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第11話 何を勝手に決めてるの?

 あれからすぐに家に移動してビスカ、妖精、リーダー、ケイトの4人だけで作戦会議をすることになった。

 一階のテーブルにあの辺の地図を置いて囲んでいる。

 作戦会議の準備ができたところでビスカは思い出した。


「そういえば、妖精さんの名前を聞いてなかったね」


「そうでしたね。では、改めまして」


 そう言うと妖精はお上品にご挨拶する。


「初めまして。私は妖精国家ルミエラの警備隊長を務めているハルリエ・マーチです。今後ともよろしくお願いします」


「私はシエラ・ビスカよ。そこの森で産まれた天使で、色々あってここに住んでるわ」


「僕はケイトだ。それ以上は話したくない」


「わしは元勇者のテイムズ・クロムじゃ。よろしくな。妖精のお嬢ちゃん」


「はい。よろしくお願いします」


 流れで挨拶を終えたのでビスカは早速作戦会議を始める。


「それじゃあ、まずは少し前の戦況がどうなってたのか話してくれる?マーチ」


「宣戦布告はあちらが私の部下を倒したことで行われました。今から3日前に戦争は始まり、魔王様が先制攻撃で1万体のドールを処理しました。ここに来る前の戦況はかなり悪かったです。減らしても減らしても10万のドールが減り切らないのです。それなのに5万もいた妖精は現在3万しか戦えません」


「それはまずいね。たった100人が加わっても変わらないかも知れないね」


 その言葉をリーダーが訂正する。


「変わると思うぞ。こちらは平均Bランクじゃ。それに対してドールは平均Cランクじゃ。量より質と考えるなら役に立つじゃろう」


「なるほど。なら、相手を掻き乱せるかも知れない」


「あの、ビスカさんとクロムさんは最前に行かれるつもりなのですか」


 急にマーチが変なことを聞いたことで2人は顔を見合わせてしまった。

 それから同時に言う。


「「当たり前」」


 それを聞いてマーチは申し訳なそうに言う。


「それはやめた方がいいと思います。あのドール達は集団から離れた者達と違って特別ですから」


「特別?どう特別なの?」


「ドールのリーダーは『操り人形劇(パペットロード)』というスキルを使用します。それは自分の思い通りのシナリオを実現させるものです。それによってドール達は強化されて壊れにくくなっているんです。だから、最前線は危険です」


 何かあるのかと期待していた2人は期待はずれすぎて呆れた。

 そのせいで2人は余裕を見せてマーチに聞かせてやる。


「それなら強化を超えてやればいい。エンチャントを舐めるな」


「強化したって人形は人形。勇者の剣の切れ味を舐めるなよ」


 その自信は不安でしかない。でも、あの戦いを見ていた先代魔王はマーチに「頼れる強さだ」と言ってみせた。

 その天使があの時人々を任せた老人も強いということになる。

 先代を信じるならこの2人に任せれば、あるいは奇跡が起きるかもしれない。


「そうですか。なら、最前線を切り開いてください。妖精の森に侵略して来たドール達の前線にリーダーの姿はありません。考えられるのは奥に隠れているということです。魔王様が疲れたところで襲うつもりかもしれません」


「あるいは、魔王を捕らえて自分を魔王にさせるつもりかもしれぬぞ?ケイト、魔王のなり方はなんじゃ?」


 さっきまで蚊帳(かや)の外だったケイトは急に振られてむせた。

 それが落ち着いてから話し始める。


「ゴホゴホ!ゴホッ!ンンッ!えーと、魔王になるには神様に認められる必要がある。同種族に1体しか魔王になれないから、大抵は継承者を神様が認めてるな。だが、魔王がいない種族なら他種族の魔王に認めさせれば、それを神様が後から認めて魔王になれる」


「だとすれば、わしの考えも間違っとらんじゃろうな。どこで知ったか分からぬが、新米魔王なら勝てると踏んで襲撃したんじゃろ。じゃが、新米とはいえ魔王は魔王じゃったから時間がかかってるんじゃろうな」


「だとすれば、最前線で切り開ければ敵のリーダーにたどり着ける。そんでもって敵のトップを魔王と私とリーダーの内の誰かが倒せば終わる」


 これは理想的だが、よく考えなくても無理がある。

 クロムはもう歳だからそんなに長く戦えない。ビスカは未熟すぎて力をまだ扱いこなせていない。魔王はマリス以下と考えれば役に立たないくらいに疲れているかもしれない。

 こんな不安要素ばかりではたどり着けずに手前で終わってしまうかもしれない。

 これも一つの案として残して、ケイトが次の案を思いついたから話す。


「それが破綻した時の作戦として、挟み撃ちはどうだ?どんなに統率が取れた集団だとしても、これなら敵の逃げ道を押さえられるんじゃないか?」


「かも知れませんが、敵は飛ぶことも出来ます。特にリーダーは上位形態の【多彩人形(テクノドール)】ですから、飛べて当然のような振る舞いをしていました」


「対策済みか。あー!!!僕の弱い頭じゃいい案が出ない!」


 叫んだケイトはビスカがさっと差し出した水を一気飲みした。

 その意見でいい案がクロムの頭に浮かんだ。それはケイトのおかげで思いついたことだが、感謝は心中でだけ言うことにした。


「弱い?そうか!相手の強みは弱点にもなり得る!飛べるなら飛ばさなければいい!」


「それはどういうことですか?」


「お嬢さんよ!考えてみろ!妖精と天使がこちらには居るんじゃぞ!空を制する翼型の代表種族が居るのになぜ上を押さえないんじゃ!」


 それを聞いてビスカとマーチらはしばらく考えたそれで理解できた。だから、バッと顔を上げて歓喜を顔に出した。


「なるほど!確かに我々は馬鹿正直に正面から戦っていました!でも、上からスキルや魔法で攻めればほぼ一方的になります!」


「飛べる奴が少ないなら、上がって来た奴を魔王と私で狩ればいいんじゃない?それならどうにかなるかもしれないね!」


「じゃが、全員を飛ばすわけにはいかない。確実に敵を減らすために半数くらいはわしらと一緒に地上で戦闘するんじゃ」


「いい案です!もしもが無ければ森は我々を勝たせるでしょう!」


「よし!決まったね!それじゃあ、出発の準備と食事を終わらせたら寝よう!夜が明ける少し前には起きて出発するよ!それまでゆっくり休もう!」


 こうして作戦は決まった。これが魔王に受け入れられるかは分からない。だが、通れば妖精族に光が差すだろう。

 それまで耐えられればの話だが。

 てか、どうせ作戦なんて意味ないでしょ。

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