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第14話 転生天使VS機械人形 展開

 先に仕掛けてきたのはマキナだ。

 12本の手を巧みに操ってビスカを十二方向から殴ろうとする。


 ヒュンヒュンヒュンッ!


 その攻撃素早く避けた。

 まずは様子見だ。相手の速度が分からなければ瞬天を使った時に合わせられないかもしれない。

 だから、今は避けて速度をチェックする。


「怒ラセルノガ上手ソウデスネ」


 ちょこまか逃げ回るビスカにイライラしてるようだ。

 普段のように当たらないからすぐにイライラしてしまったらしい。

 でも、それはビスカも同じだ。瞬天について来れそうな相手は初めてだから困っている。


 ビュオウッ!


 そんな感じな音が聞こえた気がした。

 それは顔面の横を手が通った時にした。

 これはまずいかもと思った。なので、目と翼に少しだけ追加のエンチャントをした。

 これで対応できるようになった。

 だから、ガキンッ!という金属音をさせながら1本目の腕を正面で相手した。

 しかし、傷も付かずに逃げられてしまった。


「こっちこそイライラするよ。本当にまた倒れるくらいしないと勝てないかもだからね」


 そう言ってる間にまた十二方向から狙ってくる。

 今度は魔力の剣にエンチャントを追加して相手することにした。


 元々この剣にはエンチャントがされている。魔力を剣にするのは専門魔法じゃないとかなり難しいのだ。

 硬化、攻撃力、防御力、切れ味、変形、この5つでもイメージがないと剣に出来ない。

 それだけで剣にするのも大変なのに、ビスカは全属性耐性と斬撃を追加した。これのせいで剣は一瞬崩れそうになった。


 でも、これを追加したことで今度は切れそうな気がする。

 だから、11本は避けて真正面の1本だけに両手の刃をぶつけた。


「ハッ?」


 マキナは困惑の声を漏らす。

 その声が出るのと同時くらいに真っ二つに切れた手が地面に落ちた。

 それを見届けたビスカは誇らしげに笑みを浮かべる。


「ヤハリ予想外ノ事態ハ恐ロシイデスネ。マサカ、魔王デモ無イアナタニ切ラレルト思イマセンデシタ」


「私の聖力付与(ホーリーエンチャント)は特殊だからね。本来付与できない概念も付与出来ちゃう。これだからよく分からない物できたあんたにも負ける気がしないの!」


 このセリフにマキナはムカついたようだ。

 今度は操り人形劇(パペットロード)で飛べる人形達を操って向かわせてきた。

 それに紛れ込ませるように11本の手も向かってくる。


 少し前のビスカならその他を斬るのに躊躇(ためら)ったかもしれない。

 しかし、もうこの世界に慣れてしまった。だから、キレてなくても相手をやってしまうことに抵抗はない。


 スパッ!スパパパパッ!


 瞬天を使って素早く100体のドールを斬り伏せた。

 視界が開けた。すぐに2本の手が見えたので構え直して両手で切りに向かう。


 ザンッ!


