1ヶ月経ってもこの世界の戦い方をしないのはなんで?」


 そこまでたどり着いて魔王ラビアラは限界になった。

 その頭脳もスキルもお手上げと言ってるのだ。

 だから、ひどい頭痛が起きて考えるをやめさせようとする。


「痛っ!」


 ひどい頭痛に襲われた魔王ラビアラは思わずうずくまってしまった。

 そのまま頭を押さえて呟く。


「なるほどね。情報不足か。仕方ないね。今は休んで一週間後に備えよう。天使も参加が決まったし」


 そう言ってからスキルを停止させた。

 そうすることで頭痛から解放された。

 痛みが引くと急な眠気に襲われてソファーに横になった。

 そのまま寝てしまった。

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