記憶の中で
広川が天井を見つめながら、会議の内容を思い出していると、机に置いていたスマホが震えた。目をそちらにやると、外出中の鈴木からだった。
メッセージが届いているようだったので、中身を開いてみた。
”今日は訪問先の取引でトラブルがあって定時までには帰れそうにないから、今日の会議の事は明日報告するように“との内容だった。
広川は直ぐにでも、鈴木とさっきの会議の内容を話したかったが、仕方がない思い、メッセージを打ち返した。
「分かりました。また明日報告しますが、かなり重要事項なので、明日は早めに出勤して報告するようにいたします」
そうすると、鈴木から直ぐに返信があった。“広川課長補佐が早く出勤するってことは、よっぽど重要なことだろうから、私も早くいくよ。悪いが、報告事項をまとめておいてください”と文字だけのメッセージだったので、広川は苦笑した。広川は、朝に弱くて会社の定時ぎりぎりに出社することが多かったので、鈴木にからかわれているような気がしたが、確かにそうだなっと一人で頷きながら、「どうぞ宜しくお願い致します」とかしこまって、メッセージを打ち返した。
それが終わると、昼食を食べていないことを思い出した。鈴木とメッセージで話してみて、少し会議の緊張が解けたからか、急におなかがすいていることに気付いた。時間は既に14時になっていて、持ってきた弁当を持って食堂に向かった。
そして食事を終えると、会議の内容の整理と業績目標の書類をまとめていった。時折、今後のグループ会社の方向性を考えたり、担当地域の武漢のことを思い出したりしていた。
学生の頃の武漢は、まだ田舎の一地方といった様子で、初めて中国を経験する広川には様々なことが驚きの連続だった。大学の近くにはほとんど娯楽性の施設はなく、休日の楽しみと言えば、武漢大学からバスで30分ほど離れたところにある漢口という地域が繁華街があり、そこには色々な施設があり、唯一都会を感じることができる地域だった。
広川は写真や動画を見ながら、不謹慎だとは思いながらも、この20年弱の発展を写真で見ながら変化があったと思った。そして、当時知り合った学生たちや武漢出身の方たちの顔を思い浮かべていた。留学後に日本の学生代表団の中で知り合った徐さんも、武漢出身だったことを様々な思い出と共に、ちらっと思い出した。
そんなことを思い出しながら、仕事を進めていると、いつの間にか定時の5時半になっていた。広川は、明日鈴木に会議内容を説明する為の報告書類を見直しプリントアウトすると、それを机に置いた。もう少し、手を加えようかと思ったが、昨日大学時代の後輩の木佐貫からは日本時間で7時ぐらいに連絡すると話があったので、早めに切り上げようとパソコンの電源を切った。
続きを書くのに、かなり時間が開いてしまいました。
今回は、ほとんど話の展開が少なくて、淡々とした感じになってしまいました。
次回は木佐貫から連絡があり、そこからやっと本題になるかなっと思います。
不定期ですが、少しずつ書いていきますのでどうぞよろしくお願い致します。