 本当はもっと良い音をさせて切れている。

 さて、今度も真っ二つにされて落ちていく。残りの手は切られる前にマキナの近くに避難する。

 今追ったら本体に何かされただろう。よく動かなかったと自分を褒める。


「ココマデヤリマスカ。コレハ計算ヲ間違エマシタネ。一番ノ脅威ヲアナタニ変更シテアゲマス」


「それは光栄だね。強者に認められるのは悪い気分じゃない」


 と言ってる間に飛べるドール達が下から襲ってきた。

 しかし、瞬天を持つビスカは反応速度が落ちない限り、その程度の攻撃は当たらない。

 だが、上昇して避けるなら予想されてやられても仕方ない。

 逃げた先に向かってきていた1本の手がビスカの脚を殴った。


「痛っ!」


 思わず声を漏らしてしまった。

 しかも、反応が遅れた。一瞬の隙に9本の手がビスカを囲む。


「コレヲ防ゲマスカ?」


 ニヤリと笑ったマキナはそのままやれば終わると思ってる。

 でも、空中戦をしてるビスカに脚はほとんど関係ない。

 だから、向かって来た手を避けながら4本同時に切り伏せた。

 これはかなりの無茶だったようで、右手の剣がフッと電気でも消すように消えてしまった。


 それをマキナは見過ごさない。

 また飛べるドール達を操って(おとり)に使う。その後にもう一度手で狙う。

 今度はさすがにあのビスカでも命に危機を感じた。

 だが、近くに強力な魔力を感じた。ピンチになるまで観てたようだ。

 観戦してんじゃねえよ!と言いたいのを抑えて助けを求める。


「はっ!私だけで戦争来てるんじゃ無いよ!だから、これは任せた!」


 その次の瞬間に魔王ルーチェがサッと間に入った。

 それから自分の手に息を吹きかけて何かを飛ばす。

 このスキル名は『菌類支配者(バイオコントロール)』と言う。


 それに触れてしまったドール達は叫び声も上げられずに一瞬で消えてしまった。

 そんな気がしていたマキナは残り5本の手を自分の元に戻していた。

 察しのいい奴だ。


「魔王!ナンテコトヲ!楽シク戦ッテイルノヲ邪魔スルナンテ」


「あら、何を言ってるんでしょうか。ここは戦場ですよ。一対一の戦闘を楽しむ場ではありません。横槍の一つくらい当然と思いなさい!」


「グッ!」


 魔王はマキナにぐうの音も出ないほどの論破をした。と思う。

 実際にここは命のやり取りする戦場だ。お互いに遊びすぎた。

 だから、ビスカも静かに反省して出し惜しみせずに消えた剣を再展開する。

 本当は魔力を残しておきたかったのだが、魔王が観てるなら出し惜しみしてられない。


 マキナもそれを見て出し惜しみをやめた。

 本気は9割でも本気と言える。だから、10割は本気中の本気ということになる。

 マキナも本気中の本気を出して隠しているAランクドール達に命令を出した。

 それが飛んでマキナの元に集結した。


 これでお互いに今出せる本気を出したことになる。

 ここからが本番だ。


「それじゃあ、魔王抜きでやり合おうか!」


「ソウシマショウ!アナタト戦エルナラ本気デモ何デモ出シテヤリマス!」


 お互いに魔力をバチバチのぶつけながら睨み合う。

 その2人の顔はまだ楽しんでるって感じを隠せていない。

 でも、今度はやる気があるのが見て分かるので魔王は少し距離を取ることにした。

 その魔王の距離が2人の射程距離からかなり離れた瞬間に同時に動いた。


 ビスカは剣に追加した射撃付与で斬撃を飛ばした。

 それと同じタイミングでマキナは自分と同じ多彩人形(テクノドール)10体を突撃させた。


 バチンッ!


 1体のテクノドールが片手で斬撃を弾いた。

 そのまま突っ込んでくる。

 これを好機と見たビスカは足にも剣を作るエンチャントをして四刀流で迎え撃つ。


「これでも喰らって壊れろォォォォォォォォ!」


 空中で身動きが取れすぎるビスカは踊るように4本の軌跡で敵に傷をつける。

 しかし、傷以上のダメージが入らない。おそらくは操り人形劇(パペットロード)で強化されているのだろう。


 ビスカの攻撃で切れなかったのを見てマキナはまたニヤニヤしている。

 それが一瞬でも視界に入るとビスカはムカついてしまった。

 そのせいで力が入り過ぎてしまう。

 でも、そのおかげでテクノドールの一体が腰から切り離された。


「そのムカつく顔やめろ!無駄に腕に力入るから!」


「文句!?コッチノ奴ヲ切ッテオキナガラ文句デスカ!勝テタノニ文句言ワナイデクダサイ!デナイト、ヤラレマスヨ!」


 このやり取りの間にマキナは体勢を立て直していた。

 傷を負わされて離れていたテクノドール達が戻って来たのだ。

 しかも、背後から襲おうとしている。


 ビスカは気づいてすぐにガードしようと思うが間に合いそうにない。

 やばい!と思ってる間に9体のテクノドールが腕を槍の形状に変形させて刺した。


 いや、刺さっていない。刺したと思った腕はバラバラと砕け散っている。

 マキナとテクノドール達が驚いていると、ビスカが余裕を持って教えてくれた。


「硬化のエンチャントを自分にしたんだよ。前みたいに破壊とか付与してないから倒れないよ。今回は魔力系も影響が出ないように工夫してるから。その程度で私は倒せない!」


 不気味な雰囲気をこの時ビスカは放ち始めた。

 それにマキナもゾッとして腕を(さす)る。

 金属の腕だから鳥肌は立たないが、産まれて初めて大ダメージを受ける予感がした。

 だから、マキナはさらに初めてを重ねることにした。負けないために。

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